BOY MEETS GIRL?

 

 

松葉杖の理由は喧嘩。あぁ、半分本当で半分嘘なんだけどな。

「うわ、海老っち」

「何それ、まったケンカー?」
なぜか喋れてしまうようになったのは、先月保健室で仲良くなってしまったからだと記憶してる。目の前の松葉杖を使う男を凝視した。
「骨折でしょ?」
「そう」
「バカだね海老っち」
だから海老っちってよせよ、肩を落として目の前の女を見る。

海老原昌利、只今骨折中。
骨折の理由、表向きはケンカ。ケンカには勝った、相手が三人でも勝てる男、己の力は心得てる。フラついてホームに落ちるなんつーことは、計算できてなかった。

「ケンカ勝ったの?」
「誰に言ってんだよ」
「あーぁ、そうっすか」
いやーね、海老っち恐いなー、なんて。イチゴミルクのパックジュース、中身がなくなってくのが見てて分かる。
嘘じゃない。ケンカってのは嘘じゃない。ホームに落ちたのは黙ってる、それだけだ。
「海老っち」
「だから」
「マースィー?」
「スィー!?」
「まーしー」
昌利だからマーシーってありきたりじゃん、そう言う彼女に、海老原だから海老っちってのもどーだよと言ってやりたい。

「海老原、あんた松葉杖の使い方なってない」
「はぁ?」
「ここを重点にしてさ、もっと端の方握るの」
まるで病院の看護婦のように位置を直す。病院で松葉杖の使い方を、不本意ながら教わったが、その時と同じくらい使い勝手が良くなった。
自分流に使うと使い心地は良いとは言えず、かと言ってまた病院に聞きにいくなんてできるわけなかった今、できるものなら感謝の意を表したい。
「詳しいな」
「使ったことあるから」
「マジで?」
「あ、ケンカじゃないからー。あたしか弱い乙女だし?」
「自分で言う時点で違うって気づいたら?」
「うぜっ。マースィーうぜっ」
あははっと一笑して、昔事故でねー、と。何でもなかった、ただの過去の話なんだと首を縦に振る。
「トラックぶつかってさ」
「いつ」
「中学生の時」
「………あ?トラックっつった?」
「トラック」
しかもぶつかってだ。撥ねられて、とかじゃなく。
「すぼーんって飛んでって、ガコッて」
「ガコ?」
「道路にガコッて」
「………(痛ェ‥)」
痛そうな過去をあっけらかんと話す。海老原は海老原で痛み入る苦笑い。

「だからあたしの方が松葉杖は先輩」
「先輩ね」
「そうだよ。例えりゃ前田さんみたいなもん」
「あァ?一緒にしてんじゃねーよ」
「いや、別モンでいいけど」
何でそんなに怒るかな、この前田シンパ!口を尖らせて、ふーんと下を向く。
拗ねたからだとか、海老原の言葉に傷ついたからとかじゃなく、見ている先は松葉杖。

「だから体重かける場所がー、」
違うんだって、聞いてたの?松葉杖に手を添えて、海老原に肩を貸して。
うんしょと小さく声を零して体密着。
やらた無防備な彼女に、はっきし言ってヤベーんじゃねェかと。
ちょっと胸のうち高鳴る海老原。

おい、ちょっと待て、ヒロトじゃあるまいし何‥、


「マースィー」
「あ、あ?」
「あたしヨゴレで通ってるからさ」
「何が、」
「いや、仲間内でね。ひなのとかにもよく言われるし」
「だから何が」
密着してた体を剥がし、覚えましたか?松葉杖。は先生のように腕を組む。

離された瞬間分かった事実。

「……………」
「生理現象?」
「そんな感じ」
「さ、三本目の足、なんつって」
‥」


笑えない!


「じゃ、教室帰るから」
「あー‥」
「気にしないで」
そんでもってわからないことあったら聞きに来て、先輩に。ヨゴレと自負するわりに、何となく不自然な笑みを浮かべた。わかったと気まずそうに苦笑う海老原。
お互い背を向けて、その場所を離れてゆく。



「………うわ、あたしマジ下品‥」
さん、微妙に後悔。

「………何考えてんだ、オレの海綿体‥」
性少年、思春期海老原。


そんな気まずい空気の二人。
その空気がその後どうなったかっていうのは、松葉杖が取れる時期にわかること。

 

 


マーシーだって性少年だと思いました。
04/05/28  ×