三年契約のお値段

 

 

100×300×3=90000‥円


「100円貸して」
「………いつ返してくれんの?」
春からこの男に貸した総額はいくらでしょう。塵と積もれば山となるって言葉を、あんたは知ってますか?
「んー‥、もちょっと」
「返す気ないんでしょ」
「あ、貸す気ない?」
「貸す気ないも何も、あんたが返す気ないなら貸さないし」
「そー言っていつも貸してくれんじゃん」
「つーか金返せよ。全額。お前ホントは金持ちじゃん」
「いくら?」

いくらになるの。



あぁ、こいつに初めて金を貸したのは入学式だった。





「あ、そこの‥、な、アンタだよ、アンタ」
「は?……あたし?」
「そう。ワリ、100円貸してくんない?」
「はぁ?」
「な、頼むわ。今財布なくてさ」
やけにデコの広い男が話しかけてきた。どうやら同じ新入生だってのは、制服の下に着ているらしいジャージで判別できたけど。そんでもって、必死に頼んでくるものだから100円くらいならいーかと貸したのが運の尽き。

次の日、

「あ、」
「あー」
「昨日の100円の子」
「100円の、」

デコッパチ。なんて言えない、だって仲良くないし。

「今100円返すべき?」
「あ、別に今じゃなくても」
「そ。んじゃさ、」
「へ?」
「100円貸して」

つーかそりゃありえないだろ。にゃにゃにゃにゃーい。
貸してしまったあたしはもっとありえない。
それから毎日、何故かあたしは赤星に100円を貸す。お昼時、必ず100円を。彼は何に使うのか、現場を見たらパックジュースだった。しかも250mlのデカイヤツ。





「あたし毎日貸してるよね」
「土日は学校来てね、」
「学校来てる日は毎日」
「‥そー?」
「夏休みとか入れなくても学校約120日」
「数えんなよ」
「120、……100、いちまんにせんえん、」
「一万?」
「あたしもう一万円も貸してんの?赤星に?」
「自分で計算したんだろ」
「うっわ!フザケンナ!デコッパチ!」
仲良しになったから、ってゆーか、立場が強いからこそ言える。

"デコッパチ"

「早く返せよ!一年続いたら三万いっちゃうでしょ!」
「んじゃあ三年で九万か」
「九万かじゃないし。三年間も貸す気ないから」
「大丈夫、三年で22億だろ?」
「………は?」
「いや、オレなら25億は固い」
「何の話?」
「契約金その他」
「はぁ?」
「九万どころの話じゃねーから」
何を言ってるんだお前は。
「単純計算で25億を12×3で割ると?」
「だから何言ってんの?誤魔化してるつもり?」
「25億÷36、……ほれ、計算」
「無理だけど」
「いいから携帯出して計算シテみ」

携帯でカチカチ、2,500,000,000÷36=69,444,444‥

「ろくせんきゅーひゃくよんじゅーよんまんよんせ、」
「カケルさん」
「3?」

カチカチ、×3=208,333,333‥

「いくら?」
「2億、でー、833万3千3百33‥」
携帯に表示された、3が限りなく続くみたいな数字を赤星に見せる。
「二億とちょっとか」
「それが何」
「給料の三か月分」
「は?」
「指輪の定番?」
「ユビワ?」
未だはっきりしない頭を悩ませるを、三年間のジュース代の二千倍。そう言って、赤星は笑った。

「まァ、あと3年待ってれば?」

小憎らしい笑みで笑った。

 

 


松井KZ夫氏は三年契約で22億弱、‥どんな額ですか。
04/01/01  ×