メイキングライフル (おまけ)

 

 

「美味しい」
「当たり前だろ」
パスタ、パスタ。エビの入ったクリーム系のパスタを、
「偉そうに」
作っていただきました。
篠宮さん、もとい、四之宮さんに。
「お前食わせてもらってる身分でなぁ」
「うわ、何かその言い方イヤだ」
愛人みたいじゃん、と。フォークにパスタをくるくると巻きながら。

一緒に料理をしてる時に聞いた。………とは言っても、あたしは見てただけだけど。ご飯食べてるときでいいじゃんって言ったのに。改まってるみたいでイヤだと、この人は話し始めた。
前置きは 「大した話じゃない」 だった。
四之宮さんのお父さんのお兄さん、つまりオジサン。そのオジサンは独身で家族がいなくて。もちろん子どももいない。四之宮さんはそのオジサンの会社で働いていて、その会社っていうのが日本でも有数の資産会社らしい。結構可愛がってもらってるらしく、いいポストについているということ。
四之宮さん曰く、オレが有能だからだけどな、って。


「テレビつけよーよ」
「あァ?」
「はん?」
いーじゃん、はリモコンのスイッチを押す。
「飯食ってる時くらい」
「あのねー、知ってます?テレビはコミュニケーションの一環よ?」
話題が沢山見つかるでしょう。冷たい紅茶を喉に流してテレビのニュースに目を向けた。

と、

画面の向こうには見たことある場所。


「あれ?」

ここ、

「駅裏の……」

クラブ?

「………??」
「覚せい剤、ドラッグ所持で経営者逮捕」
その場にいた少年少女らも逮捕。四之宮さんは言い、二缶目のビールを空ける。
「えっ?何?」
「いろいろ世話になってる刑事とかいんだよ」
「………マジ?」
「マジ」
置いた缶に手を伸ばすと叩かれた。

「最初の目的。その刑事に頼まれて、エンコー少女更生のオトリだったんだけど」
お前、違ったし。でもまぁ、結果的には手柄立てさせてやったからいーだろ。そう言って笑う四之宮さん。
「エンコー少女ってあたし?」
「他に誰がいる」
「し、してないじゃん!」
「だから違ったっつってるじゃねーか」
「うわー。何か釈然としないんですが。てゆーか別にあたしじゃなくてもよかったんだ」
「あァ?」
「そーゆーことじゃん。別の女の子でもー‥」
「別の女だったら、今パスタなんか食ってねーだろ」
「…………あらそう」
釈然としないながらも何か嬉しいのは、それが特別だとでも言ってるように聞こえたから。

「あの時お前が」
「え?」
「オレを見つけてなかったら」
今はなかったな。少しでも時間がズレてたら今はなかった。ぼやくように言い、テレビを消した。
「何で消すかな」
「見てねーだろ」
「見てる」
「オレのことばっか見てたくせに?」
「………言ってろ」


嫌な男。

でもこんな嫌な男に、あたしは惚れているんです。



「はい?」
「上向け、上」
「ん?」
言われたとおり上を。白い紙で顎のトコを拭われて。
「ガキくせぇ」
「……失礼」
「どーせだったら口の横とかにつけろよ」
「口の横?」
「そっちの方が大人だろ?」


………大人?


「クリームつけることが大人?」
「だから。例えば……ここに、」
ガタンと椅子から立ち上がり、の頬をつねる。
「いひゃ」
少し笑って、顔を包むように。





「……………」





………ねぇ、ねぇ。

そんなとこについてたら、自分で舐め取れるんじゃない?





一度目は帰り際に。
二度目は頭のテッペンに。
三度の口づけは、あなたの部屋で深く堕ちた。

 

 


シノミーおまけ。
02/12/26  ×