久々に起こされる前に目が覚めた。
ラウンジからは飯の席にクルーを召集するコックの声が聞こえる。





  た ゆ た う





寝ず番を終えたゾロは、朝早くにサンジが起きてくると甲板に降りた。
朝飯まで寝ていていいというサンジの言葉に遠慮などなしだ。
むしろ言われなくてもそのつもりだったが、朝一で優しい言葉をかけられるのも悪くない。
そんな経緯で数時間前、甲板に倒れるようにして眠った。


起きればいいのだ、今すぐに。
目が覚めたのだから起き上がってラウンジへ向かえばいい。
行ったら行ったで航海士がシニカルな口調で褒めてるのか貶してるのか、どっちなんだとつっこみたくなるようなセリフを吐くだろう。
まぁ、行かなければ後々貶しだけの言葉を浴びせられるのは間違いないのだが。

どう考えても起きた方がいいという状況なのに行動に起こさない理由を問われれば、ひとつしかない、起こしに来るだろう輩を自分が待っているから。

日々の時間の中で二人の接点は限られている。
夜はあれほどまでに仲が良いのに、太陽の上がっている昼間の険悪さはなんだ。
笑いあうこともなけりゃ話すことすら滅多にない。
どちらかが辛辣な言葉を吐き、乗っかって喧嘩をするのが最大のコミュニケーション。
悲しいかな、それがしっくりくるのはお互いにわかってることだ。



バタンとラウンジの扉を開ける音がした。


パタパタと聞こえる足音と気配はヤツ独特の──‥



あ?



薄く開けた瞳の向こうには流れゆく雲が見える。
期待した音ではないその音は、一日の始まりを告げるには少々騒々しい。





「ゾロ!」


妹か。


「ゾローごはーん起きてー」

少々ではない、大分騒がしい。


「ゾロー!」
「うっせェな」
「あ、起きてる」

珍しい起きてる、目を丸くして傍らにしゃがみ込む。
スカートを履いたこいつにパンツ見えそうだぞなどと言えば鉄の蹴りが飛ぶだろう。

「ごはん」
「あぁ」
「……ごはん」
「わかった」
「早く起き、」
「わかったっつってんだろ!」
「だって起きないじゃん!」

口を尖らせて睨み付ける姿は、あのクソコックを小さくしたような。
それでも違うか、男と女、血も繋がらない兄妹。

「サンジ兄ちゃん起こし来るの待ってたの?」
「ンなわけねェだろ」
「へぇ」
「あァ?」
「じゃあ何してたの?」
「………」
「ふふん」

勝ち誇ったような笑顔、まぁ嫌いじゃないが好きでもない。
このままその顔をさせておくのも癪に触る。

気づけば指を空へ向け、指し示したのは雲。


「……雲?」
「あぁ」

見上げた先、流れる雲が見えた。
口を開けたままの未登録[1]を横目に見ていれば、そのまま後ろに倒れる。

ゾロの怪訝な顔に笑って言った、
ちょっと待ってれば、優しいコックさんが迎えに来るね。
そんな言葉に良い考えじゃねェかと、ゾロは思って笑みを返した。
 
 

ゾロサンSmellもりもり
DATE / Uncertain ×