衝動的カンザスシティ

 

 

この世にはすげーヤツがいたもんだ。

「何してんだよ」
「あ?」
「お前早くしねーとまた走らされ、」
「越野ってさ」
「ん?」
「仙道と仲良いっけ?」
さっきまで視線の先にいた男。隣のクラスの仙道彰さん。
「普通」
「普通って」
「迷惑な部活仲間」
「迷惑?」
「部活来ねーんだ。遅刻なんかしょっちゅー」
「ふーん」
中庭で可愛い女の子に告白されてた男。頭を下げて背を向けたその子の反応からすると、どうやらその結果は玉砕だったのだと思われる。

てゆか、何がすげーって、

「あいつ彼女いんの?」
「さーな。特定な相手はいねーんじゃねーの?」
「へー」
昨日体育館の裏で似たような光景を目の当たりにしたからさ。おい、昨日の今日でまた別の女に告られてんのかって、ぶっちゃけた話、羨ましいとか思ったりね。





「バスケなんて聞いてねーし」
「つーかお前裸足の意味わかんねーよ」
「ソフトのはずだった」
「雨だからしょーがねーよ」
「あー‥くそっ」
グラウンドでソフトボールのはずな体育が、真冬の雨という、くそ寒い天気の所為で体育館に変更。
「できるならドッヂボール希望」
「絶対ェ踏まれんぞ」
「ショック」
「バッシュ貸そーか?」
「お前意外に足デカイからいらねー」
越野の足はでかい。外見に合わないとか言ったら殴られるけど。

「オレもー寝る」
「アホか」
「いやだー。体育館シューズないんですもん」
「お前なぁ、」





バンッ‥


その音は響いた。





正確に言ってしまうと、何の変哲もないただのボールの音。それに反応したのはオレくらいだったから。バスケットボールが跳ねる音。

「………」

ほぼお昼寝確定していたオレの脳を起こすとは。

「すげ‥」
視線の先には、やはりあの男がいて。何だか巷で流行っているのか、ツンツンした頭を揺らすあの男がいて。でかいくせに何であんなに動きが速いんだよ。
?」
「あー‥、仙道だ」
「あ?あー‥、あぁ。相変わらず派手だな」
「女子の目の色」
「ジョシって言うなよ」
「わーきゃーモンだな」
「イチイチ言葉が古臭ェっつの」

いいんだ、ンなこたどーでも、どーでもいんだけどよ、何だってあいつ、

「やっぱうめーな、バスケ」
「バスケ部だからな」
「コッシーもあんなんできんの?」

あんなん=フェイクみたいな感じで周りを蹴散らす

「素人になら」
「同業者は」
「オレすぐ顔出るからフェイクにもなんねー」
「仙道は?」
「あいつはホラ、」


あいつは?


「天才だから」

久しく聞かないその単語に、わかんないけど鳥肌が立った。



"天才"





仙道彰っつー文字を、最近掲示板で見た。英語の実テ、二位との点差はヤバイくらいありまくって、学年トップ。その時のオレの中のあいつのイメージは、デカくていつも笑ってる、確かに笑ってるんだ、意味もなく一年中ニコニコ。
話したこともなきゃ、オレの存在なんてあいつは知らないだろーけど、それからやたら目で追うようになって、何だろう、何か妬ましいっつーか羨ましいっつーか。この世には、オレみたいに平々凡々のヤツもいれば、あいつみたいに何でもこなせる野郎がいるんだなって、そう思った。










「天才、」
「何が?」
「あ?ッ、……うわっ」

ここ最近、目で追っていたそれが目の前に出現。

「せ、仙道?」
「ん?」
「あ?」

越野の横でオレの顔を見てる。あぁ、仙道だ、仙道彰。

「何?
「いや、別に、……あ、あ?」
「ん?」
「何で、オレの名前、」
「そりゃ学年一緒だし」
「あー、そうだよな」
何言ってんだ、オレ、なんて。ちょっとバツが悪ィ。
んで、お前が練習来ねェから監督が、」
あぁ、越野とお話中だったのか。そーいや部活来ねェとか何とか言ってたな。
「次の練習試合、って聞いてんのかよ仙道」
「ん?」
さぁ」
「は?」
視線を上げると、仙道はオレのことを見ていたらしくて。
「な、何だよ」
「可愛いって言われない?」
「は?」
「おい仙道」
「いやー、うん。ね、そう思うよね、越野」
「フルな」
「は?つか、」


引っかかる。


「可愛いだと?」


何が引っかかるかって、


「おぁ、?」
「くそっ」
ダンッと壇上から飛び降りて、体育館シューズを履いてない足を滑らせる。そして眉を顰め、靴下を一気に脱いだ。

「何だよ、
「バスケして来る」
「あぁ?お前靴、」
「裸足でどーにかなる」
「踏まれるっつーの」
「そしたら踏み返す」
「いや効果ねーし」
この場にいると、イライラが募る。仙道彰って生き物の横にいると、やたらイライラが増すんだ、引っかかった言葉が、またこれやけに、

「仙道」
「ん?」
「何かお前見てっとムカムカくる」
「そう?」
「そう」
「オレは見てるとメロメロになる」
「………ウゼェ」

舌打ち。そうしてオレは、仙道彰に背を向ける。
小さく低い笑い声が聞こえた。





不覚にも、あいつのことをカッコいいと思った。
バスケしてる姿もそうだけど、英語できるっつーのもそうだけど、無難にいろいろこなすっつーのもそうだけど、背の高い、ただ越野と話をしてるお前を不覚にもカッコいいと思った直後、可愛いと言われてしまったオレの脳みそは少々沸騰したらしく意味もなく、お前に勝負を挑みたくなった。
だから、裸足のままバスケに加わってしまうオレがいるのだ。

 

 


恋愛夢なのかは不明ですがとりあえずBL扱い。
04/01/28  ×