ラブランドティール

 

 

おまじないって信じますか?

、消しゴム貸して」
「無理」
「はっ?」
何でよと友人は言い、消しゴムに手を伸ばす。
「触るな!無理って言ってるじゃん、ばかっ」
その手を叩き、キッと目を向けた。
「何なに〜?もう。いやーな感じ」
「こっちの消しゴムならいいよ」
「うわっ、何?小っちゃ!」
使用を拒否された買ったばかりの消しゴムとは違い。渡された消しゴムは大分小さく、汚くて古い。
「消したら汚れそう」
「失礼だね。じゃあ使うな」
「使いません。……塔子ぉ〜」
斜め前の席の塔子に、消しゴム貸して、と。

「……許せ」
小さく呟いて、最近買ったばかりの消しゴムをジーッと見つめる。


事の起こりはこないだの日曜日。親戚の子を連れて、買い物へ。
姉ちゃん、知ってる?』
消しゴムを買ったあたしは、おまじないを聞いた。
『新しい消しゴムに好きな人の名前を緑で書いて使い切ると』
懐かしいおまじない。
『両想いになれるんだって』
そうそう。で、使い切るまで、誰にも触らせたらダメなのよね。

………何となく。神頼みとかじゃなくて。
そう、ただ、懐かしくなっただけ。そんなんもあったなぁって。
だから、書いてみた、だけ。


「ありがと、塔子。が貸してくんないんだもん」
「しょーがないじゃん。イヤなんだもん」
「うっわー、聞いた?この言い方」
「まぁまぁまぁ。二人とも」
そんな会話をしてる時、一限開始五分前のチャイムが鳴って、それと共に練習の終わった野球部が入ってっきた。

の隣の席は御子柴、キャプテン。

「おはよ」
「うはぉ。練習長いねー」
「や、結構前に終わってたんだけど」
「あ、そっか。塔子来てたしね」










「………
「んー?」
御子柴の、こそこそ囁く声に反応。
「ゴメン、消しゴム貸して」

消しゴム。

「け、消しゴム?」
「うん」
「………えっと」
小さい汚い消しゴムの出すのは憚られた。
「消しゴム……」

よく考えたら。大丈夫な気がしたから。

「ハイ」
「ありがと」
普通に貸して。逆側にいた友だちが、すっごく疎ましい目で見てたけど。後でグチグチ言われて。弁解の変わりに、ジュースでもおごらされるんだろーな。










「御子柴」
「んー?」
お昼のパンを頬張りながら野球雑誌を読む御子柴のもとに、関川。
「コレ、お前のだろ?」
「ん?」
顔を上げた御子柴。関川の持っていたのは消しゴム。もちろん、今日消しゴムを忘れた御子柴のものではない。
「は?違うよ?」
「あ?」
「オレ今日消しゴム忘れた」
「だってお前の名前書いてあんぜ?」
「………はい?」
手に取ってよく見れば。それは数時間前、自分が隣の席の少女に借りたもので。ケースに入っているとわからないとこに自分の名前が。

緑のペンでしっかりと『御子柴透』。
いや、『透』じゃなくて『徹』なんだけど。

「お前のだろ?」
「………あー‥、そう、ありがと」
「変なやつ」


関川と入れ替わりに、戻ってきたのは
友人と2人、昼食を持ってのお戻り。


「ってゆーかパックジュースだけですまされると思うなよ」
「はぁぁ?ってゆーかパックジュースかうのがおかしいもん、もう」
自分で消しゴム忘れたくせに。言って、はカフェオレを。

「あ、
「ん?何?」
「これ、落ちてたって」
「あ、マジ?ありがとう」
「あー!消しゴムー!」
ギッと睨む友人に苦笑い。
「聞いてよ〜、御子柴君!このこあたしには消しゴム貸さないくせにさ〜」
「あー、もう!いいじゃん、ウルサイ」
「よくないし。友情の危機じゃん」
「おごったじゃん、ジュース!」
「それだけじゃすまされないって言ってんじゃんか」
「もー!ムカつくー!!」
「お、落ち着いて、二人とも」
「何かさ、消しゴム触らせないってあれみたい」
「へ?」
「あれ?」
「知らない?好きな人の名前書くヤツ」
すっごい昔に流行ったおまじないなんだけどさ、と笑う。
「緑のペンで書いて、誰にも触らせないで使い切んの」
その言葉に、一瞬固まると御子柴。
「あ、あったねー、そんなの」
「あ、あるんだ?そんなの」
まぁいいや、飯にしましょうと言われ。もカタカタと机移動。

「御子柴君」
「ん?」
「消しゴム、ありがと」
「あー、うん。………あのさ」
「何?」
「オレ、透明の透じゃなくて徹夜の徹なんだよね」
「何が?」
「名前」
「………?」


徹夜の徹?

………御子柴、トオル?


「!!!!」
「うん。それだけ」
「あ、みみ、見た?」
「………早く使い切ってな、消しゴム」

完璧見られたと。頭の中で繰り返しながら。
最後の一言の意味を、暫くの間理解できないでいた。

『早く使い切ってな』

 

 


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02/12/26  ×