右と左に於ける、ストーリーテイラー

 

 

今宵君に、何色の話をして差し上げようか。


私は悪女なのだそうだ。そこまでいかなくても、恋敵、あるいは悪友。
いや、やはり悪女だ。

「なーにが、……ゴメン、よ」
今日気がついた。私の役割がそれだということに。
演劇でいうところの端役、脇役、悪役。
だって好きだった。好きだったんだから仕方ないじゃない。貴女に嘘をついても、彼が欲しかった。貴方に嘘をついても、彼女に近づかないでほしかった。
いい女を演じて。だけど裏工作なんかして。彼女を陥れたり、彼を騙したり。
だって、彼が欲しかったんだもの。
でも、それでも互いに近づいてしまう二人を、最後には見ているしかなかった。

「あの、」
「はい?」
「マンハッタン」
「お客様、もう四杯めに、」
「お客様よ」
「………かしこまりました」


彼から出た謝罪の言葉に、顔を背けるしかなかった。散々期待させておいて、とか。あの子より私の方があなたを好きなのよ、とか。いろんなこと、言えたのに。それを言えなかったのは、言おうとしなかったのは、プライド。
彼女なら、プライドなんてクソ食らえだったんでしょうね。
それほど彼が好きだったんだから。

でも、

でもね、

私だって彼が好きだったの。

それは本当。

あなたのことが、好きだったから。





女性のもとに、細いカクテルグラスが渡された。
注がれてるのは琥珀色の液体。
浅い底には真っ赤なチェリーが沈んでいる。





ねぇ、だって、ねぇ?


「好きだった、から……」


小さな声。同時に、店のドアの開く音が聞こえた。
とっさに彼女は顔を上げる。涙に濡れた目を瞬かせて。





入って来たのは?

一人の男

二人の男

 

 

 

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