late choco late

 

 

本日のラッキーアイテムは、
『ラッキーアイテムはチョコレートのお菓子!』
あひるだかラクダだかわからない動物のCGマスコットがテレビの中で発言。
「チョコ菓子‥」
のそりと起き上がり、冷蔵庫へ足を向ける。冷蔵庫の前で座り込むと冷凍庫を開けた。先日買った冷凍食品の山、暑い日には欠かせない保冷剤。
チョコ菓子はどこにも見当たらない。

「ない」

ない。

たまたま見たテレビ番組の三分間星座占いコーナー。自分の星座に書いてあったプチ情報はラッキーアイテム。しかしその情報も、どーでもいいものと化した。

「あー‥っ‥ちぃー‥」
冷凍庫を閉めた途端、熱気の所為で汗を感じる。は首を振りテレビ画面の端に表示される時間を見た。
「まだ早いし‥」
表示時間は午前九時ピッタリ。期末試験終了のため、本日から試験休みに入る。まぁ、入ろうが入るまいが午前九時はには『早朝』部類だが。
這うように布団へ戻ると枕元の携帯を手に取った。瞬間、普段通りの待ち受けがメール受信画面に変わる。お、フィーリング、などと零し、一度背を伸ばして受信終了を待った。
「こんな早い時間に誰だよ」
今時にしては珍しい、固定着信音、ピロリロリ〜‥♪

『FROM:コッシー』

「んあっ」
クラスメート兼、………な関係の越野くん。

『9時すぎにそっち行く』

「九時すぎ?」
いやいやいやいや!もうすぎてるし!何なんだその中途半端な時間報告は!
少なくとも越野の家からここまで20分はかかる。コロコロでも‥


ピンポーン


うっそーん!


「ちょ、ま、こ、越野っ?」
「おー。起きてたかー?」
「は、はい」
「早く開けろよ」
「ちょっと待て、マジで待って」
「汚くても今更気になんねーよ」
「ら、裸体!裸族っ!」
「………原始人……」
熱帯夜に一番邪魔なものは布でしょ?そんなこと言う暇もなく、近場のキャミを着込む。下はジャージでいいだろうか。
ドアを開けると、温い空気と共に爽やか男。

「うわっ、何か暑い、この部屋」
「エアコン壊れた」
「来んじゃなかった‥」
「いらっしゃーい、我が城へ。てゆーか早くない?」
「学校からチョク」
「一人暮らしだからっていつでも準備オッケーじゃねぇのよ?」
「あぁ、じゃあ帰る」
「うそ!うそうそうそ!」
学校にいたのかと零し、室内へ案内。シャカシャカ鳴る越野の手元に注目。
「お土産?」
「土産」
「ステキ。……あ、」
「あ?」
「こ、コレは‥!」

ムースポッキーではないか。

「越野っち!」
「何?」
「星座占い見た?」
嫌そうな顔でテレビに目を向けた。
「愛だ」
「たまたま‥。……美味そうだった、し」
「愛だよね」
縋る様な目のを、更に嫌そうな顔で一瞥。そんな越野の手を握る。
「何、」
「心の準備はオッケーよ」
「お前準備オッケーじゃねぇっつっただろ」
袋から取り出したポッキーを投げつけ自分は布団に座り込む。眉毛も描いていない私を気にもしない男。そんなんでいいのかと思ったけど、きっと一時間後には忘れてる。

「麦茶でいい?」
「おう」
「学校何?部活?」
「仙道連れてった。補習で」
「えっ」
「あいつ試験イッコ遅刻して受けてねーから」
「ビックリした。頭いいのに補習とかゆーから」
「まぁあいつなら平気だろ」
「仙道くんで思い出したけどさ、」
何かコッシー仙道くんに似てきたね、冷えた麦茶を渡しながら言った。にしたら何でもないが、越野にしたら死活問題。
「あァァ?ドコが?」
「九時すぎってゆーメールを九時すぎに送るとこ」
「……そりゃ、ほら、サプライズ…」
「うーん、似てきた似てきた」
やたらガッカリしてる。そんなに嫌なのかと思うけど、取り消しはしない。
今日部活ある?思い出したように聞くと首を横に。小さく呟きながら、明日はあるけど、と、言いながらムースポッキーの箱を開けた。
「ナイス茂一」
「呼び捨てんな」
「モイチセンセイ」

一本加えたポッキーを高速で噛み食む。
リスみたいに。啄木鳥のリズム。

「あ、いいこと思いついた」
彼女にとってのいいことが、越野にとってのいいこと、だとは限らない。
「ポッキーゲームしよう」
「却下」
「何でー!?」
「んなことできっかよ」
「仙道くんはやってくれるのに!」
「嫌だ。‥って何で仙道だよ」
「………うん?」
「うん?じゃなくて」

あぁ、昔の記憶が。
あれはそう、入学したての頃。親友が取り付けた勝手な親睦会(と称する合コン)。仙道彰という狼少年は王様ゲームでポッキーゲームを推奨してた。

「む、昔、」
「昔?」
「仙道くんとかと飲み会して、」
「はぁっ?」
「昔だよ!越野っちとつき合う前!」
「ポッキーゲームしたのかよ」
「いや、みんな酔ってたなぁ」
「……………」

優に三分以上は続く沈黙。


沈黙は越野宏明の武器である。つき合い出して、いや、つき合う前からわかってた。怒ってる時も、ムカついてる時も沈黙の男。
この空気の中じゃ動くにも困難だと思う。

口を閉ざしたまま、越野はの隣に座った。何でしょうかと目で言えば、視線を返される。指先でムースポッキーを摘んだ。

「な、何」
「ポッキーゲーム」
「す、する?」
「したいんだろ?」
おや、越野宏明、あんた、
「目が据わって、」
摘んだポッキーを口に差し込み、目を向ける。片足で胡坐を掻き、もう片方の足は膝を立てた体勢。そこに入れと!?
「いや、ちょ、」
「とける」
「えぇっ」
「早く」
「そこまで仙道くんに似る必要ないんじゃ‥」
「こんなこともしたのかよ」
「そうじゃなくて、」
そんなことをするはずないでしょうが。しかもポッキーゲームしたのあたしじゃなくてだし。ただ飲み会の時、酔ってるみんなを見ていただけさ。あたしはそんなふしだらなことしないよ!(勝負運強いし!)

「ひ、ひろあっくー‥ん、」
有無を言わさないその視線が、を捉えた。
融けた柔らかなチョコが唇につく。先に歯を立てて割ったのは、宏明だとわかった。確かにチョコ菓子はラッキーアイテムだ。こんな積極的な宏明を見たのは、久しぶり。ありがとう、三分間の占いコーナー、早起きのあたし。



なぁ、
オレとお前の誕生日が10日違いだって、知ってるはずだよな?

 

 


ポッキーゲームイェー。
04/07/26  ×