ラッキーの神様

 

 

「イヤ」
「だーめ」
「ダメじゃないいいいい!」
「ダメ。それとも何?、約束破るような子?」
「……うぅ」
「違うよな?」
「も、もう一回勝負!」
「んー、いいけど。俺、今日は勝負事ニジュウマルなんだよ」

昼休み、終わりごろ。

「うっふっふっふ」
「……何その笑い」
「今回はあたしの勝ち」
「ん?」
「フルハウス!」
「あー……」
「っしゃ!」
「惜しいね」
「は?」
「オレエースのフォーカード」
「げっ」
「また勝っちゃった。俺ってラッキー」


千石清純。ついたあだ名はラッキー千石。

。ついたあだ名はアンラッキー

………まぁそれは冗談だけど。
自分的には今、ものすごくアンラッキー。


「じゃ、5限サボろうか♪」
「………はっ?」
「行こう」
「ちょ、待って!5限はあたしの好きな………ッ」

芸術のお時間。歌を歌う時間なのですよ!音を楽しむ時間なの!
なのに、こう腕を引っ張られて。向かう先は何処?










『テニス部部室』に連れ込まれたアンラッキー。(←しつこい)

「う、授業開始のチャイムが聞こえる……」
「そー?耳いいんだねぇ」
ニコニコ笑いながらの隣に座り、その耳を撫でる。
「うひっ」
「………うひって」
「ヤメテよっ、何っ」
「もちょっとさ、あっとか、やだぁとか。色気を、」
「何でアンタに触られて色気出さなきゃなんないのよ」
「えー、出そうよ。ねぇ」
「バカ?……それより。早いとこ授業戻りたいんだけど」
「音楽って楽しそうでいいね〜。技術と変わって頂きたいよ」
「しょーがないでしょ。君は男、わたしは女。文句は学校に言いなさい」
「あ、いいこと言った。俺、男。君、女。うん、いいこと言った」
「はああ?」
「知ってる?世の中には男と女しかいないんだよ」
「オカマ、おなべ!ピーコはどうなるっ!」
「結果的にはピーコも男」
もう一度、耳たぶに触る。
「ぎぁっ、もっ……千石!」
「清純」
「キヨッ……さ、わんなってば!」
「四回も負けたくせに何言ってんの」
「……うぐっ」
「少しはオレの言うこと聞こうよ」

チキショウ。
一回負けたトコで終わらせればよかった。

「啼いて」
「……っ、は?」
のいい声、聞きたいなぁ」
「な、何言ってんの……、バカも休み休み、…うぁっ…」

見上げる先、テニス部部室の天井。灯されていない電気。
千石清純の、憎らしいほど笑った顔。

「オデコにチュウ、じゃなかったの?」
「んー…。だって四回も負けてるんだし」

最初の賭けの内容はそれだった。あたしが勝ったら明日のお昼のジュースとプリン。だけど、何度も負けて嫌がったあたしに、チャンスをくれた。しかし四回とも、あたしは負け続けた。ポーカーなんて、嫌いだ。

無性に、涙が出そうになる。


「……何で?」
「やだ……」
「オレが?」
「こーゆーの、イヤ」
「でもお前、負けてるし」
「……わかってる、でも、イヤだ」


イヤだ。
イヤだ。

何がイヤって。

ねぇ、千石?

誰にも言ったことないけど。
誰にも言うつもりないけど。

あたし、あんたが好きなんだ。

だから、こんな形、絶対イヤ。



「だーいぶ嫌われたかなぁ」
「………どいて?」
「んー…、でも、惜しいんだよねぇ」
「本当、無理。こーゆうの彼氏じゃなきゃダメだもん」
「じゃあ彼氏になるよ?」
「………やめてよ。そーやって……チャラけられんの、マジで嫌」
「チャラけてないって言ったら?」
「言ったら、って。思いっきりチャラケモード」
「こーゆう喋り方なんだよなー…」
うーん、と唸りながら、の上からどいて手を引く。その場にチョコンと座るのを見てから目を閉じ。また、唸り始める。

「せ、千石?」
「清純」
「……清純?」
「何?」
「いや、何って……」
「うーん」


まさか、この人。本気?

……まさか。


サン」
「はっ?」
「好きなんだけど」
「………ッ…」
「じゃなかったらわざわざ部室つれてきてこんなこともしねーんだけど」
「な、何……言って…」
「どーしたら信じてくれんの?」





神様。

私が今日、ポーカーに負けたのは、

『ラッキーだったから』

なんですか?

 

 


ちょっと間違えた千石。
02/08/31  ×