ミッションナンバーゼロ

 

 

ボンドガールとお呼び。、スパイと化す。
スパイと化した私は繰り返し繰り返す。何をって?そりゃあスパイ活動を。
あれ、ボンドガールは別にスパイじゃなかったっけ?

「さぁな」
オレには答えかねます、何となくバカにしたような口調で返事をした。
が彼にした質問内容はこうだ。『藤真くんの好きなタイプってどんなタイプ?』質問した相手は花形透、藤真くんの親友兼パートナー。
「けち」
「本人に聞いたら?」
「それじゃダメだから花形に聞いてんじゃん」
「あいつのファンから頼まれたと」
「……まーね……」
「いくらもらった」
「う、……もら、もらってない‥」
どんな女だと思われてるのでしょう。
「うー、じゃ、じゃあ花形の好きなタイプは?」
「はぁ?」

私的に、ここが本題です。

「ほらー、花形の好きなタイプー」
「何でオレ?」
「興味、」
「興味?」
「ついで‥」
「ついでね」
新聞部の特権を生かして色んな噂や秘密を探るうちに、私に時々へんてこりんな依頼が舞い込むようになった。気になる彼女の好きな人って誰?もしかしたら彼浮気してるかもしれない。部活サボって何やってるか気になる。
そんなわけのわからない依頼の嵐、そして私は諜報員。

たまには自分のために、それもいいじゃない。

「背は?高い方が好き?小さい子?」
「それ、校内新聞載せんの?」
「載せないよ。興味ついでだってば」
興味ついで。本当は興味津々。去年から興味ありまくり。

大好き、花形。

「ギャル系、癒し系、ヤンキー系」
「藤真は癒し系」
「そんなん聞いてないよ」
「藤真のこと聞きに来たんだろ?」
「そ、そうだった!」
藤真健司よ、お前は癒し系に弱かったのか。それじゃあ無理かもしれないよ、4組のかなこちゃん。あんたどっからどう見てもギャル系じゃん。
あぁ!本当はどうでもいいんだって、こんなこと!
「そ、そっかー、癒し系かー」
「背は小さくて色白、物静かなタイプ」
「ふむふむ」
「我の強くない女。……本人がアレだからな」
「女王気質だもんね」
「男なら誰でも惹かれるようなか弱い癒し系」
「は、花形もっ?」
「オレ?」
「花形もそんなん好き?」
「オレ個人じゃなくて一般論」
一般論じゃなくてお前個人の好みを聞かせろ!
手の中でくるくるとペンが回る。くるくると回りはするが、手元の手帳に書く様子はない。そんなに花形は方眉を上げ、薄く笑った。

「オレは、」
「えっ」
「一般的じゃないってよく言われる」
「いい、一般的じゃないと申しますと?」
「………それなりに」
「それなりって何?」
さんはどうなの?」
「へ?」
「自分の好みのタイプ」
涼しい顔でニッコリ笑いやがって。巧くかわそうとしてるの丸分かりだっての。
「そんなの関係ないんじゃ‥」
「だったらオレのも関係ないだろ?」
「教えてくれたって、」
いいじゃん、と言うと同時に響く聞きなれた鐘の音は予鈴。
「次、3組体育じゃなかった?」
「あっ!」
「早く行ったほうがいいよ?」
「ぐ‥」
時計と手帳を見比べる。本日の収穫は藤真健司についてのことのみ。
(しかも何も書かなかったし!)

悔しそうに足を鳴らした。

何が諜報員だ。一番知りたいことが知れなかった。こんなんじゃボンドガールじゃないじゃん!(だからボンドガールはスパイなのかって話)

「き、貴重な情報ありがとう‥っ!」
悔しそうな呟きと共に背を向ける。背後から、またどーぞと。これまたおちょくったような低い声に、耳を塞ぎたい気持ちいっぱいで、は教室を後にした。










例えばここにも一人。

「好みのタイプ‥」
オレに必要な情報は君の好みのタイプだと、そう言う前に言わせようとして失敗を犯す。そんな男が、笑いながらも浅くため息をついていた。

諜報員になり損ねた、ジェームズ・ボンド。

 

 


ジェームズですか?ジェームスですか?(確かめろよ)
04/07/28  ×