| メイキングライフル (3) |
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風呂上りに電話越しに聞いた声は。 〜♪ ………お風呂から出たばっかで、本日、この人から2度目の着信。 【篠宮浩太】 「かかってきちゃったし……」 出ないわけにはいかない、だろう。今朝のは無視したしなぁ。 ピッ‥ 「………はい」 『避けてるね』 一発ガツンかよ。 「………いいえ」 『今朝出なかったのは?』 「………えーと」 『授業中だから出れなかった?』 「あ、そう。そうです」 『わかりやすい嘘をつくね、君は』 「…………ははっ」 何だかなーこの人、声が低い。すっごくエロッチィ声なんだけど。どうしよう。 『土曜、暇?』 「え、何で」 『昨日の返事聞きたいと思ってね』 「えー…」 『迷ってるってことは期待してもいいわけだ』 「ッ、えっ、そうじゃなくて。あの、……」 つき合うって言われても、何するんですか?そう聞けば篠宮サンは返す。 『一緒にご飯食べたり話したり』 「はぁ………」 『君が望まない限り変なことはしないと思うよ』 「……の、望っ、へ、んなコト?」 『冗談だよ』 低い声で笑った。何かバカにされてる気がするんですが。 ………首の後ろがザワザワする。 「あの、土曜は〜‥」 『用事でもある?』 「えっとー‥」 『あぁ。そうか。オレを避けてるもんね』 「さ、避けてないっすよ」 『じゃあいいんじゃない?』 そのまま何だか約束してしまったのです。土曜日、昨日の駅に六時。 「………流されてるなー、あたし」 ベッドに携帯を投げつけて。 あー‥、何かテレビ見よ。お腹も空いたし。……でも作るの面倒臭い。 実はあたし一人暮らし体験中なわけで。正確に言うと期間限定一人暮らし。パパさんとママさんが仕事の出張に出てるため、再来月まで一人さ。 「………土曜日のー、ろくじぃ」 何かあれね。篠宮さん、32歳って言ってたよね。あたしが生まれたときは15歳か。ある意味父親になれないでもない年齢じゃないか。やっぱりこれはエンコーに含まれるのでしょう。そしてあの人は必要だといえば金はくれそうだ。 ………何やってんだか、あたし。 もう未練なんてものは存在すらしない。 こんなに性格の悪いやつだとは思わなかったよ、松田友樹。 「………別の場所でイチャつけってカンジ」 「んー?」 「何でもなーい」 が雑誌を見ながら空返事をしたけれど。本当に何でもないことなのよ。 えぇ、確かにここは君のクラスでもありますよ?でもさ、あたしもいるんだってこと忘れてるんじゃない?松田くん。 好奇の目がコッチを見るたび、睨み返す自分が悲しくなる。 松田が彼女とイチャつくのを止める権利なんてない。むしろ勝手にやってくれって。そうでしょう?でもね、わかります?一ヶ月前はアナタとワタシがそんな関係だったわけですよ。人目もはばからず、教室でイチャついてみたり。 だったらそれを目の当たりにしてるクラスメイトたちは今思うわけでしょ? 『大丈夫なのかよ、』 くらいは。 だから好奇の目がいっぱいあたしに集まってくる。いい加減ムカツク。 「………購買行ってこよ」 「あー!んじゃイッチゴちゃん買ってきて〜」 「ポッキ?」 「ポ−ッキーィ!!」 「あいよ」 こうなったらパシリでも何でもしてやろうじゃないか。 教室を出て行く途中、ムカツク笑いを浮かべた松田と目が合った。 正直言って、マジであんた性格悪いよ。 「ちゃん♪」 軽快なリズムを踏みながら、話しかけてきたのは先輩。いや、元先輩。だってあたしは三年生で、この方もタメ。早い話が彼は留年生。 「並木さーん」 こんちわーと頭を下げる。この人、オットコマエなのよ。顔が。 「オヒサシブリ。食う?」 「食います」 目の前に団子が差し出された。購買で売ってるみたらし団子。 「あんこがよかったんだけどなぁ」 「あんこっすかー?あたしはみたらしの方が」 「邪道だな、」 「とか言いつつ買ってるのは自分でしょう」 「………は?」 「教室」 先輩はにお熱です。今時お熱って言い方ないけど。一緒に卒業したくて、わざと留年したって噂も。でもこの人、本気で頭悪いからね。 「なーんだよ。連れて来いや〜」 「イヤですよー。あたしパシリですもん」 「の?」 「イェス」 「……何買うの?」 「イチゴポッキー」 「オレが買ったる」 「………と、エビ煎餅とウーロンふたつ」 「嘘つけ」 「マジで」 とりあえずそれらの品々を買ってくれた後、先輩は言った。オレが買ったってさりげなく言え!って。そんなことだからも振り向かないんですよ、バカ。 教室に帰る途中、二階の渡り廊下に張ってあるカレンダーを。 全く趣味の悪いカレンダー。青少年ナンタラっていう阿呆みたいなカレンダー。 見た。 今日は木曜日だから。 ………あと二回寝たら、篠宮さんと会うんだなー。
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