| Fun's better,isn't it? (6) |
|
「並木さーん。元気〜?」 肺炎。笑える気分じゃないけど、笑ってやった。 病室を覗くと、病人には見えない男の姿。ベッドに横たわり、青年誌を読む並木。 「、見舞い品は?」 「は?生意気なんだけど」 「並木さん大丈夫っすかー?」 「〜っ」 「〜じゃねェよ。てめェはよ」 大分違うその態度に些か腹を立てながら、ベッドの横にある椅子に腰かける。 「はいよ。並木さん。お見舞い」 「はオレの天使だよ」 「あはははっ。天使ならここいっぱいいんじゃーん」 病院は白衣の天使で溢れかえっていた。 「あぁ‥、なー。白衣の天使を期待するよな」 「へ?」 「何でオレの担当村井さんなんだろ」 「何なに。おばーちゃん?おばちゃん?」 「25歳」 「うっそ」 「何、当たりクジじゃん。彼氏いんの?」 「彼女がいる」 「……男か」 「それでも白衣の天使に変わりないっしょ」 「、オレの白衣の天使に、」 「並木さん全然病人じゃないよね」 二、三日並木の姿を見かけず、おかしいねーなどと女子高生二人は言っていた。 並木のクラスの担任に聞けば、何故か肺炎で病院に入院中だという。並木の友人に声を掛けたら、何でも雨の日に一日バイトをしていたそうで、そのバイトってのが道路工事の交通整備だときたもんだ。この人が肉体労働をしたこと自体、何だかとても珍しいことだったりする。 「あ、並木さん」 「ん?」 「とりあえず、あたしの見舞い品」 「あ?何」 「」 「へ?」 「は?」 ニコッと笑って、二人を見た。 「あたし帰るね」 「え、カラオケ行くんでしょー?」 「だからその時間、並木さんにお見舞い。の時間のみだけど」 いい夢みせてあげよう。何だかんだで、並木さんには結構お世話になってるし。 「いや、でも、」 「うん?別にいいよ。このまま帰ってもアレだし」 「マジで?」 「並木さん」 「んあ?」 「これ、病の中でみた夢なんで」 「夢でも何でも結構です」 ははっと声を上げて笑ったは席を立つ。病室のドアに手を掛けて、それじゃあね、と。あ、そうだ、は思い出したように振り返り、 「並木さん、病気治ったらまた愚痴るから」 「何?四之宮さん?」 「そそ。も覚悟しといてね」 「ファミレスね。ファミレス」 パフェ食べたいなー、暢気なの声に背を向けて、病室を後にした。 はね、ちょっと屈折したとこがある。 いい子だけど、何にも考えてないようにみえるけど、実は色々考えてて。あたしは親友だと自負するけど、あの子のこと、全部知ってるわけじゃない。 時々、あの子がいろいろ抱え込んでるような感じを見せることがあって、でもそれはきっとあたしがどうにかできる問題じゃないんだ。 だからね、並木さん。 あたしはに、並木さんみたいな存在が必要だと思うのよ。お勧めするわけじゃないんだけどさ、二人が仲良くなれば良いって、あたしはそう思ってるの。 「お嬢さん」 「へ?」 自動ドアの前に立った時、背中に声を掛けられた。 「あ」 振り向くと、 「さっきは悪かったね」 一人の男が立っていた。 は邪魔にならないように自動ドアの前から退き、その男の斜め前に一歩進む。 「どーいたしまして」 「いくらだったかな」 「えーと、240円。200円でいいよ」 笑った後にうそうそ、200円くらいいいよ、は言ってじゃーね、おじさん。 「だったら送ろう」 「へ?」 「お友だちは?」 「あー、あの子はいいんだけど、てゆーかおじさんバスで来たじゃん」 「車を呼んだんだ」 「タクシー?」 あぁ、もしかしてラッキー?駅まで便乗させてもらおうと、は頷く。 「いいの?おじさん」 「バス代のお礼だよ」 「やった!」 病院の自動ドアが開き、目の前にあった車は、 「え」 タクシーなんて庶民的なものではなく、 「これ?」 「さぁ、乗りなさい」 運転手付きの黒いハイヤー。昔の記憶が、頭のどこかで交差した。 似た空気、同じ空気。この人の空気は、愛しい男を思い出させる。 その紳士は、結構強引だった。そしてそんなところも、大切なあの男に似ている。 バス代のお礼に夕食でもご馳走しようか、紳士は前置きもなくそう言った。一瞬頭に疑問符を浮かせたは即座にお断り。知らない人にそんなことされたら困ると、申し訳ないですと首を振る。しかし紳士は引き下がらない、オレは知らない人に助けてもらった、そう笑うのだ。 ほら、こんなところが彼に似てる。 その笑顔も、少し似ているかもしれないとは思った。
|