何やら和やかな雰囲気で、少しだけ躊躇った。
複雑極まりないこの感情を表せないのは、おれが不器用ってことか?





   が る 波 紋





飛ばした怒号はもちろんラウンジにも聞こえたらしい。
二人をラウンジへ連行すると、血圧に気をつけろとチョッパーに言われた。
大きなお世話だなんて、真面目な船医には言えず黙りこくった。



朝食前、穏やかに空を見ていた二人を思い出し、サンジは奥歯を噛み締める。

何だ、何だってんだ、仲良しくてちゃいけねェのか?
そうじゃねェんだ、仲良きことは美しきかなって言うだろ。
なんだかんだ言ってゾロは未登録を構うし、未登録も構ってもらうのが嫌いじゃない。
それは見ていてわかる、仲間同士だし当たり前といえば当たり前だ。




「サンジ兄ちゃん?」

眉根を顰めたサンジに首を傾げて未登録[1]が声をかける。
サンジの手元には昼ご飯用のジャガイモが潰れそうなほどに握られていた。

「ん?」
「考えごと?気分悪い?」
「あ、や、何でもねェ」

確かに何でもないことだ、こんな風に考え込む理由が見つからない。
未登録[1]とゾロが仲良く並んでいただけで、よく見るとまではいかないが、それはたまに見る光景。


ただ、あれだ、働いたのは双方に対するおかしな独占欲なんだろう。


普段あまり接点のないゾロ(夜は除く)を起こす役割りを持っていた自分。
一日のうち、仲間の見ていないところでの接点はそのくらいしかない。
いつもなら自分が起こしに行くのだが、今日は少々の時間のズレが生じた。
女性陣に作ったサラダが船長の腹に納まってしまったため、それどころじゃなかったのだ。
しかし未登録[1]が起こしに行っているとは思わずに、作り終わって甲板へ向かった。
目にしたのは穏やかに和やかに、空を仰いでいる二人。

未登録[1]に対する独占欲もまたそれはそれで十分なもの。
大事な妹は毎朝自分の手伝いをしている時間帯で、今日はそれを早く切り上げた。
切り上げたというか、サンジにサラダを再度作るという余分な仕事ができたためだ。
一緒に働く料理人がまだ調理中だという時に腰を下ろすことはあまりしない。
そんな未登録[1]の見つけた仕事が、ゾロ起こしだったのだろう。



サンジが細くため息を吐けば、未登録[1]はまた首を傾げる。
どうしたの?疲れた?休んでていいよと優しい言葉がかけられた。

未登録
「ん?」
「おれのこと好きか?」
「え、うん」
「ナミさんは?」
「好き」
「チョッパーは?」
「好きだけど何で?」

未登録[1]の目に映るのは、ちょっと精神を病んだお兄さんだった。
サンジは少し間を空けて、小さな声で尋ねる、ゾロは?

「え、好きだけど」
「好きなのか?」
「は?うん。いや普通に、」
「好きなんだな」
「サンジ兄ちゃんバカじゃないからわかると思うけど好きの意味が‥」
「わかってる」

わかってるけどわかりきれない感情があることを今ここで学ぶ。


未登録[1]の手の中、小さく剥かれるにんにくを見ながらため息づいた。



こんなこと誰かに相談できるわけがない。
シュライヤは深く考えちまうし、ナミさんに話せるはずもなく、
あぁそうか、自分の中で感情の処理をするしかないのかと瞳を閉じる。

当の本人に相談してみるのもいいかもしれないと、
何よりも優先で外した選択肢を思い浮かべ、また小さくため息をついた。



気持ちがアンビバレンツ
DATE / Uncertain ×