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まさに晴天の霹靂。


「奨志くん?」

草野球とも取れるだろうモノを、川藤の伝で、ニコガク野球部、実業団二軍と試合。試合は草野球なんてレベルではなく、思った以上に高い。
しかし、二子玉川の川べりで行うということが草野球っぽい。

「知り合い?」
「………まぁ……」

よく晴れた日の日曜日。
その試合の終了後近寄ってきたのが、大学生、

「ってゆーか何で今岡サン、知ってるんですか」
「何でって。オレの家庭教師だし」
「かかか、家庭教師だぁぁぁ?」
「聞いてねーっつの!」
「テメェ!いつの間に!こんな麗しい女子大生のお姉さんに!」
「今岡ぁっ!」
ニコガク面子の罵声。そして平塚が今岡の首を締め上げる。
「うぅ……ひ、平っち〜‥」
ギブギブ、と天を仰ぐ今岡。しかし、そんなもの気にも留めず、平塚発狂。どんな勉強してンだ、コラァ!などと。他の部員たちも詰め寄る。
みなさん、家庭教師に夢を持ちすぎな様子。
先生業をしている方は切羽詰るというのに。成績を少しでも上げなければ、と。そこをいくと、今岡は教えたことを忠実に吸収する。文句も言わないし、困らせることなどめったにない。仲の良い、弟生徒に姉先生と言った感じだ。だから、先週勉強中の雑談で、今日の試合を聞いて遊びに来た。


そこで、衝撃的な。



「ゲホッ、ゲホッ……」
涙と鼻水を流し、その場に崩れ落ちる今岡。塔子に貰ったスポーツドリンクを鼻を鳴らして飲み干す。
「先生!」
「何て名前ですか、先生!」
先生。彼らにとっての先生ではないけれど。意気揚々とはしゃぐ男子高生の群れ。
は苦笑いして自己紹介。そのお姉様だが謙虚なキャラに、大フィーバー。聞いてないのに、自分の名前を覚えてもらおうと。次々に名前が飛び交う。

「………どーも」
「あ、うん。久しぶり。おっきくなったね」

そんな中、こんな挨拶を交わす二人。みんなの目がその二人へ。

「おっきくって……」
「だって、最後に見たのー‥奨志君が小学生の時だし」
「そーだっけ?」
どーゆうことだ、赤星。そんな感じで、先輩方が聞きますと。どうやら二人は昔ご近所さんだったとのこと。赤星が小6くらいの時に、は少し離れた町へ引っ越したらしい。

「変わらないっすね」
「えぇ?……マジ?」

変わっていない。

四年前のあの日から。全く変わってないその笑顔。
変わったとこといえば、少し髪が伸びたこと。

そして、


「あ、今岡君、今日ね、授業なし」
「へ?」
「さっきね、家寄ったんだけど。お母さんにそう言われて」
「な、何で?」
「出かけるとかなんとか言ってたよ」
「はぁ……」















なぜか、家は正反対の方向なのに送ると言い出した赤星。昔馴染みだからだろうか。何の抵抗もなしに送ってもらうことに。
大変だったのは、ニコガク面子の説得だけだった。


空が、赤く染まる。夕焼け空が広がった。





赤星は思う。たった四年の歳月………



ちゃん」
そう、オレはあの頃。君のことをそんなふうに呼んでいて。
「ん?」
「おっきくなりました?オレ」
「なったよー。あたしよりおっきくなったじゃん」
あんたが高校生で。オレが小学生だったあの頃。いくら頑張っても、年の差は埋められないと。ガキ扱いされることがいつもイヤで。
ただの憧れは、日に日に大きくなっていて。
「小学校の時の集団登校以来だよね。奨志君と歩くの」
「あぁー‥。あったっすねー‥」

あんたが引っ越したあの日。家から一歩も出なかったオレの気持ちを。

あんたは知らない。


「見たことあるなーって。今日」
「あぁ。あたしも」
「一瞬時間止まったし」

あの衝撃は忘れない。ビックリした。

いつの間にか君は。オレより小さくなっていて。いや、オレがでかくなってたんだけど。おかしかった。ガキの頃思ってた、あの感情が。またぶり返して。しかも、もう、躊躇うことはない。そんな思いも、頭の片隅に浮かんで。

年の差なんて、忘れるくらい。
たった四年の年月が、あんたとオレを逆転させた。



ちゃん」
「何?」
「今日、カテキョなくなったンすよね」
「うん?」
「何か予定ある?」
「んー‥、今日はないけど」
「じゃあ、飯とかいきません?」
「………お姉さんにたかる気?」
「オレが。おごります」
「あ、そ、そう?いや、割り勘でいーけど。……うん」
行こうか、じゃあ。そう笑う彼女の顔は、やっぱり変わっていない。


まずは話そう。
今までの四年間を埋めよう。

その先にある、ファミレスで。

 

 


ヒロインを家庭教師にしたかっただけ。
03/01/18  ×