昼下がりのストレンジャー

 

 

「………ノウ……」

泣きます。



バシッ‥

「っテ、……何す、……ちゃん?」
「天罰」
「は?」
御子柴と優雅にコロッケパンを食す関川。半泣きになっている女に、頭を殴られた。しかも筆箱。まぁ、ビニールだったから特に痛くはないけど。
「ムカつくの!コロッケパンが!」
「はァ?」
「あたし、頑張って走っても、……間に合わなかったのに!」
「え、オレ?オレのせい?」
「………関川なんか一生コロッケ食ってろ!」
その後もクラスじゅうのコロッケパンに八つ当たり。正確に言うと、『コロッケパンを食べる者』に八つ当たり。
「そんなにコロッケパン食いたいか?」
「さ、さァ……。あげれば良かったじゃん」
気になるならさ、と付け加えて。御子柴は2パックめの牛乳に突入。
「食いかけもらって嬉しいかよ」
「オレなら嬉しいけど」
「そりゃお前は男だから別にいいけどよー」
ちゃんは、言いかけて、耳を赤く。
「くくく、食ってたら」
「んー?」
「か、間接キス?」
「ぶっ‥」

関川少年、思春期真っ盛り。















「ガッテム!」
、本日も惨敗。
「あー…、カツロースカツロース」
カツロースを連呼しながら、は中庭へと入っていった。
今日はもう、教室に戻る気力もない。大袈裟なは、そこで昼食を取ることに。みんな探しに来るかなぁ。………いや、探すより食ってんだろうな、あいつら。そんな考えが頭を過ぎり、ゴソゴソとおにぎりを。

今日はカツロースだった。

関川。

昨日はコロッケパンで。明日のお昼も多分、購買のパン。来週の月曜日は学食。
ここ最近、関川のお昼のパターンを覚えてしまった自分。
恋のチカラって素晴らしい。
この才能をテストで発揮できないものかと苦笑いながら、おかかの入ったおにぎりを頬張った。





一方、購買前。

「………コロッケ」
残り一つのコロッケパンを前に、悩む関川。
「あーん?何やってんだ?」
通りかかりの平塚を見て追い払う仕草をし、もう一度考える。
「なっ‥、失礼なヤツだな、関川!」
「ひ、平っち〜‥」
「………買うか」
財布の中身を見てため息をつきながらコロッケパンを手に取った。
「関川、さっき教室で食ってなかったけ?」
「あー‥、予備」
小腹が空いた時のためにな、そう笑って購買を後にする。

いや、コレ、別に。ちゃんが食べたいだろうって。
そう思ったわけじゃねぇよ。
ただ、何となく。
もしかしたら、もうコロッケパンなんてどうでもいいかもしんないし。つーかむしろ、もう食ってるかもしんないけど。そうなったらオレが食べればいい話。



「ん?」

見慣れた人影。中庭の草陰。悪いけど、目はいい。
その人影を目標に。





「………ちゃん?」
「んう?」
振り向いて。

「へひはは」

……関川。


「な、何で一人で飯食ってんの?」
ん、と口の中を空にした。
「ちょっとね〜、大した意味はないんだけど。関川は?」
「いや、別に」
「ふ〜ん?……あれ?」
「え?」
「ッ、こ、コロッケ、パンッ!」
手にあるコロッケパンを見て、思わず立ち上がる。
「え、何……」
「何でコロッケパン食べてるの?だっ……」
「あー、コレ。やる」
「………はい?」
無理やりというように渡されたコロッケパン。
「何で?」
「昨日食いたそうだったから。今見たらあったし」
「………えぇ?」
「い、いらないんじゃいいけど」
「え、う、ん?あー、ありがとう」
貰ってしまった。
「でも、明日、関川、大丈夫?お昼」
「平気平気。ヤバかったら御子柴にでもたかるから」
「た、たかるって……」
「大丈夫だっ……て、ゆーか。何でオレの昼飯……」
「へ?」
「財布の中ヤバイって知ってんの?」
あ、しまった。ストーカー行為がばれてしまう。
「………どこかでオレのよくねー噂が立ってるとか」
「や、そうじゃない、よ。………ははっ」

てゆーか、これはチャンス?女は度胸の試しドキ?

「………関川!」
「えっ」
「週の中盤から、お昼困ってることは知ってます」
「え……」
「月曜と火曜は学食でも、水曜からは殆どパンで」
「ちょ、チョット待って……」
「昨日コロッケパン、今日はカツロースサンド」
「よ、よくご存知で…」
「あたしも今日はカツ食べたかったけどまた惨敗でおにぎり食べて」
「うそっ?食ったの?じゃあコレいらな、」
「いる!」
「あ、はい」
「昨日も今日も、関川と同じの食べたかった!」
「………へ?」
「同じお昼ご飯を、………食べたいと、思いまし、た……」


ここまで言って。

気づかないなら、そうとうアホ。


「………ちゃん」
「………以上です」
外気に触れた、残りのおにぎりを見ながら。早く食べないと美味しくない、なんて思ったりして。それでも、関川が何か言ってくれるまで動けない。

「………明日」
「ッ、は?」
「多分、焼きそばパン。……候補ね」
「焼きソバ、ぱん」
「なかったら……。……つーかさ」

オレが買ってくるから、ここで待ってて、明日。
耳まで赤い、関川の顔。

君のお昼のパターン。
本人公認で盗ませて頂ける、らしいです。

 

 


関川お昼購買争奪戦速そう。
03/01/18  ×