酔い×宵×好い

 

 

人ん家でこんなに騒いでいいのだろうか。
海南大付属高校バスケットボール部の面々、反省会と称し飲み会中。会場はのクラスメート、清田信長の家。親戚の法事だか何だかで両親は不在らしい。もちろん、マネージャの彼女もここにいるわけだけど。

「ホラッ!マネージャ!飲みが足んねぇぞーっ!」
「ギャッハッハッハ!そりゃ入れすぎっス!武藤さんっ!」
コップから零れるお酒を見て、信長が一人で爆笑。酔っぱらいすぎだっての。がボソッと呟くも、盛り上がっている信長は窓を開けて急に大声で叫びだした。

「天下取っちゃるーっっ!」

…本物のバカだ。

部員はみんな笑ってる。あの神までも、相当酔いが回ってるらしい。
キャプテンの牧紳一・自称18歳は苦笑い。

「あ、氷がねぇ」
誰かの声に反応しても声を上げる。
「私買って来ますよー」
何てゆうか、この熱い空間からチョット抜け出したい気分だったから。するとキャプテン牧がお金をくれた。
「悪いな、
「いいよ。うちの親戚が集まる時と変わらないじゃん。酔っぱらいばっか」
上記の会話より推測されること、さて何でしょう。
実は二人はいとこ。お正月とか結婚式とかで親戚が集まる時もこんな感じ。
「そうか?」
「変わらないでしょ」
「なーにお金渡してるんですかぁ!」
後ろから牧に抱きついたのはベロベロ状態の信長。
「またまた!牧さんったらエンコーしようとしてるオヤジみたいに見えま‥っっ」
最後まで言い終わらないうちに信長は睨まれる。まさにあれ、蛇に睨まれた蛙。
「バカだ‥」
がボソッと呟くと、何やら助けを求めるような目で見てくる。

そんなの知らないわよ。

「…清田」
ため息をついて信長を引き離す牧。
「酔いすぎだ。と一緒に氷買って来い」
「こ、氷っすか?」
「いいよー。一人で行って来るから」
「いいから連れてけ。荷物くらいは持てるだろ。少しは酔いを覚ませ」
体よく酔っ払いを追い払うと共に、実は押し付ける気らしい。はちきしょうと肩を落とすと、立ち上がって玄関へ向かった。

「あ、紳ちゃーん、おつりもらってもいい?」










「ぐお、重っ」
氷を持った信長がフラフラ歩きながら言う。酔ってるし、転んで氷散らかしたら大変だと思い、が持とうかと言ったが聞かなかった。牧さんに言われたから俺が持つ!と何やらハリキッていた。
「あれ?ちょ‥ノブ、どこ行くの?」
「月がとっても丸いからぁ〜遠まわりして帰ろぉぉ〜」
「はぁ?ちょっと、」
歌いながら酔っ払いの渦巻く家とは逆の方向に歩いていく。本当に酔いすぎだって、こいつ。はゆっくりと信長の後を追った。


小さな公園、信長はブランコに座って笑い出す。何だか楽しそうに。
「ねぇ、ノブ。帰ろうよ。氷待ってるよ?」
「まぁまぁ。少しくらい大丈夫だよ。ホラ」
氷の入った袋から桃色の缶を取ってに投げた。
「うわっ、‥な、どしたの?買ったの?」
「おつりで」
「紳ちゃんの?うわ、私がもらうハズだったんですけど」
くそーと呟きながら缶を開ける。
「お前牧さんと仲良いよな。紳ちゃんとか呼んでるし」
「あぁ。だってイトコだもん」
「へぃ?」

何よ、『へぃ』って。

「だから、イトコ」
「イトコ…」
読み取れない、ポカンとした顔でを見つめた。
「な、なんだ。俺はてっきり…」
「てっきり?」
「つき合ってんのかと思って」
「はぁぁ?バッカじゃない?紳ちゃんにはさんがいるでしょ?」
「ふ、二股かなって」
「アホじゃん」
本当に猿並頭脳、湘北の10番が言うとおり。そう思いながら持っていた缶を口につけてゴクゴクと飲んだ。

「──‥げほっっ」

缶を離して咳き込む。

「なに‥コレ、お酒?ちょっと、ノブっ」
「だって全然飲んでねぇんだもん」
「それならそうって言ってよ。一気で飲もうとしちゃったじゃん」
「缶見りゃわかるって」
「あー‥もう。……でも美味しい」
「マジで?」
「うん。ってゆーか帰ろうよ、本当に」
「そーだな。氷溶けるし‥」

ブランコから降りると空を見上げた。

「満月〜‥」
「は?」
「それウマイ?」
「あぁ、うん。美味しいよ。甘いし」
「甘いんだ。俺にもちょーだい」
「いいよ。は──‥」

渡そうとした手を掴んだ信長は、味見でもするかのようにの唇を舐める。

そして自分の唇を重ねた。





唇を離した信長は放心するに一言。

「あ、甘い…」
「‥──?」


な、何?甘い?何が?何言ってんの?


「あ、俺さ、のコト好きなんだよ」

氷の入った袋を持って歩き出した。





少し歩いたトコロで振り返り、私を見る。

「順番間違えた。告ってからキスだよな」
「………はぁ?」
「だから、順番」
「こ、告ってOKもらってからキスでしょ?」
「あー‥そっか」

順番間違えたドコロじゃないわよ。バラバラじゃない。

「んじゃさ、ほら、返事‥」
「ノブ、あんたって本当に脳みそ猿並」
「はぁ?」
「こんなトコでブラブラしてたら氷溶けるでしょっ」

の手が、信長の手に重なった。
それが今の彼女にできる、精一杯の返事。

 

 


働き者のマネージャーと一年生。
04/05/08  ×