| 空振りストライカー |
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------------------------------ 件名 (No title) From 太陽 ------------------------------ 緊急字体発生!大支給来い! ------------------------------ 誤字溢れる、ショートメール並みの短メ。 バンッと障子を開く。そこには丸まった太陽がいて、急な音に驚いたらしい。 「何?」 「早ェし!」 「大至急って。……支給になってたけど」 頭の中で誤字を変換、指摘。だけどきっと、濱中にはわからないだろう。 風呂上り、あんなメールを頂きました、幼馴染の太陽君から。お向かいさんで昔馴染み、玄関から玄関への距離は5mもないと思われる。は携帯を見せて、誤字二つだから減点だと睨んだ。 「で?何?大至急って」 「えーとな、」 そわそわと目を動かす。は首を傾げ、同時、くんと鼻を動かした。 「あ、お前」 「ん?」 「風呂上り?」 よく見れば、の髪はしっとり濡れている。首にかけたタオルに雫がポツポツと滴っていた。 「そう。あんたのせいで湯冷めバリバリ」 「わ、悪い‥悪い‥」 「何が緊急事態なのか言ってよ」 面倒臭そうに言って腕組みし、再度くんくん鼻を動かす。 「、」 「あー、太陽、あんたさ、」 「オレの恋人になって下さい」 聞こえた言葉に耳を疑り、しかし一呼吸おいて自分の言葉を口にした。 「酔っ払ってるだろ」 先ほどから部屋に充満する匂いは酒の匂い。ここは酒蔵ではなく濱中太陽という男の部屋だ。とゆーことは、匂いの元は部屋主以外にはいないはず。 「………そ、それなりに……」 「そう」 「で、でも今のコク、コック、ハクはな‥!」 コックハクって何だ、このカミカミ大魔王。思ってても言わないのは、相手が酔っ払いだからである。 「本気だ!」 据わった目の酔っ払い。できればこーゆーのは素面の時に頼みたいかもしれない。 「酔っ払い」 「だからっ、」 「どこで飲んだの?」 「ぶし、部室‥」 「あんたバカじゃないの?」 酔っ払いの上にバカだ。それと、もう正常な脳は働いてない。じゃなきゃこんなこと言うはずないから。 だって、 「職員会議で取り上げてもらうよ」 正常に働いてたら、教師(仮)にそんなこと言わないでしょう。 、二子玉川学園の現国教育実習生です。 「だっ、、」 「先生。先生」 「今先生じゃねェだろっ」 「生徒が制服着てるときは先生」 って、大学の講義で言われた気がする、誰にでも似合う、で知られている学ランを横目で見た。 「脱ぎゃいいの?」 「乙女の前で脱いだらはっ倒す」 「言ってること違うじゃんか!」 「じゃんかって言うな。ガキ」 「ガキっつーな!」 「大学生から見た高校生なんぞガキ以外のなんでもないわ」 「なっ‥」 「で?用はそれだけ?」 「〜‥」 情けない。泣きたくなるほど情けない。こいつの何かを乞う目は、反吐が出るほど情けない。昔からそうだ。 「小さい頃からさ、」 「へ?」 「あんたって、あたしやの後ついてさ」 とは、の妹。 「まぁ、一人っ子だからしょうがないと言えばしょうがないのよね」 でも金魚のフンってのは頂けなかった、が言えば、濱中は口の中で金魚のフンという言葉を繰り返す。 「悪戯も面白いことも提案しないし」 「そんなヤツ恋愛対象に入んねーってこと?」 「まぁね」 「回りくでぇ‥」 「ストレートに言って欲しかった?」 「……………」 は水の滴る毛先を摘み上げると、ふっと雫を飛ばした。 「太陽」 少しより目気味な視線は毛先に留まったまま。 「面白いこと言うね」 口元が笑ってる。 「あ?」 「あんたにしちゃ面白い提案だわ」 「な、何が?」 「『恋人になって下さい』」 「面白い提案‥」 「人生初。面白い」 「つーか面白いって、」 指先で弾く。弾かれた毛先、雫はやはり肩のタオルに落ちた。は腰を屈め、その手を濱中の髪に滑らせる。 「、」 「先生」 「って、」 「あたし、実習期間あと二週間切っちゃった」 「は?」 「教育実習生と生徒のそーいう関係って面白いよね」 小さく笑みを見せた後、呟いた。 「いいよ。なってやろうじゃん」 濱中が耳を疑う番。酔いが醒めたかのようにキョトンと目の前の顔を見る。 「自分で告って何なの、その顔」 「は?だっ、‥」 「先生だって言ってるでしょ」 「いや、」 「じゃないと面白くない」 「はっ?」 「早く、先生って呼んで」 近づいた唇に顎を引いた。先生って呼べば、呼んだら、きっと重なる。 セ ン セ イ 呟いた後、軽く重なった唇。 濡れた髪が頬にかかった。 唇を離し、放心状態の濱中に微笑みかける。 「二週間から先は、太陽の頑張り次第だから」 へ? 「教育実習生と生徒以上に面白くてスリルあることみつけてね」 じゃなきゃ元通りだから、教育実習生から出た課題は結構難しい。 幼馴染の延長、未だ放心状態の濱中は、雫の落ちるの鎖骨に目を走らせ、大きく息を吸った。
多少攻めさせてみましたが。
04/07/17 × |