| DO NOT MOVE |
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することナッスィン、そんな時間は小さいことに目が向く。 「あー、なんか伸びたっぽーい」 前髪の先を指でつまんで、甲板に寝転びながらさくさくと額に当てる。どうしようかな、暇だし、呟いたあとタンと小気味いい音を響かせ起き上がった。 「はさみ持ってこよ」 チョキン。 甲板に胡坐をかいて、毛先をはさみでチョキチョキ。あーちょっと傷んでるーなんて独りごちながら、どうしても寄り目になる視界に目をパチパチさせる。海に出てから結構経った。ナミやロビンと一緒のシャンプーはいい匂いで、髪の毛サラサラになるの使ってるはずなのに。なんでこんなに傷んでるのかしら。 「なにやってんだ?」 暇人が暇人を呼んでしまった。まさに類は友を呼ぶ。未登録[1]の横にしゃがみ込んだルフィはのぞき込むように視線を合わせようとする。 「前髪切り」 「楽しいのか?」 「あんまり」 楽しくはないかもと言葉をこぼしてまたチョキン。ちょっと斜めになってる気がする。でも首をかしげてるからこんなもんかしら、ブツブツと口内から出ぬ独り言。 「未登録」 「んー?」 「目が寄ってるぞ」 「ウッセ」 「変な顔だな」 「黙らっしゃい」 どうやら船長は喧嘩を売っているらしい。あぁよっぽど暇なのだとあきらめ半分、未登録[1]は髪の毛から目をそらしてルフィを見た。 「切ってもらえばいいじゃねェか」 「誰によ」 「おれ」 「絶対いやだ」 「ちぇ。んじゃナミ」 「さっき海図描いてた」 「ロビン」 「本読んでた」 どうせ暇なのはあたしだけなんだ、言って目頭を押さえる。まったく年寄り臭い所為ではあるが、船長も気にせず続けた。 「サンジ」 「切れないでしょ、サンジ兄ちゃんは」 「よくゾロの髪切ってるぞ?」 「マジで?」 うわ、ズリー。ズリーよ、あのマリモ。なんかチキショーなんだけど。てゆかあたしのが絶対サンジ兄ちゃんと仲良いんだからね、くそー。なんていう腹の内は声には出さず、それでもしかめっ面は忘れない。 「未登録[2]は?」 「おぉ。その手があったか」 「器用だしな」 「でも、未登録[2]に髪切ってもらうの見たら、サンジ兄ちゃん怒るしー」 残り毛を指先でぱさぱさ払ってフーッと一息、それにもう終わっちゃったからと苦笑う。 「あ、じゃあおまえが」 「ふん?」 「おれの髪切れ」 「あー?」 「伸びてきて邪魔なんだよなー」 指先が器用だなんて嘘でも言えない、でも船長はそれを知ってるはずで、なのにこんな依頼をしてきたということは本当に本当に暇で暇ですることがないからなのだ。未登録[1]もそれはよくわかる。面倒だけど、そんな風に過ごす午後の一時もいいかもしれない。よしおいで!未登録[1]は言い、甲板をバシッと叩いた。 「なにしてんだ?」 「おーチョッパー!」 「動くなっ」 「えっ、なな、なんだ?」 いつの間にか、ちょっと本格的に襟足なんかを切ってたりする。通りかかったチョッパーが何事かと興味をそそるほど未登録[1]は真剣。 「つまんねー。動きてーよー」 「無理」 「髪の毛切ってたのか」 伸びてきたって言ってたもんな、笑ってルフィに話しかけるチョッパーに、そーなんだよと前のめりになるルフィ。 「ぎゃー!動くなって言ってるでしょ!」 動くと変になるんだってばと、未登録[1]はルフィを叱りつける。いつの間にかあれだ、彼女の性格を知ってる人間にならわかる。変な部分が凝り性で、変な部分が飽きっぽい。その変動の差を見つけることは本人でさえ少々難しいことだが、わかってるのは今、彼女はルフィの散髪に闘志を燃やしはじめたということ。つまり、凝り性の方。 ルフィはルフィでじっとしていられる性分ではなく、もうすでにこの状態に飽きがきている。体を動かせば未登録[1]に怒られる、もういいと言っても怒られる。思いもよらなかった青空の下での雁字搦め、腹の音もそりゃあ盛大に響く。 「なァ、腹へったぞ」 「途中で終わりになんてできないし」 「もういいよ」 「よかない」 切れって言ったのあんたじゃん!未登録[1]が口を開けば手は止まり、なら早くしろとルフィは急かした。たかが散髪でちょっとしたピリピリムード。例にも漏れず、チョッパーはふたりの間を喧嘩すんなよとオロオロ。 「おおなんだ、青空散髪か」 とそこへウソップのご登場。甲板のハッチからよいしょっと体を外へ出す。 「ウソップー!」 「うーごーくーなー!」 怒りの波に発狂寸前。我慢の心が足りない未登録[1]。いや、ルフィもか。イライラしてる未登録[1]、ウズウズしてるルフィ、オロオロしてるチョッパー。そんな三人を見て、ウソップはしょーがねェなと腰を下ろす。 「髪を切ると言やァなー」 突然、ウソップが話しはじめた。するとルフィは大人しくなり、チョッパーもそれを聞こうと座り込む。話をしながら未登録[1]を見て、今のうちに早く切れ、そう目で言うウソップ。ホッと息を落とした未登録[1]は、紡ぎだされる魔法の言葉を聞きながらはさみを動かして。 "切っても切ってもすぐ伸びる不思議なアフロを持つ男の話" が終わる頃には、ルフィの髪はさっぱりしていたのでした。
過去のお題で髪を切るだったかな。
03/01/30 × |