Brig Franky



自身の時間感覚で、"さっきまで" 天辺にあった太陽は今ちょうど水平線に沈んでいくところで、甲板へ上がると日はすっかり暮れていた。
陸にいれば時刻ごとに町は動くのだが、ここは海のど真ん中、周辺にそれを知らせる機能はない。
フランキーは煤にまみれた頭をばさばさと払い、辺りを見回す。
髪を払うのは、汚いところを見られるとナミだのサンジだのにすぐに風呂に入れとどやされるからだ。
その度に思い出す、故郷に置いてきた可愛い妹分たちを。
奴らも女の端くれで、特徴のある語尾を強めて汚いだのなんだの、言いたいように言いやがった。


「兄貴汚い!」

こんな風に。

「髪の毛黒いし!またかまど?」

思いがけない声に顔を向ければパタンパタンと軽い足音で階段を下りてくる。
てめェこそ綺麗とは言えねェ格好だなと言ってやれば、未登録[1]は口を尖らせた。

「知ってるし…」

いつもどおりの格好が綺麗だと言えない理由はというと、白いはずのエプロンに真っ赤なケチャップがついていたり、匂いからしてロースト用のソースと思わしき茶色のなんたらがダイナミックに付着している。
エプロンを見つめる未登録[1]の瞳に、だんだんと涙が滲むのを見て、しまったと思えるようになったのはつい最近。

「おいおいおいおい」
「兄貴が悪いんだからね!兄貴がおやつ食べないのが悪いんだからっ」
「いや言っただろ、今日はおやつは、」
「知らないー!兄貴のバカー!」

うえええとガキのように大泣きしながら、ところどころに出てくる単語はルフィがルフィがといったもの。
推測するに、フランキー用に残しておいたおやつの一部にルフィが手をつけ、それを守ろうとした未登録[1]がロースト用のソースを零したとか、それでサンジに怒られたりルフィとケンカしたりとそんなところだろう。
フランキーは両手を合わせるとパンパンと煤を払い、綺麗になった手で未登録[1]の頭を撫で付ける。
なおも泣き続ける未登録[1]に、すぐに泣き止むとは思っていないフランキーがため息交じりに言った。

「悪かった。悪かった」

未登録[1]未登録[1]で、フランキーが悪いなどとは1ミリだって思っていない。
地階にこもるからおやつはいらないと言っていたのを昼飯時にちゃんと聞いていて、それでも勝手に残しておいたのは自分なのだ。
ただ泣く理由と当り散らす理由が欲しくて、ちょうど甲板に姿を見せたフランキーに事の全てを押し付けた。
だから謝られると気持ちがだんだん困惑し、兄貴は悪くないのゴメンねとまた泣き出す。
一見悪循環にも思えるこの一連の流れ、しかし未登録[1]は自分の非を認め、大泣きの甲斐あってか徐々に気持ちも昇華に向かう。
そして誰も悪者にすることなく、素直になって一緒にダイニングへ戻れる。



フランキーは知ってる、だって兄貴だから。


同じようなことを幾度となく繰り返してきた。
故郷に残した可愛い妹分たちと。


未登録[1]の頭に手のひらを乗せたまま、フランキーは腹減ったなァと笑った。



兄貴は兄貴で兄貴なので
10/06/08 ×