| 雪のち晴れのコンビネーション |
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恋の雪かきは楽しそうですね。 「どーせあたしは非力な乙女さ」 雪が降りました。 しんしんと降る雪って面白い。静かなのに音がするのをちゃんと表現してる。午前中大量に降った雪は容赦なくゴーイングメリー号の甲板を覆い尽くした。現在、男ども総出で雪かきの真っ最中。サンジは例のごとくせっせと恋の雪かき中。少しは役に立てと言われたゾロもざくざく無心に雪をかく。雪国育ちのチョッパーは大きな体で作業をこなし、それを賞賛しながらシュライヤも雪をかいている。それで、ほら、残りの3匹はと言えば、 「おお〜!雪ダルさんだ!雪ダルさん!」 「はっはっはっ!見ろ!キャプテンウソップの超大作!」 「ウソップ、もうちょっとチチでかくしようぜ」 雪をどうにかしようとしてるとも取れなくはないが、完全に遊びの領域。ウソップの作った、少しばかり人型に近い雪だるまの胸の部分をぽんぽん盛り上げる未登録[2]。それをげらげら笑って楽しそうに見てるルフィ。バカ騒ぎする男たち、なんて自由人なんだ。サンジ兄ちゃんに怒られちゃえとか思っていた未登録[1]だが、その輪の中に入って自分も遊びたいと思うのも事実。 「てめェら!邪魔すんなら中入ってろっ」 あれはやっぱり邪魔者集団だったらしい。サンジに怒られる三人をみて、ため息をついた。 別にのけ者にされているわけではなくて、遊びたきゃ遊べばいいんだけど、なんかこう気が乗らない時ってあるじゃないですか。というか、やつらと一緒にきゃいきゃい遊んでいたらサンジ兄ちゃんのお叱りを受けることは明白で、あああ雪が積もって楽しいのになんでこんなうだうだと! 「よし、勝手に遊ぼ」 誰の相手にされなくても一人遊びで十分、言ったら寂しくなるから喉の奥で止めておいた。 なにをしようか考えるまでもなく、一人で雪遊びと言ったらだいたいこれに決まっているのだ、未登録[1]の中で。ねーねーと、近くにいたチョッパーに声をかける。人型になって誰よりも効率よく雪をかいているだろうチョッパーは額の汗を拭いながら振り向いた。 「ん?なんだ?」 「この雪どーするの?」 この雪、とは、チョッパーがかいた雪。山のようにこんもり積もって隅に寄せてある。 「あとでまとめて海に捨てるんだ」 「じゃ、いらないんだよね」 まっさらできれいな雪を、午前中ろ過水用にビア樽に詰めた。だからきっとそれ以外の雪はもういらないもの。まとめて海に捨てるって言葉も出た。 「じゃあもらってもいい?」 「い、いいけど、どうするんだ?雪だるま作るのか?」 「んー、ないしょー」 にししと笑った未登録[1]はポケットから手袋を取り出す。やっぱり雪で遊ぶつもりではいたのだ。疑問符を浮かべたチョッパーを横目に手袋をはめる。そして目の前の雪をぽんぽんと叩くと、いっそう笑みを深めた。 「ん?」 「あ」 「お?」 三人ともバッチリ目が合いました。スコップを持って追いかけっこしているルフィとウソップ。自作の雪の中に佇みみかんを頬張る未登録[1]。 「なんだこれ」 「かまくら」 「ナマクラ?」 そう、一人で作った超大作かまくら(実際はチョッパーがかいた雪の山を利用したので中を掘っただけ)の中でのんびりしていたのです。 「誰も遊んでくれないから一人で作ってた」 もちろんそんなに大きいものが短時間で作れるはずもなく、人一人がちょうど入れる大きさ。 「そのみかんどーしたんだ?」 船長ってば、毎度の事ながら食べ物への食いつきの早いこと。あっぱれとしか言いようがない。 「ナミちゃんにもらったの」 「おお、芸術だな、ナマクラ」 盛大に間違えるウソップに口をとがらせ、かまくらだってばと返す。 「いいな、後ろのくれっ」 まだ手をつけてないみかんがふたつ。こんなときばかりやたらと目敏い。 「やだー。欲しいならナミちゃんにもらえばいいじゃん。これあたしのだもん」 後ろ手にみかんを守る。食べていたみかんはすでに口の中に放り込んだ。掃除機みたいになんでも食べたがる船長には早めの対処が肝心要。 「おれも入っていーか?」 なんだかんだと足を踏み入れるウソップ。 「無理。一人しか入れないんですー」 両手を突っ張りウソップを外へ押し出して、とりあえず二匹ともの進入を食い止める。 「なんだよ、ケチ」 「いいじゃねェか。ちょっとくらい」 「ダメッたらダメ!ばーか!」 雪かきというか雪遊び、除け者にされて悔しかったんでしょうか。少しご立腹らしいです。そりゃそうだ、ちょっとだけだけどプライドが傷ついたんだぞ。いつもならわいわい遊ぶ中に自分も入っていたんじゃないかって、ね、あたしだって雪かきのお手伝いくらいできるのに。 なんで誰も、未登録も一緒にやろうぜ!って言わなかったの。ばーか。 しかし声に出さない女の子の気持ちなんて、この二人にわかるはずもなくて、その上未登録[1]のわけのわからない意地に怯むようなルフィじゃない。つられたウソップだって、なぜかいつもよりも気が大きくなってるらしい。 「食わせろ!」 「入れろ!」 「わー!入ってくんな!バカ!」 一人入るのに精一杯のかまくら。乙女の気持ちがわからない、あほ二匹が大暴れ。そりゃもう、崩れること必至。 