Fun's better,isn't it? (11)

 

 

少し待ってろと、四之宮に言われ、もう開き直ったは制服のままロビーのソファに腰を下ろした。

やはり和生は昨日出会った紳士で、その紳士は四之宮浩太の伯父であり、この会社の社長なのだ。二人の会話で、彼が自分と浩太の仲を快く思っていなかったということはわかった。だけど、先ほど、そして昨日の彼の態度からすると、
あぁ、どういうことなんだろう、曖昧な頭は少しの混乱を見せる。


その時、


「こんにちは」
「へ?……あ、」
「浩太を待ってるの?」

綾瀬涼子だ。

「……そうですけど」
「そう。なら‥次の機会にしましょうか」
私の用事は、そう付け足して考える仕草。
何故だろう。先日のような不安な感覚が、の中にはもう存在しなかった。
「えーと‥」
「?」
「あなた、名前は?」
「……です」
、何?」
「え、‥ですけど」
ちゃん。そう‥」
ニッコリ笑ったその顔は憎むことのできない、
「浩太に伝えて欲しいんだけど、」

彼女の言葉に安心して、憎むことすら忘れてしまったと言ったら都合がいい。

だけど、きっとそれは本音だった。

「結婚式の日取り、エアメールで送るって」
それじゃあね、ちゃん。綾瀬涼子は憎むことのできない笑みを零す。
そしては、その笑みを憎む理由などどこにもないことを知った。















「涼子が?」
「うん。エアメールだって」
四之宮にその話をすると、そうかと言って煙草に火をつけた。

彼女は結婚するらしい。見合いを引き受けたのは、祖父にどうしてもと言われたからだという。祖父というのは和生の恩師で、もう老い先短いという話だ。彼女は見合い相手が浩太だと知り、見合いを断る、若しくは自分が断る状況になることを許してほしいと浩太に話した。

「言っただろ」
「う」
「変な勘ぐりするなって」

車は人通りの多い場所に入る。

「それにしても」
「へ?」
「伯父貴、……煙草って何の話だ?」
「………さあ」
「お前が知ってるわけもねーか」
ごめんなさいね、四之宮さん。だっておじさんの目が言ってたんだもん、内緒だーって。だから、これだけは内緒。
「あ、あのさ、」
「あ?」
「興味ついでにー‥、何でその煙草吸ってるの?」
前はマルボロだったんでしょ?が言えば、お前なんで知ってるんだと四之宮は言う。
「ま、前、ほら、涼子さんが言ってたじゃん」
「そうだったか?」
「何で覚えてないの」
「覚えとくことでもねーだろ」
眉を上げ、ハンドルを切った。そして咥えた煙草を口から離し、に渡す。

「ジタンな」
「うん?」
「お前、ルパン知ってる?」
「へ?」
「ルパン」
「………まさか、」
「まさか」
「嘘でしょ?」
「何で嘘つくんだよ」
「そんなんで煙草決めるの?おかしくない?変だよ!」
おじさんといいこいつといい、そんな理由で煙草吸うの?まぁ、並木さんの理由もバカだと言ってしまえばそれでお終いだけど。
「じゃ、じゃあマルボロは?」
「……次元」
「はぁ?」
「ルパンの仲間で次元って、」
「マジで?隠れたあの意味とか何も関係ないの?」
「隠れた意味?……あぁ、あれな」
そんな理由の方がバカじゃねーか。四之宮はの手から煙草を取り上げ、口に戻した。その言葉に、あぁ、並木さん、全否定されちゃいましたね、は苦笑う。

「もう慣れただろ」
「へ?」
「オレの味に」
「………ど、独特だよね」
「オレしか知らねェんだっけ?」
「う、うるさい」

あんまり思い出させないで。恥ずかしくなってくる。

「てゆーか、あの、」
「ん?」
「別に送ってってくれなくても一人で帰れたし」
「あ?」
「会社、折角行ったんだからあのままいればよかったんだよ」
「………何で?」
「何でって、あたしおいてまた会社行くの面倒くさ、」
「何で会社行くんだよ」
「……は?」
だってそれは、今日あなた会社のはずでしょう。土曜だからあたしはガッコないけどさ。
「か、会社、」
「有給?」
「はあっ?」
「さっき、事務」

ロビーであたしが待ってた理由はそれだったのか‥!

「何で有給取る必要があるの?」
まさか昨日の今日で疲れた?この男がそんなことあるわけないと思うんですが。
「もしかして、つ、疲れ、」
「お前足りた?」
「………へ?」
「折角、‥な?」
「な、って何?」
、」
「………嘘でしょう?」
「どの辺が?」
「!」

初めての一夜は、初めてなのに官能のまま過ぎました。
初めてなのに、無理をしたってわかるほど、そんな官能的な夜。
そんな夜が終わったばかりなのに、この男はまだ足りないようなことを言う。



車が、朝出てきた家に向かって車線変更。

もう遅いことは十分承知で。この車から逃げることも、あなたの家から逃げることも、あたしにはきっとできることなんだけど。

四之宮さん、あなたから逃げることだけ、あたしにはできないみたいです。

 

 


長期連載その2完結 初めて終了ものがたり。
04/03/31  ×