high チャージ NO THANK YOU

 

 

『Hello?』

何がハローだ。

「あたし」
『コンニチハ』
「コンバンハ」
『コンニチハだろ?』
「ニューヨークはコンバンハでしょ?」
只今、ニューヨークの時刻は夜の10時。日本の時刻はお昼の12時。

彼氏の仙道君は、バスケのためにニュウヨークへ行ってしまいました。遠距離恋愛なんて大嫌いだと豪語していた自分。それでも別れなかったのは、遠距離よりも別れることの方がイタかったから。
もう何度も、仙道の所へ遊びに行ってるけど。毎日毎日、電話をしてるけど。それでも愛は足りません。毎日同じ空気を吸っている実感を、味わいたい。

それってワガママ?

「スタメン?」
『そうそう』
「何?凄いの?」
『普通?』
「え、ゴメン、わかんない」
しかもわたしは、バスケにあまり詳しくなくて。だから高校の頃も、全然部活とか応援に行かなかったり。今一緒にいれないって事実を考えると、あの頃、興味なくても応援行ったり。もっと一緒の時間を過ごてればよかった、なんて思います。
ちゃん。オレ頑張ったんだけど』
「おぉ。努力が認められたってヤツ?」
『そんなとこ』
「凄い。おめでとう」
バスケのルールはよくわかんないけど。仙道のやってる練習内容とかもよくわかんないけど。全然今までと違う国で、仙道が頑張ってたことは知ってる。

「あ、そーだ。すんごいコトになってて」
『凄いこと?』
「凄いことが二つね」
『?』
「良い凄いことと、悪い凄いこと。どっちから聞きたい?」
『良いこと』
「えー!おかしい。良いことはとっときたいもんでしょ?」
『悪いこと先に言いたいんだろ?』
「イェス」
『だったら言えばいいのに』
「聞くなってことね」
『イエス』
ニューヨーク、最初から仙道は一人暮らしの道を選んだ。チームの監督さんやらの勧めで、慣れるまでのホームステイとか。そーゆーふうにもできたらしいんだけど。自分にはホームステイは合わないからって、一人暮らしを選んだ。
そして、あたしが電話をする日は必ず家にいる。
「えーと、電話代が凄いのね」
『今月も?』
「毎月のように言わないで下さい」
『今月電話しすぎたっけ?』
「今月電話代ありえない」
バイト代全部飛んでって、遊びにいけないんだけど、と。は数字を口にする。やたらとゼロが多いのは気のせいだろうか。
『だからオレが電話するって、』
「外国で一人暮らししてる学生さんに無理はさせられないわ」
『あ、カッコイイ』
「でしょ?」
国際電話はやたらと高い。普通の電話なんて比じゃない。
『しばらくメールだけとか』
「絶対無理。嫌。死ぬ」
『大げさだな〜』
「真面目だし」
『オレもだけどね』
「………でしょ?」

嗚呼、バカップル。

「電話代高いからー」
『高いから?』
「あたしのこと、側に置いて」
何を言うか。この可愛い彼女は。
……』
「側に置いてね」
『お前さ、』
「もうちょっとだから」
『は?』

少し間をおいて。

「研修、ニューヨーク」
『………は?』
「語学研修留学、ニューヨークになったの」
『マジで?』
「再来月から」
だから待ってて、と。笑ったに、仙道も笑う。何だそーゆーことかと、小さく漏らして。
「んじゃ、そーゆーことだから」
『え、そーゆーことって、』
「じゃーね」


プツッ、

無機質な電話の音。


「一方的だなー‥」
カタンと受話器を置いて、傍らのベッドに腰を下ろした。
やけに、可愛らしいことを言われたもんだから。会いたくて仕方がない。側に置いて、なんて。そうそう聞けるセリフじゃないよな。

二ヶ月先。そんなに待ってられないんだと。再度、電話機に手を伸ばす。

何て言おう。今すぐ来いって?それとも、オレが迎えに行くからって?
とりあえず、もう一度、君の声が聞きたい。

 

 


国際電話は高すぎるー。
03/06/08  ×