「ぎゃあぁぁあぁぁあぁあ!」 せっかく作ったかまくらは、崩壊の一途を辿る。 ザックザック、 「おい」 ザックザック、 「………ブバッ!」 「うっは〜!」 崩れたかまくらはただの雪のかたまりになっていて、それをザクザクかき分けるのはシュライヤ。雪の中から出てきたルフィとウソップに肩をすくめる。 「なにしてんだ、おまえら」 「未登録がみかん隠すんだよ」 「あーあ、壊れちまったな、ナマクラ」 「は?未登録?」 どこだよ、言ってシュライヤは辺りを見回す。だがその姿はどこにも見えない。 「あれ?」 「あいつどこいった?」 ルフィとウソップも肝心の未登録[1]の姿を見失ったようで、真っ白な雪の上であれー?と首をかしげる。雪の上で立ち上がろうとしたウソップの腕を、ガッと掴んだ手があった。 「うおっ」 声を上げると同時、ザバッと雪の中から未登録[1]登場。二人の下から出てきた。 「…………う……」 頭に大盛りの雪が乗っかって。 「未登録ー、おまえ隠れてんなよ」 「ビックリさせんな、ったくよー」 下唇を嚼んで、ひどく悔しそうな表情を浮かべた未登録[1]。どことなく、涙が滲んでるようにも見える。シュライヤはそれが雪によるにじみであることを期待しながら、事の次第を見守った。 「未登録?」 「お、おい?」 キッと睨んだ未登録[1]は深くふかーく息を吸う。 「おまえらなんか大っ嫌い!一生許さないから!」 「もう許してあげたら?」 「いつまでも怒ってんじゃないわよ」 「やだ。許さないも」 女部屋。ソファに寝転んだ未登録[1]はうつ伏せ。もごもごと声をこもらせる未登録[1]に、まったく困ったわねとロビンとナミが目配せでコンタクト。 「それはあんたの勝手だけど、ご飯は食べなさいよ」 「後で食べる」 「後でって、」 「みんなが食べ終わったら食べる!今はいい」 「未登録。わがままよ」 「………うー‥」 「しょうがないわ。コックさんに言っておくから。ちゃんと食べるのよ?」 「おう、来たか」 キッチンには、もうエプロンを外したサンジと、我が物顔で酒を呷るゾロがいた。 「早く食っちまえ」 「うっせ。なんでゾロがいんの」 不機嫌な未登録[1]の手合いは大変だと、身に染みて知っているサンジは二人の会話にため息づいた。温め直したシチューを未登録[1]の前に出す。 「わりーか」 「わりーわ」 「あァ?」 「飯の席で言い合うな。ほら、あっためといたぞ」 副菜やらなんやらを未登録[1]の前に出し終えて、サンジはエプロンのかかった椅子に腰掛けた。未登録[1]は顔を上げて視線を彷徨わせる。そして小さな声でありがとう、迷惑かけてごめんなさい、ちょっとだけ涙声だ。いつもならこの時間はまだクルーたちがここで談笑をしている時間で、そんなカタチを消してしまったことへの謝罪も含まれているらしい。そんな未登録[1]の頭に手を置いたサンジは、まったくだと言ってそのままガシガシ撫でた。 「だけど食わないよりはいい」 「サンジ兄ちゃん‥」 「そんな怒ることでもねェだろ?」 「そーだけど」 「意地張ってんだよ。このバカは」 どうしても、ゾロの物言いは許せない。腹が立つ。図星だという点を引いても、腹立たしさ山のごとし。 「そこの腹巻きうるさい」 「あァ?」 「だーからやめろ。飯食え、未登録」 「うあい」 「テメェもイチイチつっかかるんじゃねェよ」 「おれのせいじゃねェだろ」 「おまえのせーだ。ハラマッキー」 「「いいから黙って食え」」 最後の一言は二人同時。うぐっとぶーたれた未登録[1]だが、口づけたシチューが今日の寒さにぐっと染みて、ああ美味しいなんて、怒りも少しだけ冷める。少しだけど、自分が悪かったことだってわかってる。全面的に自分が正しいだなんて、そりゃ言わない。 トントン ラウンジの扉を叩く音がして、首をかしげたゾロが席を立った。男部屋でも女部屋でも、ましてや風呂場でもない。普段叩かれることを知らない扉だ。不審に思ったのはゾロだけじゃなくて、未登録[1]もサンジも。少しだけ身構えてゾロの動向を目で追ったが、扉を開けたゾロはそのまま外と会話をしている。どうやら誰かいるようで、それでもすぐに室内へ引き返してきた。その手の中には小さな雪だるまが2体。 「おら」 「へ?」 その2体の雪だるまは未登録[1]へと渡される。ひとつはとっても不格好な雪だるまで、もうひとつはチョッパー型に可愛く作られた雪だるま。 「なに、」 「ルフィとウソップ」 ああ、でも、なんとなくそうじゃないかなとは思ったりもしてね。 「悪かったってよ」 「あいつら、中に入りゃァいいのに」 「飯食ってるこいつを怒らせたくねェんだと」 「ったく。……許してやんだろ?」 なにこれ。 こんなんで、あたしが許すと思ってるの‥ かまくら、あんなに頑張って一人で作ったのに。 あたしが勝手に怒っただけなのに、 「サンジ兄ちゃん」 「ん?」 「これ溶けるよね」 「冷蔵庫入れといてやろうか?」 「………とりあえず」 素直じゃねェなァっていう、ゾロの声は聞こえなかったことにした。 翌朝、昨日とはうって変わって晴れ晴れした空。 バタバタと船内を走り回る足音と、いつものように騒ぎ立てる笑い声がゴーイングメリー号に響いたのでした。
不慮の事故ってお題のタイトル
04/01/21 × |