気づいた想いはエトセトラ

 

 

「起きろー、はまにゃか」
「うおっ、ビビッたっ」
気づいたら放課後だった。寝る前の記憶といったら、焼きそばパン食ったことだけ。つーことは、昼から寝てたのか。
「部活行け、部活。ヤンキー先輩に怒られンぞ」
「ヤンキー言うな」
「オーライ。イッツ褒め言葉。あたしにとっては」
「何だそれ」
「いーから部活行けば?マジで」
ホラホラ、と。必要以上に促すもんだから席を立って教室を出た。

ビビッたのはマジです。
長い睫毛が目の前にあったらどーなんだ。そりゃビックリすんだろ。あいつ結構可愛い顔してんだなー、とか。いや、結構っつーか大分っつーか。やたら可愛いっつーか。つーか、何でオレがドギマギしてんだ。別に寝顔を見たわけじゃないっての。

「何だ、コレ」

独り言。










「んぉあ?」
ガヂッと音がする。部室の戸が開かないとはどーゆーことでしょう。
「何で?」
さぁ考えよう、濱中太陽。何で部室が開いていないのか。
ちなみに、グランドからも部活やってんだろーな、的声が聞こえない。
「………あー、」
「げ、マジで部室来ちゃったの?」
「はっ?」
後ろからの声に振り向くと、さっき教室で自分を起こした女。

「濱ちゃん、来週からテストって知ってる?」
「あ?」
「テスト前部活ないの知ってる?」
「は?」
「寝ぼけてる?」
「何言ってんの?」
「おっと質問返しだ」
「待て待て待て。一から話してくれ」
「えー、どーしよー。あったま悪い〜‥」















今日も昨日も、テスト前期間は部活がないってHRで先生が言ってたんだけどね。帰り道、濱中の横を歩きながらは言う。
「マジかよ」
「聞いてろよ」
「プリント配布すりゃあいーじゃんな」
「配布しても読まないでしょ?」
「読むっつーの」
「絶対机ン中にグッチャグチャにして押し込むよね」
「お前オレの性格わかってんねー」
「男子ってみんなそんなイメージ」
うんうんと頷く横顔を拝見。やはり睫毛が長い、この女は。しかも表情クルクル変わりっぱなし。可愛いよなー‥。

あ?………待ってくれ。


「んー?」
「お前、オレに部活行けって」
「アハン?」
「アハンじゃねーだろ」
「だってマジで行くとは思わなかったんだもん」
「んじゃ何で部室来たんだよっ」
「あー‥、アホ、だから?キミが?」
「行くと思ってたんだろ」
「そんなとこ」
何で悪気も無く言うんだ、こいつ。そんなことを、口には出さず思っていたら。急に笑い出しやがった。
「何笑ってんの?」
「濱ちゃんのことアホって言ってんのにさ」
何でそこはツッコまないのよ、と。また笑う。

だーかーらー、

「可愛いっつの」
「は?」
「え?」
「何か言った?痒いとか言わなかった?」
言ってねーし。
「独り言」
「うわ。もう末期だよ」
「あァ?」
つーか言えないっす。君を可愛いと思ったなどと。
今この場で本人目の前にしては言えないでしょう。
「独り言ってヤバイんだよ」
お前が可愛く笑うのが、オレにはヤバかったり。
「頭で考えてたのがポロッとさ。えー、みたいな」
「いや、言葉つながってねーし」
「ニュアンスでわかれっての」
やっぱダメダメだね、濱ちゃん。ちょっと考えてみたんだが、オレのこと『濱ちゃん』って呼ぶの。クラスでこいつだけなんだよな。
「お前、何で濱ちゃんなわけ?」
「ダウンタウン好きやねん」
「いや、不自然だから」
「いーじゃん。濱ちゃん」
「いーけど」
「あたししかそう呼んでないから特別っぽいよねー」


トクベツ?


「は?」
「限定っぽくて」
「限定?」
「限定賞品って惹かれない?」


……期待損。(期待下がり)


「惹かれねー‥」
「うそ?そーゆーのに踊らされてそうなのに」
お菓子業界とかのカモっぽいのにね。そう言ったに、濱中は言う。の中のオレってそんなイメージ?
「ドンピシャ」
「お前ね、オレのことちょっとナメてる」
オレは未来の野球部を背負って立つ男だ。言った側から笑われた。
「あっはっはっは、補欠なのに?」

イテーっつの。

あー‥、でも笑ってる顔は可愛いんだよな。って言ってる場合か。いやーでも、好みだ、ハッキリ言って。ドンピシャだ、コレ。







「好きかもしんね」





………はっ。





「何が?」





ヤベ。





「いや、」
独り言。さっきと同じ返答を。そしたら彼女はふーんとだけ言って話題は移る。










「んじゃね、あたしこっち」
「あ、おう」
「また明日ねー。テス勉しろよー」
「あー、じゃーな」
一人になった帰り道。
気づいてから、想いは募る一方ときたもんだ。たった10分なんですが。


「告白か」

独り言。

「ちっきしょー。可愛いなー‥」

独り言。

「好きです?……言えねー‥」

独り言。

「あっ」
足が止まる。
「さっき告白にもってきゃよかったー‥」

後悔な独り言。

「あー‥、オレってヘタレかー?」

わかってらっしゃる。

「くそー、可愛いー‥」

ヘタレの独り言。
彼女に想いを告げる二ヶ月先までずーっと続くのでした。

 

 


独り言はやばいらしいです。
03/06/08  ×