注意書的スターター

 

 

−−− 危険ですので、手など入れないで下さい。

暖かいのか寒いのか。そんなこともわからない、季節の変わり目なんですけど。マネージャの仕事は大して変わらない。

「………危険です、か」
グオングオンと音を立てて、旧式の洗濯機は回る。部員の洗濯物がきれいになってゆく瞬間。わたしはそこに立ち会うのです。
運動部、他、共同の洗濯機。今日は他の部活があまりないみたいなので、占領。

遠目、グラウンド。一番大きな声を出しているのは若菜。フラフラのヘナチョコは濱中。そんな対照的な二人に目を向けてから、洗濯機へと視線を戻した。

「こーゆーこと書いてあると、手ェ入れたくなるなー‥」
小さく、独り言を呟いて。右手を中に入れる。別に、どってことない。グルグル回る洗濯物に、巻き込まれる感じ。手が冷たい。
「………あぁ、脱水中だと危険なのか」
そんな考えを。ボーっとしていると、後ろから。

ちゃん」
「へ?」
「洗濯物、まだ入る?」
「あー、ギリ。ハリアーップ!」

御子柴キャプテン。

「ギリっ?」
「今回したばっか。早く早く!」
「マジで?」
急かすように笑うと。鞄の中から出された、アンダーシャツ。
「ほいほい」
「あー、あと、」
焦ってるキャプテンが異様に可愛かったりして。
「今着てるの、ダメ?」
「はっ?着てるの?Tシャツ?」
「そうっ」
「ダッシュ!」
ダッシュ!とかなんとか言った。そしたら、これもってて。学ランの上を手渡され。小さくて大きなキャプテンは、目の前で上半身裸に。


………う。


「セーフ」
笑う顔が眩しいんじゃありません?犯罪だぞ、このやろー。
「ありがと」
促され、学ランをお返し致す。
「素肌に学ラン。エロチック」
「何それ」
「湯舟が持ってそうなエロビな感じで」
「やめて、マジ」
「いや、放課後の男たちか」
「は?」
「獣の中の……」
「………ちゃん」
「いやね。イッツジョーク」

そんなハクめの脳所持者。







−−− 危険ですので、手など入れないで下さい。







………アホだ、あたし。

「え、ちょ、ちゃ、」
「あ、あー‥、あったかい」
さすが筋肉、と。自分、笑っているけれど。結構心臓の音はでっかい。


手が、腕が。御子柴キャプの学ランの中に。
思わず抱きつく格好、って。傍から見てどーなの。

痴女まがい。


グオングオン、音は鳴んないけど。ドクドク、心臓の音はする。
グルグル巻き込まれないけど。ドキドキ巻き込まれる感じだ。



パッと離れて、また笑ってた。
「ゴメン」
ごめん。痴女行為のあたしを許して。
「素敵な肉体に、引き寄せられたわ」
わけわかんない言い訳。いやでも、その通りなのだよ。
「え、えっと、」
「キャプ。着替えて練習行かないと」
「へ、あ、うん」
急かして、見送ってみる。部室に入ってく、その背中を見つめ続けて。










あぁ、顔が熱いことに今更気づいた。

赤いかな。………赤いよな。
バリバリ気づかれたよな。

うわー。

本当に危険だった。

わかってたのに、手を突っ込むとは。


まぁいっか。
後のことは、洗濯物干しながら考えよう。

 

 


マネージャーのお仕事。洗濯。
03/04/12  ×