メイキングライフル (5)

 

 

次の日、学校での声が響いた。

「あのカッコイー人だれー!?」
あまりにも大きい声だった。だから周りにはまる聞こえで、みんなの視線が自分に集まったことを確認するのは容易。
「……お前はっ」
の口を塞ぎ、後ろへ連れてく。
「何なの!」
「やー!見たんだもん。昨日!」
カッコイイお兄さんの車乗ってたでしょ?そう言ってニヤニヤと笑う。
「……どこで」
「夜ね、コンビニ行こうとしてたのね」
そしたらいたのと小さく言った。
「こないだの携帯のシト?」
「あー‥、もう」
「何よー。話しなさいよー」
「……あの人、オジサンだよ」
「えー!じゃ、お小遣い稼ぎ?」
「お小遣いはもらってない」
「まじ?」
「マージ。シノミーは友だち」
「………ふーん」










松田はヤバイやつ。
ここら辺では顔売れてて、危ないお兄ちゃんとかとも交流がある。

友だちが多い。

そんな男が前の女の噂を聞きつけるのに、大して時間はかからなかったんだろう。





「んー?」

廊下で呼ばれて振り返った。そしたら松田で。
嫌悪は隠せなかった。隠す必要なんてどこにもないんだけど。

「………ト……、松田?」
「トモでいいよ」
今更そんなふうに呼べるわけないでしょ。
「何」
「お前、新しい男できたんだって?」
どこからそんな噂になったのか、噂には尾ひれがつきものってトコか。
「サイクル早いな」
「あんたに言われたくない」
別に新しい男ができたわけじゃないけど。
「ふ〜ん?」

ソイツにはさせんの?それとも辛抱強く待つって?鼻で笑った。

ムカツク。


「ウザイんだけど」
「ん?」
「目障り」
「あぁ、そう」
こいつに関わってるほど、あたしは暇じゃない。もうこいつに関わりたいとも関わろうとも思わない。なのに、横をすり抜けようとした腕を掴まれた。
「ッ、何」
「別れてもいいよ」
「は?」
「アイツと別れて。お前とつきあっても」
わけワカンナイこと言ってんじゃないわよ。が言えば、あてつけなんだろ?今の男、松田も言う。
「自信過剰にもほどがある」
「明日。いつもんトコ来いよ。返事はその時」
「行かないし」
「よく考えてみ?」

パッと手を離して、背を向けた。





アイツと別れて別の男のところへ行ったのが気に入らないんだろう。
だからこういうことをする。
あのバカはプライドが何よりも大事で、自分への周囲の評価ばっかを気にする。
今になったら、何であんな男好きだったんだろう。恋は盲目、いろんな意味で。

………今のあたしは、バカじゃない。

























「いっやーな男でしょ?」
『オレはまだ仕事終わってないって言ってんだけど?』
ムカつきがMAX100を越えてしまったので、一番聞いてくれそうなヤツに電話した。

篠宮さん。

『一回切るからな』
「え!ちょっと待ってよ!バカ!」

プツッ‥


「……うわー!ムカつく。マジでムカつくー!」

篠宮浩太!

あたしが忙しい時は何も気にしないくせに!学校だって言っても、友だちと約束があるって言っても全部キャンセルさせてご飯とか連れてくくせに!
あたしが必要だって言ってるときはシカトかい!

……男って勝手。

「……18歳のセリフじゃないわな」
うーんと唸ってから電話を投げる。
あの野郎、いつでも電話していいとかヌカシたくせに。あたしから電話することなんてそうないでしょうよ。なのに切るとは何事か。折角あたしが………、

いやいやいや、

まるで彼氏に電話したみたいじゃん。何をこんなに憤慨してんだ、あたしは。





20分してかかってきた電話の声は少し不機嫌で、だからあたしは少し怯えて。
「もう切ります」
『あぁ?さっきの話は?』
「シノミー機嫌悪いからいい」
『悪くねぇよ』

どこが?マジで悪いじゃん。

『松田だっけ?』
「あー‥、だからいいです」
『変な男に引っかかったもんだ』
「……もういいってば」
『ガツンと言ってやれば?お前になんか興味ないって』
心なしか面倒くさそうに聞こえて。
「お仕事頑張って下さい」
『あ?オイ』

プツッ‥


「何やってんだ、本当に」

忙しそうだった。自分のことで煩わせようとしてた。
あー。あたしこそ勝手だ。

ガツンと言ってやれば、かぁ……。




















次の日の放課後

地下へ続く階段を下りて。見慣れた灰色の扉を見上げる。
にはやめた方がいいって言われたけど。
でも、ただ言って逃げるだけだからって。
「あ。携帯忘れた」
学校の屋上へ続く階段、溜まり場になってる所を思い出す。
「………忘れちゃった」
でもまぁ必要ないかと、二ヶ月前には毎日のように通ってたクラブのドアを、

開けた。

 

 

 

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02/12/05