| メイキングライフル (4) |
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やはり高級車でご登場。素敵な黒塗りのお車で登場は宜しいのですが、まったく別の世界なんじゃないでしょうか。今日は運転手の人はいなくて、篠宮さんが運転して、あたしは助手席に座ってたりします。 「あのー‥」 「ん?」 「ど、どこ行くんですか?」 「ご飯、食べるだろ?」 「え、あー‥、はぁ」 騙されている気がするのはあたしの勘違いですよね。 ………てゆーかそもそも何に騙されろと。 「美味しい?」 「お、美味しい……です」 いえ。ゴメンなさい。正直言って味なんてサッパリ。こんな物、食べたことない。目の前に出された食事は、ナントカのテリーヌとか。目を瞠るほどのお食事ばかり。 本格的なフランス料理?イタリアン?………それすらわかんないアタシがこんな高級なとこに来てもいいのですか。 篠宮さんは話題が豊富です。 しかもわけわかんない政治とか情勢とかの話じゃなくて、あたしにもわかるような話をしてくれる。それも、今時の女子高生のアホみたいな話じゃなくて。 なんだろう、とにかく飽きない。 いっぱい話をして、食事が終わる頃には、とてもリラックスさせて頂きました。 「デザート食べる?」 「あ、いえ、もう」 お腹いっぱいですから。そう言って苦笑うあたしに笑みを向ける。 「そう。………で」 例の話だけどと、切り出されたのは例の話。 「考えてくれた?」 「………えーと………」 困った顔でいるあたしに篠宮さんは言う。気楽に考えてごらん、なんて。 「今日みたいに食事して話したりするだけだよ」 「はぁ」 「必要だったらお小遣いもあげるしね」 ただし、最低限だけど。そうじゃないとこの先君自身が困るから。篠宮さんが言うと、あたし叱られてるような気がする。 別にあたしはお金なんか必要ないし。必要になったら自分でバイトして貯めるもの。親からちょっとした普通のお小遣いもあるしさ。 「………でも」 どうして、 「どうして、あたしなんかと?」 篠宮さんだったら、 「もっと大人の女の人と楽しめるんじゃないですか?」 「………若い子と居ると若返った気がするからね」 それが真意なのか、あたしにはわからなかったけど。 変なの、と思ったのは確かだった。 「えと、ご馳走様でした」 「こっちこそ。楽しかったよ」 家の前まで送ってくれた篠宮さんは、わざわざ助手席のドアを開けてくれた。 「じゃ、また連絡するから」 「………はい」 確かに、今日はあたしも楽しかったのだけど。 「あの……」 「ん?」 (この世界は、あたしの世界じゃないような気がする。) 「やっぱり、連絡しないで下さい」 「え?」 「あたしにはこういう贅沢な世界、向いてないと思って」 「……………」 「お小遣いとかも必要ないし」 「そう?」 「困らない程度にはバイトしてお金、貯めることできますから」 「………そうか」 いきなり、篠宮さんは笑った。思っていたのと大分違った子だと。 「な、何……」 「いや、悪い悪い」 「はっ?」 「お前がそんなふうに考える女だとは思わなくて」 「そんなふうにって……」 「あー‥、そうか。お前みたいな子もちゃんといるんだよな」 何か違う。今まで見ていた篠宮さんの顔とは違う。 「気に入った。」 「………はぁ?」 「また連絡するから」 有無を言わせず車に乗り込み、篠宮さんは帰っていった。 あれから一ヶ月、篠宮浩太さんと『お友だち』になりました。 「あ、携帯ない」 「あぁ?」 「鳴らしてプリーズ」 「ちゃんと管理しろよ」 最初のイメージとは全然違う人だなぁと。 〜♪ 「あった」 「……篠宮浩太……」 「何?」 「いや、別に?」 表示された名前を見て笑った。 「字、違う?」 「いや?」 「………何なのさ」 最初のイメージ。 ダンディなお兄さん。決してオヤジには思えなかったから。でも32歳なんだよな。うちの学校にいる32歳の物理教師とは大分違う。車だって凄いし、スーツもブランド物らしいし。紳士的青年。 だけど何だろう。今、目の前にいるこの人はちょっと違うんだ。 相変わらず、凄い車とブランドスーツは変わらない。変わったのは自分に対する態度。あの夜以降、エスコートしてくれる紳士はがらっと顔を変えた。まるで兄貴か父親、男友だちみたいになった。 しかしいまだに、この人の正体は知りません。 「シノミー」 「………ここで降ろすぞ」 「スンマソン」 篠宮だからシノミーって、結構可愛いんじゃありませんこと?速攻却下かい。 「篠宮さん、あたしといて楽しい?」 とか質問。だって変じゃん。篠宮さんならもっと大人の女と遊べるわけでしょ?お金もあるみたいだし。 「あー‥普通」 普通って。 「ふーん」 ま、いいけどね。別に。 「」 「ハイ?」 「お前は?」 「あたし?」 「オレといてどーよ」 どーよって。んー‥。 「普通」 「ははっ。そうか」 てゆーかさ、 「何で篠宮さんあたしに手出さないの?」 「………は?」 「いやー、こんなに可愛い女子高生にさ」 「出してほしいのか?」 「い、いえいえ。そうではないです」 う。何かマズイ空気になってる。 「や、今のナシ。ナシの方向で」 そのままその話は終わって、家まで送っててもらった。 「毎度どーもありがとさんです」 「おう」 「えーと」 「またな。腹出して寝るなよ」 「寝ません」 「はははっ。……おやすみ」 普段ならそのまま運転席に戻るのに、 ……………、 「おやすみ」 「あ、はい……」 低いエンジン音を立てて、車は行った。 ねぇ、今。ただ触れただけだけど。 何で、何で? ………久しぶりだ。触れるだけのキスなんて。
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