不審者の心情

 

 

惚れるな危険。(もう惚れてるけど)

たったかたったかたったかたー。
ハンドルを握る手、その指が奏でる静音。
たったかたったかたったかたー。

目端に映るからすっごく気になる。毎度机をコツコツ叩く癖の続きだろうか。軽く握るそのハンドルに奏でられるのだ、たったかた。

こんにちは、私、と申します。ただ今、俗に言う恋人っぽい関係の人と一緒にいまして。彼の名前は四之宮浩太というのですが、32歳のおじさんです。おじさんというと不機嫌満載なので口には出さず心の中で思うだけ。
そのシノミー(四之宮さん)なのですが、彼はよくある癖を持ってまして。ほら、暇な時とか考え事する時に指をコツコツって。まぁ誰でもするような癖なんですけども。今ハンドルを握る指も、その癖を連発してるわけなんです。
そしてそれを目端で捉えてドキドキする私がいると。

先日までの私なら、その癖にドキドキすることなんてなかったのよ。ドキドキどころか、何なのその癖ウザイんですけどみたいな。真正面からその指を見て、気になるからやめてって口に出してた。

はず、なんですけど、

気づいたからウザイとも思えなくなった。何に気づいたって、シノミーの指が凄く凄く好きなことにね。真正面からまともに見ることもできず、盗み見状態。何言ってんだとか笑っちゃいやーよ。つーか笑うんじゃないよ。
あのね、男らしい角ばった手でさ。装飾品なんか一切つけてない長い指でね。形も好きだけど、その手があったかいことも知ってるんだ、私は。そのあったかさが大好きで。あぁ、本当に好きだなぁって思う手。

でも、そう思い始めたのはつい最近のこと。
気づくのが少し遅かったみたい。いやぁ、あのね、そう、だってね、……うん。
その手を見ると思い出しちゃうからなんだって思う。

何をって、えーと、

ハンドルを握るその手は、私を抱いてくれる手だって。
思い出すんだ、優しく抱いてくれるあの手を。手の感触が鮮明に蘇って。ハンドルを握ってるはずなのに、私の体を這う。きっと、ずっとその手を欲してるから、そう思うんだけど。あぁ、何かもうメロメロじゃないか。
てゆーか何欲情してんだと‥思いますけど、自分でも。


「何だよ」
「えっ」
「何見てんだよ」
「み、見てない‥」
首を振ると、眉を顰めて前を向き直すシノミー。

知られちゃいけないぞ、こんな弱味は。調子に乗らせるだけだ、この大人の男を。
ハンドルを握るその手を見てドキドキするなんて言ったら、絶対に笑う。笑った後に、きっと盛ったガキみたいに耳元で囁く。隠しもしないで欲望を全面に出すんだ、少年のようなこの大人は。
そして私はそれを拒めないから、寧ろ黙って従ってしまうから。だって拒みきる自信なんてどこにもない。(手を見て欲情するくらいだし)

だから極力見ないように心がける。ハンドルを握るこの男の手を。
その手に慣れるまで、挙動不審になりながら。

 

 


ヒロイン独白と言いますか、何と言いますか。
04/06/02  ×