Fun's better,isn't it? (9)

 

 

ベットのスプリングが、大袈裟に弾む。

キスが長い。

「……っ、…んぃ……」
離れては口づけられ、繰り返された。官能と苦しさの狭間から開放されども、その距離が大きくなることは無く、動いたら唇が触れる。息をすることさえ、やはり困難。
「ん?」
「…苦し、……」
「そうか」
笑った四之宮はの肩に頭を埋め、空いた手は腰に添えられる。

寒くはない。下着姿なのに寒くないのは、この男の体温。
四之宮さん、ずるい、は言い、緩められたネクタイをキュッと掴んだ。

「あたし、だけ‥」
女が男を誘う文句。無意識に彼女は口にする。

四之宮さんも脱がなきゃずるい‥

「ボタンのはずし方、」
「え?」
「知ってるだろ?」
の手をシャツに導き、己の手はネクタイを解いた。少し震える手でシャツのボタンをはずす。一つ一つ、他人のボタンをはずすのは初めてだ。
「早く」
「だ、だって、」
低い声を漏らして吐息を耳にかける。笑いながら彼女を急かし、それに対してオロオロする姿が可愛い。
「早くはずせよ」
「ま、待って‥」
最後のボタンを外したと同時、四之宮は耳を甘噛みした。
「っ、んぃ‥」
「ん?」
「くすぐっ、」
「敏感だな」
「違、」
「違わない」
くすぐったい場所は気持ちよくなる場所だよ、徐々に唇が降りてくる。

首筋、鎖骨、胸 ──‥

ゆっくりベッドに倒れこみ、背中に添えられたままの手がホックを外した。慣れている、外すのに手間取らないのが少し憎らしい。

「……あ、‥や、……」
太腿の内側を指先でなぞられ、小さく声が漏れる。露になったその膨らみに、舌先の甘い快感が与えられた。小ぶりなそれは大きな手の中で揺れ、意識が集中する。
「…ん…、‥っ、しの、……ん‥」

「な、なに‥」
「そんなに煽んな」
「や、……知らな、‥い‥、」
こもったような声に触発され、太腿に滑らせた手が、敏感な部分に触れた。

「んぅ、や、やだ、四之宮さんっ」
「何が?」
「な、何、って‥、だ、……やだ、」
「……本当は?」
「っ、あ、や‥」
「嫌じゃないよな?」
「は……ぁ、んぅ、……っ」

「あ、あ、やじゃ、ない‥」
ゴツゴツとした指先が、徐々に中を侵していく。
時計の音すら聞こえない薄暗い寝室には、二人の吐息、微かに甘い、濡音。



あぁ、信じられない。
初めてなのに、どうしてこんなに恐くないんだろう。

嫌だった、前まで、こういった行為が好きではなくて、嫌いで。少しだけだけど、関係してた男と別れた理由は殆どがそのこと。今まで嫌だと思っていた行為が、恐いと思っていた行為が、恐くないのはどうして?



「ん、‥しの、み‥やさんが……」
「あ?」
「‥四之宮、さん、だから、かな‥ぁ?」
「何が?」
甘く囁く声が、背筋を震わせた。指は先ほどより大分大胆に、彼女の中を動いている。
「何でも、ない‥」
「………口、開けろ」
「う、……んぅ、」
緩く微笑んだその表情に、思わず口づけを。甘いその笑みに、全てを。


「ぅん‥?」
「限界、」
「……限界?」
「あぁ」
「……うん……」










痛くてもいい。
その甘い痛みを受け入れることができるのは、あたしの特権。
あなたという人を好きになった、あなたという人に選ばれた、あたしの特権なんだから。










「……ぃ、あ‥っ、た……んう‥」


受け入れる体の準備はわからないけど、


「あ、……っ、ん、は……あぃ……」


心の準備は、とっくにできてるから。










「痛いよな」
「……っ、」
初めての感覚に、苦痛で顔を背ける。聞かれたはふるふると首を横に振って、痛くない、小さく呟いた。痛くないはずがない初めての行為の最中で、気丈にもそう呟く彼女に四之宮は小さなキスを何度も落とす。
「もう少し頑張れるか?」
「……平気、だって……言っ……」
「ゆっくりな」
少しずつ奥に進んでいくが、初めて受け入れる彼女の中は窮屈でなかなか進まない。グッと押し出すように、それでも彼女の体を支え、
「あっ、痛、……あっ‥は……」
、……力、抜け‥」
「ん、やぁ、……無理ぃ……」
「……ほら、」
強引に唇を開け、舌を挿入する。指先は結合部の敏感な箇所に滑らされ、
「ふぁ‥っ、あ、四之宮さ、」
力の抜けた体に合わせるように、全てを埋め込んだ。

「んぅあっ、‥ひんっ‥」
「平気、なんだろ?」
「あ‥ぃ、平気だも、」
の腕が四之宮を抱き、指先が背中に食い込む。圧迫される意識の中で、爪伸びてなくてよかった、そう考えるのは、まだ少しばかり余裕がある証なのだろうか。
は瞳を薄っすらと開け、目の前にいる男の表情を読み取ろうと、


あぁ、どうしたの?四之宮さん、


「……のみや、さ、……どした、の?」
「あ?」
「苦し、い?」
「そりゃ、……お前だろ」
「苦しそ……」
背中に回した手を、四之宮の頬に当てた。微笑んだ四之宮はその手をゆっくりと自分の唇に触れさせる。

「お前が、苦しそうだから‥」

やっぱりあなたはあたしの好きになった人だと、その言葉を聞いて思った。





下腹部がいっぱいになるような、その中でスライドする圧迫感。
大きなサイズのベッドは音を立てて軋み、が小さく上げていた苦痛の交じった喘ぎは、徐々に快感を交えたものに。
見上げれば、愛しい男の顔が見える。手のひらを腹部の逞しい腹筋に触れさせた。四之宮は微笑み、体を支える手とは逆の手での額の髪の毛を除く。

「んっ‥、あ……、はぁ‥へん、な‥こえ‥」
「出せよ。もっと、……声、」
言えば、こぼれる嬌声が官能を帯びた音に変わっていった。それに相乗する、泣きそうな表情が愛おしい。思わず強める動作、は苦痛を訴えることはせず、声は明らかに追い詰められている。

「ンう、‥っ、は……あっ‥も、変、しの、……」
‥」
「んっ‥んっ‥、……あぁ、」
、」
「なぁ、に‥」


誘った、……促された気がした。



「……ん、浩太……」

あなたの名前を、呼びたかった。



満足したように、四之宮は激しく攻め立てる。
もそれを受け止めて、快楽に熱くなる身を沈めていった。

 

 

 

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04/03/05