一定のリズムで音を立てるキッチン。
ポコポコと心地の良い音に、少しの間目を閉じた。





  宇 宙 か ぶ





騒ぎ鳴り止まない夕食後のラウンジ、目の前ではお湯が沸騰する。
夕食後のデザートを用意する未登録[1]の隣、ロビンはそれを覗き込んだ。



デザートは何がいい?港から戻ってふいに未登録[1]に聞かれた。

日々クルーの希望を聞いてきて、今日はロビンの順番らしかった。
良いタイミングだと思ったのは、自分の買い物袋の中身のせい。
ロビンはその袋を未登録[1]に渡してあなたにお土産、それだけ言う。
未登録[1]が中身を見れば、小さな花の入った小袋が幾つか収められているようで、取り出したところでその文字が目に入った、『食用小花』。


雨凌ぎのために入ったエスニック風の小さなお店で見つけたそれは、目に入れた瞬間に思い出させた、小さな花のように笑うパティシエのこと。
思わず買ってしまって、いつか使ってねという意味でそれを渡したのだ。

しかし未登録[1]の中では、それを「いつか」とは捉えなかった。


本日のデザートは、甘蜜に白玉を沈め花を浮かべたデザートらしい。





「お姉ちゃん、やっぱ座ってていいよ?」

自ら手伝いを買って出たロビンに、未登録[1]は首を傾げて言う。
ロビンはそんな未登録[1]に、私がいない方がいいならそうするわと。
そんなことを言われたらここにいてもらうより他ないじゃないか。
予想もしなかったこの状況は、未登録[1]にはとても嬉しいのだから。


後方、同じ室内なのにこの静かさの差はどういうことかと少し思うところだが、こんな雰囲気は嫌いではない、ロビンは小さく笑いながら未登録[1]の手元を見る。

「手際がいいのね」
「え、そうかな」
「えぇ。私の手が幾つあっても、そんな風にはできないわ」

率直な褒め言葉、ロビンの言葉に未登録[1]は照れて苦笑った。


「私は何をすればいい?」
「うーんと、じゃあ、こっちに白玉入れるから」

花を浮かべて欲しい、先ほどロビンがお土産だと渡した小さな食用の花。


「いいのかしら」
「へ?」
「仕上げでしょう?」

蜜の入ったグラスに白玉を沈め、その上に花を乗せて出来上がり。
花を浮かべて完成なのだから、確かにそれは最後の仕上げとなる。

「仕上げは、あなたがした方がいいわ」

未登録[1]は首を傾げ、袋に入った花を渡した。
だってこれくれたのお姉ちゃんだから、そう言葉を紡いで。

「この花なかったらこれで完成だし」
「でも未完成だわ」
「うん。花が必要だからね。くれたのはお姉ちゃんだからいいの」
「だけど」
「手伝ってくれるって言ったじゃん。お願いします」
「……えぇ」

よくわからない彼女の理屈、だけどなんとなくわかってしまう。

そのよくわからない理屈はこの場へ自分を繋いでおくための言葉だと。
いらない手伝いを買って出たことを許容する優しい言葉だと。


ロビンは小さな笑みの奥、桃色の花をそっと浮かべた。



むずかしいのなら心のままに
DATE / Uncertain ×