Fun's better,isn't it? (10)

 

 

温もりのある人肌。誰の腕よりも逞しく、愛おしい。

広いベッドなのに、半分は使ってないみたい。あなたの腕の中にいる自分に気づく。
「………ん…」
小さく身じろぎしたと同時、その手は肩を包んだ。
「…四之宮さん…?」
「寒いか?」
髪が乱れたあなたの姿。お風呂上りの、髪を下ろした姿は何度も見てきた。それと変わりない感じなのに、……何か違う。
「……おはよう…」
あなたにそれを、一番に言える日がきたことが嬉しい。
「おはよう」
夢のように思えて、そっと触れてみた。四之宮さん、が呟けば、四之宮は人差し指をその唇に。当ててすぐにキスを落とす。あぁ、夢じゃない。

「………体、」
「うん?」
「大丈夫か?」
そうよ、ねぇ、あたしはあなたを怒らなきゃいけない。あたしには初めての経験だったのに、なのに、あぁ、でももしかしたらそういうものなの?あたしは初めてだから、知らないだけなのかもしれないのよね。
「ちょっと、重いかも‥」
「無理させすぎたか」
「……やっぱり」
気持ちが昂揚して、覚えていたのは二回まで。二度私はあなたに導かれました。そこからは数えてない、そんな余裕なかった。

「風呂入るか?」
「入るー」
「一緒に?」
「ちょっと待ってよ」
「冗談だよ」
笑ってベッドから抜けた四之宮はいつの間にか下着をつけていて。あれ?ちょっと待って、何であたしだけ、なんてまた、昨日と同じように思ってしまう。は上半身を起こして、掛けていたシーツを身に纏う。
「お先にどうぞ」
「四之宮さんは?」
「後でいい」





「あれ?」
どっか行くの?リビングでコーヒーの用意をしていたは首を傾げた。
四之宮はいつもの会社スタイル。で、数日前に自分が置いていったジャージを着ている。
「お前もな」
「は?あたしも?」
「そう。外出る格好しろよ」
「制服しかないじゃん」
「だったらそれでいい」
さっきお風呂から出て着替えたばっかなのに、そう口を尖らせて言った。いいから早くしろ、四之宮はの淹れたコーヒーに口づける。膨れっ面をしながらも、は再度寝室に引き戻った。




















不相応だ。自分で言うのもなんだけど、かなり場違いだと感じる。
「し、四之宮さん」
「あ?」
「やっぱりあたし車の中で待ってるよ」
「お前が来なきゃ意味ねェだろ」
「知らないよ、そんなのっ」
目の前には会社。四之宮グループとかなんとか、表記された会社の標石があった。
「早く来い」
「っ、し、四之宮さんっ!」
腕を引かれ、社内へ。
あぁ、視線が痛い。そりゃそうでしょうよ、この人と女子高生ってどーいう組み合わせなの?おじさんとか女の人とか、みんな怪訝な顔で見てる。

「意味わかんないし!」

初めて、の朝にとる行動でもない。
待ってよ、それを繰り返しても、男は聞く耳を持たずにさっさと奥のエレベータへ。開いた中からは社員らしき人たち、他と同じように反応し、二人の様子を見ながら降りていった。手を引かれて中に入ったは、四之宮の顔を見る。最上階のボタンに続き、『閉』のボタンを押した。

「……な、何するの?」
「ちょっとな」
「うー‥」
エレベータが上がっていく重力の感じに、よくわからない不安が募る。この男はなぜ自分を会社なんかに連れてきたんだろう。
一度も途中の階で止まることなく、最上階に到着。ポンッという不可解な音に反応し、は扉が開くのを待った。そんなの手を引き、四之宮はスッと廊下を進んでいく。ももう何も言うことをせず、四之宮に引かれるままついていった。





「……社長室?」

の声が二人以外人のいない廊下に響く。
その大きな扉の前で、四之宮は足を止めた。















その扉を開けて中に入ると、確かに社長の風格を持つ男が一人立っていた。
四之宮は男にのことを紹介し、にもその男を、自分の伯父であり会社の社長でもある男だと紹介する。
しかしはポカンと口を開けてただ見ているだけで、

だって、


「どうかしたかな。お嬢さん」


昨日一緒に夕食食べたじゃない。



「い、いえ‥」
紹介された四之宮和生という男は、知り合いだという素振りを一切見せない。

「それで?何のつもりだ、浩太」
認めて下さいと言いに来たわけでもないだろう?和生は言い、浩太に向けて不敵らしい笑みを浮かべた。浩太は浩太で、勿論、そう言っての腰に手を添える。
「あぁ」
「だったら何をしに来た」
「見せつけに」
「何だと?」

「へ?‥っ、んぅ‥」
降ってきた唇を防ぐことはできない。予測できない行動を、どうやって防ぐことができるの。少しして離された唇は、しっとりと濡れた。
混乱した頭で浩太を見てから、和生に目を向ける。

「見せつけに、か……」
「あんたが何をしようと、こいつとオレの関係は変わらない」
それを言いに来たんだ、浩太と和生の交わす言葉の意味を次第に理解しだしたは浩太のスーツの端を握った。それに気づいた浩太はに笑みを見せる。

「じゃあな、伯父貴」
「し、四之宮さん、」
「行くぞ」
背中を押され、扉に促されたは振り返った。
視線の先には和生。人差し指を唇に当て、にだけわかる笑みを浮かべる。

「っ、」

やはり彼はあの日のおじさんで、だけどその目は内緒だよとでも言っているような。

「浩太」

笑みを解いて背を向けると、面白そうに声を発した。

「お嬢さんに教えてやるといい」
「あ?何、」
「お前が何で、その煙草を吸ってるかをな」

 

 

 

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04/03/28