ビギナーズフェリスラック

 

 

お前は仕込みか、クソガキ。

彼女じゃない。まだ、彼女じゃない。
そんな人と今日はデート。友だちという関係の中のデート。
最後の締めは観覧車。

で、

「ねぇねぇねぇ」
並んでる私たちの後ろには一組の家族連れ。お父さんとお母さん、子どもが二人。
「どうしたの?」
「かんらんしゃね、かんらんしゃね」
「観覧車?今から乗るじゃない」
「いちばん上についてチューすると幸せになれるんだって」
「……あなたねぇ‥」
「あっ?オ、オレが教えたとでも思ってんのか?」
「他に誰が教えるのよ」
「おかーさんとおとーさんもすれば?」

聞こえるでしょ。聞こえちゃうでしょ!
あ、絶対聞こえてる。苦笑いしてる‥!
すっごい、何か、……気まずい。



さん」
「えっ、」
「オレたちだって。次」
「あ、あー、うん。はいはい」
岡田ではなく職員のおじさんに手を取られて乗り込んだ。緑色に白抜きで【2】と書かれたワゴン。乗り込むと同時、少しだけ揺れを感じる。思わず、おわっと声を漏らすと、それを聞いた岡田は笑みを漏らした。

塔子に頼って岡田と話ができるようになったのは二ヶ月前。携帯番号とアドレスを交換できたのはその一ヶ月前。そのころから学校で会ったら少しだけ話せるようになって。えーと、今に至ります。(その一ヶ月間のことは割愛)
二人で遊びに行こうと言ってくれたのは岡田。それを促したのはどうやら安仁屋。そして安仁屋の後ろで糸引いたのは塔子。『あー‥岡田君ともっと仲良くなりたいなー』って塔子に言ったのは何を隠そうさんです。

そんなことわかってるは本日のデート、少し恐縮。本来の明るく元気なさんではなく、内気な少女。男と二人でどっか遊びに行くなんていつ以来だろうと考える。考えた結果、そんなの一回もないかもしれないという結論に至った。そう考えると余計に、この不自然な状況にため息も漏れてくる。

メールしてて嫌だと思ったら遊びに誘うわけないでしょ?
メル友ってわけじゃないし、学校でも喋ってんだからさー。
そんな沈むことないじゃん、あっちだって絶対気ィあるって。
あんたも塔子も、結構贅沢な悩み抱えてんのよねぇ。

友だちに言われた言葉を思い出してみた。バカヤロー、いつだって恋愛に関しては悩んでばっかが女でしょう。彼氏いなくても悩むし、好きな人いなくても悩むし。好きな人できても悩むし、彼氏いても悩むんだからさ。
『恋愛』とかって言葉は人を悩ませる。それについて何も考えなきゃいいとか思うけどそうもいかない。友だちと楽しく話してるときも、家族と普通の話をしてるときも。ハッと気づくと考えてしまってることがある。
まぁそんな前置きみたいなこと考えてても、結局は自分の恋愛へと向かうのよ。

岡田君は、私と遊んでて楽しいのかな。
岡田君、少しでも私に好意持ってくれてるのかな。



さん」
「えっ」
「さっきから考え事」
「あ、あー、あはは‥」
「眉間に皺できてたよ」
「嘘っ、マジで?」
「マジで」

あなたのことを考えすぎてたからとは言えまい。

「あ」
「ん?」
「さっき、」
「?」
「後ろの子が」

うわっ!やっぱ聞いてた!

「あ、あー‥、言ってたねぇ、何か」
「どこの遊園地でもあるよな、あーいうの」
「ねー。一緒に行ったら別れるとかね」
後ろのワゴンに目を向ける。自分たちよりのワゴンより少し下に見える、あの親子連れ。
まだまだ子どもにはわかんないんだ。しかもあの子はあたしの気持ちなんて知らないから。ってゆーかあたしのことも知らない、まさに他人なわけだし。だから別に責める気とかないけど、

フンッ、と肩を活からせて視線を岡田に、戻す。


「っ、」



は?



「岡、」
さん」
「な、なに、」
「一番上」

時計で言うと、長い針が「12」から「1」へ。
掠められるだけの行為の後、岡田は前のめりのまま囁く。

さん、」

不安、取り除けた?

 

 


友だちの恋愛をネタにしました。(しね)
04/11/27  ×