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遠く聞こえる海鳴りや、暗がりの中で思い出すことがある。 怖いと呟けば、必ず手を握ってくれたあの瞳を。 溢 れ た 涙 雲のかかった月がそこにあった、見張り台から手を伸ばしても雲は払えない。 今日は見張り台の上で月見をしようと思ったのにこれだ。 おじいから聞いたことがある、美しいものを見るときの障害。 " 月にむら雲、花に風、三日見ぬ間の桜かな " 不意に目に入れると綺麗なそれは、見ようとして見ると障害がある。 そんなことをふと思い出し、同時に辺りの暗さも思い出した。 まだ小さかった頃、どうしてか暗闇がとても怖かった。 暗がりが怖いのは今も変わらないが、それでも大分和らいだ。 成長するにつれて、そばにいてくれる人がいるのだと理解することができるにつれて、その恐怖も次第に薄れていったのだが、やはり暗がりは不安な心を煽る。 一人で見張りの時ほどそう思う。 船の上では男も女もない、それは海上ならとても基本的なもので、女だからって見張りをしなくていいとか、そういうことでもないのだ。 あんなにフェミニストな自分の兄も、ちゃんとした考えを持っている。 女性にできる役割りと男にできる役割り、しなくてはならないこと。 公で割り当てられた平等な役割りの中、兄は個人的に女性を助けようとする。 女性のことばかり考えている兄だが、そんな信念のもとの考えは尊敬に値するもの。 あぁそういえば、サンジ兄ちゃんもおじいと同じようなことを言っていた。 " 月にむら雲、花に風、三日見ぬ間の桜かな " 美しい女性を本気で手に入れようとすると、必ず誰かの手に落ちてる。 そんな話を聞いたのも、暗い夜だった気がする。 あの大きな甲板で、おじいとサンジ兄ちゃんと三人で食べたおにぎり。 月見をしようといったのに、月には雲がかかってはっきりと見えなかった。 だからそんな話になったんだと思う、月にむら雲。 だけどそれでも月が綺麗だと思ったから言ったんだ、綺麗だよって。 ちゃんとお月見になってるって言ったら、二人とも笑った。 サンジ兄ちゃんなんて、確かに人のものになってもレディは美しい、そんなことまで言って笑ってた。 懐かしいと、あの日々が懐かしいと、何度思ったか知れない。 だけど今あたしは自分の夢を追っていて、掴もうとしてここにいて。 懐かしさに浸っても、戻りたいだなんて思うことはない。 誰よりも自分が選んだ道、サンジ兄ちゃんはそばにいる。 おじいだってきっときっと、あたしが夢を掴むのを望んでると思える。 でもね、もし ──‥ ちょっとだけでもおじいに逢えるのなら 逢いたい。 三人で月を見上げ、またあのおにぎり食べたいねって、明日の仕込みの話したり、今日の仕事中の話したり、二人の言い合いを止めたり。 そんな懐かしい日々を、また過ごしたい、そう思う。
会いたいなあと思ってしまうよね DATE / Uncertain × |