| きっと明日もあさっても |
|
『バカップル』世間は彼らをそんな風に呼ぶ。 「ー!」 今日もどこからともなくやってくる、あいつの名前は田島悠一郎。 「おーう!」 名前を呼ばれたのは我らがマドンナ、。 「今日何作ってきた?」 「マドレーヌマドレーヌ」 「うまそーうまそー!」 「部活終わってから食べてねー」 にこやかに笑みを交わす、そんな二人が疎ましい。 「何怒ってんの」 「えっ?」 怒ってるように見えたのかと眉根を顰めて頭を上げる。そこにいたのは野球部のママこと花井梓キャプテン。 「怒ってるように見えた?」 「あー、うん」 チラッと彼らを見た花井は、声のトーンとボリュームを落として言った。 「なに、田島、好きとか?」 「は?何で?」 「いや、怒ってるからなんとなく」 「違うよ。あたしが好きなのはだもん」 「は?」 一瞬だけ止まって、また、は?って。はそんな花井に、何であたしが田島君を好きなんだ梓ちゃん、花井が下の名前を呼ばれることを好かないと知っていて言葉を紡ぐ。 はが大好きです。 高校に入って初めてのお友だち、ちゃん。 出会ってまだ二ヶ月かそこらですけどすっごくすっごく仲良しになれた。これも出席番号が前後だったお陰だわ、神様感謝。 ところがどっこい、には彼氏がいたらしい。 何となく男目線の思考になってるのは否めないがちょっと悔しい。あんないい子に彼氏がいないわきゃーないとは思ってたけど。まさか同じ学校のしかも隣の隣のクラスだなんて!さすがに恋愛対象じゃないけど、あたしだってが好きだ! そんなこんなを花井に力説する姿は、ちょっと凄かった。二人を遠まきに見ていた阿部が後に語る。 「おわかり?梓ちゃん」 「下の名前で呼ぶな」 「あら失敬。ったくさー、田島くんも田島くんだよねぇ」 何で昼休みに毎回現れるかなぁ、ひょっこり出てくるその愚痴はとのランチタイムを邪魔しているからだなと花井は察した。 「でもよ」 「なによ」 「あいつらつき合ってねぇし」 えっ? 「えぇっ?」 「って。田島言ってるよ」 「は?マジで?」 「え、さん、つき合ってるって?」 ………、 「言ってないけど」 「んじゃつき合ってないってことだろ」 「つーかみんなバカップルって言ってるじゃん」 「傍目にはそー見えんじゃねーの?」 言って指差す方には傍目から見てバカップルな二人。何を話してるのか聞き取れはしないけど、楽しそうだったりする。 「え、マジでつき合ってないの?」 「水谷が興味本位で聞いてたんだよ」 そしたら──‥ 『へ??』 『そう。どこで知り合ったんだよ』 『あれか、七組で田島と仲良い子?』 『何、チューガク一緒とか?』 『別にー?ただ野球好きなだけだよ』 『へー。んじゃ部活一直線でも怒らねぇんだ?』 『あたしと部活ー‥なんて言われた日にゃなぁ』 『そう考えると理想の彼女だよな』 『たまってるとか言う割には、』 『は?彼女?が?違うよ?』 『あ?』 『違うって?』 『オレ女いねーの知ってんじゃん』 『そりゃいるとは聞いたことねーけど‥』 『だろ。いたらたまんねーって!』 最後の部分は割愛、花井はにそれを少しだけ話した。 指先を口元に当て、あら、と小さく漏らす。今まで花井に向いていた視線をそろそろと二人へ向けた。花井は見逃さない、その口角がやんわりと向上したことを。 (つき合ってないのか。そーかそーか) (……なんか怖ぇー‥) の一番は、まだ空いてるみたいです。 「なぁ、明日は何作る?」 「あしたー?」 「そう。明日明日」 「えーっと、んーと、んー‥」 渋い顔のに田島は首を傾げた。毎日作ってくるの大変だよな、ぼそっと零せばは顔を上げる。 「そんなことないよ」 「でもなー」 「田島くんが食べてくれるから作りたいし」 「おう。食べるぞ」 「うん。食べてね」 「の作るもん美味いから、毎日でも食べたいな」 「本当?よかったー」 「明日も楽しみだ」 「じゃあ明日もあさっても」 「そん次もなっ」 忠告、 形式にはそうでなくても、気持ちの上でそうだってこともあるんですよ。
初めてのおお振り夢が田島くん、のはずが誰が主役だこれ。
05/07/30 × |