雨が弱まったところで出航の合図を出した。
突然の通り雨、空を見上げれば彼方は弱く光り輝く。





  





ピーチティの入ったグラスを片手に持ち、空を見上げる。
ラウンジの扉を開けていても雨が降り込まないほどに勢力は弱まった。
このままもう少し進めば雨雲の下を通過できるだろう。
薄ぼんやりと見える水平線からの光にそう思った。


ラウンジを振り返れば、中にいるのは未登録[1]だけで。

他のみんなはおやつの時間が終わって、船内に散らばっている。
チョッパーとウソップに関してはおやつ時も男部屋から出てこなかったため、トレイに乗ったおやつをシュライヤが運んであげていた。



未登録ー」
「ん?」
「これ何?」

ふと目に入ったのは軒先に釣る下がったてるてる坊主。

「てるてる」
「用意いいわね」
「んー」

こちらへ注意を向けていないその返事にナミは首を傾げる。

先ほどから真剣でもないが真面目に何かに取り組んでいる未登録[1]の手元、握られたペンと置かれているのは罫線の引かれているノート。


「最近それ、よくつけてるわね。日記?」
「メモノート」
「サンジくんのレシピノートみたいな?」
「ちょっと違うけどレシピも書いてる」

横からふっと覗き込めば、書かれているのは今日の天気のこと。

「天気?」
「とか、いろいろ」


今日遊んだこと、お天気、頑張ったこと、聞いた話、
レシピ、驚いたこと、体調、学んだこと、感動したこと。


「日記じゃない」
「違うの。日記じゃないの」
「記録?」
「あ、そうそれ」
「まあ確かに、箇条書きだしね」



・晴れてて曇って雨降って



「雨降って?」
「また晴れそう」
「書かないの?」
「記録だもん。わかんないからまた明日書くの」

グランドラインの天候は知らないうちに変わってることが多い。
晴れるだろうと思っても雨が降ったり、時には雪だって普通に降ってくる。
へぇ、面白いもんつけてるわねと、ナミは笑ってグラスに口付けた。


「ねぇナミちゃん」
「ん?」
「この後晴れる?」
「さー」
「スペシャリストでしょ?」
「誰がそんなこと言ってんのよ」

航海士であって天気予報士ではないと何度言えばわかってくれるのか。
明日の天気教えてだのいつ頃雪が降るかだの、そんな質問が多々ある。
ココヤシ村にいた時ならまだしも、ひととこに留まらず常に流れ進む船の上、しかもグランドラインの天候は気まぐれなのだ。
ナミにだって予測できることとできないことがあるとはもう何度も言った。


だから、決まって用意してやる答えはこれ。


「止まらない涙はないのよ」
「またそれだ」
「しょうがないでしょ。微妙な天候なんだから」

空から零れる雫も、誰かの瞳から零れる雫も、いつかは止まる。
短くも長い旅路の中、経験上でそれを知った者だからこそ意味を理解できる、ちょっと詩的な天気予報。



いろんなことを乗り越えて
DATE / Uncertain ×