| Thank you DEAR |
|
困った顔が辛かった。 「あァ、うん……、その、」 噂は本当だったらしい。 「ゴメン」 ほら、あんたの口からその言葉。今までからは考えられないような言葉。それを聞いたのは私だけじゃないと、そんな噂も相乗してた気がするわ。 「あのさ、」 「な、何だよ」 「彩子とは別に、」 「あ、彩ちゃん?」 宮城リョータ、今まで告白した女は数知れず。その過去の告白リストには私が含まれてること、あんたは覚えてるでしょうか。大分前だからもう忘れてる?そんなはずないよね。だって、今はこんなに仲がいいんだから。 「つき合ってないんだよね?」 「あー‥、全然」 つき合うなんてとんでもないと、あんたは笑う。 噂、こんな噂。 宮城リョータが女に手を出すのをやめた。聞こえは悪い、けど、彼が誰彼構わず気に入った子への告白をやめたということ。本命一本に絞り、彼女への愛を貫くと、うちの学年では噂になってます。 告白されて、でも断って。その後にあんたを意識しだした私の想いをあんたはどう責任取るの?仲良くなって笑ってる。毎日少しずつあんたに惹かれた私の想いの責任を。自分でどーにかしろって、誰かに言われればそれまでだけど。 「バスケでさ、」 「あ、はい」 「試合してる姿とか、カッコ良いんじゃん」 「そーか‥?」 「みんな言うでしょ?」 「え?」 「リョータ、モテるよーになっちゃったもんね」 聞いた話によると、彼はモテ始めてしまったらしい。自分目当てに体育館に練習を見に来てる女生徒たち。でもそんな彼は、最終的に、やっぱり一人の女神に。 片っ端からゴメンと断り続ける彼。告白したこれまでの女の子たちの中には、私と同じように、彼に告白された子だっていたんだろう。 もう遅かった? 違う、きっと違う。 私に告白した時点で、そしてその前から、彼の中には彩子がいて。なのに何で他に目を向けるのか、なんて。そんなこと私にわからないけど、 ねぇ、あんたの罪は少し重いものがある。 だから私も少しだけ、嫌な女になってもいい? 「リョータ」 「え?」 「リョータ、私に告白したことあるんだよ」 「あ、……あぁ」 「それから意識しだして、今に至る」 「……………」 「好きになったのは確かに私の勝手かもしれないけど」 少しは責任感じなよ。言葉は空気を揺らし、宮城の耳に届く。 「責任?」 「私のお願いきいて」 「お願いって、」 「つき合ってとかは言わない」 彩子好きなリョータとつき合っても、どーかと思うし、は顔を上げて小さく笑った。 「もう私と話さないで」 「は?」 「無視して。見つけても」 「何で、だよ」 「それがいやならさ、」 今、私のこと抱きしめてよ。 「………だ、抱き?」 選んで。一瞬彩子への想いを裏切るか、 それとも、もう私との友だちって関係を切るか。 「お前ね、そんなの、」 「いっぱいいっぱいなのよ!」 「っ、へ?」 「苦しいの、もう、苦しくて、」 「‥?」 「あんたが彩子を好きなのに、私がそれを見るってことが」 でも見てしまう。目で追ってしまうんだもの。 「近くで見てることが‥」 究極の選択。 それは私にとっての究極の選択で、もう私と話さないでいてくれれば、それはそれで。あんたが一瞬でも彩子を裏切るのなら、私は諦めない。 「リョータ」 ねぇ、どうする? 視覚は遮られた。 あんたの体に。 「こーすりゃお前と友だちでいられんの?」 「っ、」 「そーでもねェだろ」 「リョ、」 「こーやってお前を抱こうが、」 これがお前じゃなかろーが、斜め上から声が落とされる。こんなに近くで聞くことのなかった声が。 「オレの想いは彩ちゃんを裏切ってねェから」 私のことを、想ってもいないその心で。たった一人を想うその心が入った体で。 抱きしめられるってことは、きっと、友だちって関係を終わらせることより辛い。 だから私は苦しいんだと、大好きな男の腕の中でもこんなに苦しいんだと、自分の行為は、悔やんでも悔やみきれない。 「リョータ」 「んー」 「ゴメン」 「おう」 「ゴメン」 「わかったよ」 「でも、ね、もう、無理、」 「………おう」 でも、バカな自分を少し褒めるんだ。諦めがつくかもしれないんだもの。だってもう、友だちでいることも限界だったから。そのくらい想いが膨らんでしまったから。 あんたの腕の中で涙を流しきったら、彩子の顔を見に行こう。あんたが好きになった彩子の顔を正面から見て、それで、ねぇ、想いに区切りをつけるんだ。 そしたら私、また、別の道を歩いていける、そんな気がするから。
こんなリョータは嘘だ。
04/01/26 × |