| シュガレスト・アルコールロック |
|
砂浜で宴を。砂浜の前に建てられた宿屋に一泊することになった。 別に何かあったわけでもない。よくある話で。ただ、今日は浜で食事をしようと。そしたら宴に変わっただけだ。 「大丈夫?」 「……あっつぃ」 ナミの言葉もよく聞こえない。熱い。熱いから涼しいとこ行こう。こんな火の回りにいたら熱いに決まってるんだ。そう思い、立ち上がった。 「うーあっ」 足元がふらついたのは酔っていたから。あぁ、火の回りにいたから熱いんじゃなくて。酔っていたから熱いのだと自覚。そのまま輪から離れ、砂浜に座り込む。 「あー‥熱い」 「………確かに熱いとは思うけど」 盛り上がっているクルーたちを横目に。ナミが静かに言う。それを聞いてたのはゾロで。先刻から、一人無口に飲んでいた。 「あれは危なくないのかしら」 「あァ?」 ナミの見ている方に目を向ける。 「!」 そこには、夜の海へ入っていくの姿が。 膝下丈の白い薄いワンピースが海水に浸って。まるで花のようだとは思った。冷たい水が熱を浚う。 「熱い、………冷たい」 下半身の心地よさに瞳を閉じたその時だった。不意に腕が引かれる。 「‥ッ、何っ?!」 「夜の海に入ンじゃねェ!」 鼻先を掠めたのはゾロの顔。危ねぇだろと罵り、抱きとめる。 「ヤ、だ!冷たいから、入る!」 酔っていた。だから子どものようにワガママを。尚も入ろうとするを、苛立たしげにゾロが抱き上げた。 「ひぃぁっ」 いわゆる、お姫様抱っこ。一人で歩けると暴れるをの声を無視し、そのまま砂浜へ。歩く間に、急に暴れるのをやめる。ため息をついたゾロの目には、自分の腕の中で寝息をたてるの顔が映った。 「ん、も………熱……」 「ウルセーな、テメェは」 さっきから熱い寒い、どっちなんだと、を抱き上げながら思うゾロ。 停泊した島の宿屋。一階は酒場で、二階が客室になっている。 ナミの押し切りで女性陣はシングル部屋。男はダブルとトリプル。チョッパーとルフィとサンジが同室になった。 を部屋に連れて行けと言ったのだが、ナミは聞かなかった。そこら辺に寝かしときなさいと。大丈夫、風邪は引かないわと言い、ルフィと酒を交わす。 小さく悪態をついたゾロは、嫌そうな顔で宿屋へ入っていった。 「飲みすぎだろ」 海になんか入りやがって。ため息をついて部屋のドアを開ける。自分の泊まっている部屋より幾分か小さい。奥にあるベッドまで歩き、を下ろした。 「……かったりぃ」 グン、と。その場を離れようとしたゾロが引き戻される。の手が、ゾロの服の裾を握っていた。 「あぁ?フザケンな……」 手首を掴んで離そうとするが一向に離れない。観念したゾロは指を一本一本離す。 奇妙な感覚に囚われた。 自らのゴツイ手が、の細い指を包んでいる。 気づくと、指を絡めて。 「………酔った、か?」 自問。無論、酔っていない。そりゃあ多少は酔っているんだろうが。上がる心拍数に、そこまで酔ってないはずだと思う。 絡めた指先が痺れる。そして、負けた。 今日は飲みすぎた、酔ってるな。そう思うことにした。そう思えば、流されることも許される。そんな気がしたから。 ベッドの軋む音。シングルのベッドに二人分の重さ。そりゃあ軋む。 「う………ん……?」 細く目を開ける。目の前にいる男と目が合った。 「起きたかよ」 「……ゾロ?」 体が楽だった。ベッドに寝転がっているからだろう。なのにどうして目の前にゾロの顔があるのか。 「何……?」 「テメェが酔っ払ったから運んで来たんじゃねーか」 「……ありがと」 言葉と同時に、瞼が下りた。瞳を閉じた。ダルイからこのまま寝よう。はそう思った。それと同時に、そうはいかないことにも気づいた。 「……んぇ…ん、ん?」 瞳を閉じたの唇をゾロが覆う。 「……ふ、ぃ…ッ…」 「テメェの所為だからな」 「何、が……んっ」 深く口付け、舌先で誘うように。絡め取るその音が暗い部屋に響いた。 そして、意識が飛ぶ。 「………どうしよう」 「別にいいじゃねーか」 「よくねーよ!バカ!」 翌朝、目の覚めた。乱れた自分の姿。そして、隣で眠る男に気づいた。 その男が寝ている間にシャワーを浴び、服を着て。冷静になろうとしたが無駄だった。ゾロを揺り起こして聞く。何かあった?と。するとゾロは、少しだけ気まずそうな、でも意地悪な笑みを湛え。 『そりゃあな』 首筋を指で差しながら言った。その動作に、鏡を覗く。 赤い印がそこに。 「………あぁぁぁ」 酔っ払って、何してんだ、本当に。ねぇ、どうしよう、困った。を連発しながら自己嫌悪に陥り、床に座り込む。 その時ドアがノックされ、開いた。 「おはようございま〜す、ちゃん」 「ねぇ、。ゾロがいないみたいなんだけど知らな……」 顔を見せたのはナミとサンジ。そして、凍りつく。 の使ったはずのベッドに、半裸の男が寝転んでる姿を見て。床に座り込んで、心なしか涙目のを見て。 「………ゾロぉぉぉ!あんたに何したのよ!」 「テ、テメェ!ちゃんに何しやがった!」 そんな二人に一言。 「ナニした」 ぼーん! 「あぁぁぁ、ー!あたしの可愛いがぁぁぁ!」 座ったを抱きしめて、ゾロを睨みつけるナミ。サンジはというと、ツカツカ部屋の中に入ってきてゾロの髪を掴んだ。 「この緑野郎……、オレのちゃんに……」 「あぁ?誰がテメェのだ。どっちかっつたらもうオレの……」 「いやぁぁぁぁ!それ以上言うんじゃないわよっ!ゾロ!」 騒ぎ立てる三人を見て、冷静になっていく。 「あ、あの、ナミ?サンジくん?」 「ーっ、可哀想に!こんなのに乱暴されてェェ!」 「あ、あの、でもさ、酔っ払ってた、し。あたしもそうだからさ、あんまり……」 「このアホが酔うわけないでしょっ?ありえないくらいザルなのよ?コイツ!」 「テメェ、ちゃんが酔ったのをいいことに!!」 「あー、ウルセェな。もう出んだろ?」 舌打ちをしてベッドから下りると、椅子に置いたシャツを肩にかけた。 「朝から邪魔すんじゃねぇよ」 ナミとサンジを一瞥し、の傍へ。 「…………おい」 何かを耳元で囁いて。少し笑うと部屋を出て行く。 「………な、何言われたの?!あぁぁぁ!何その赤い痕!」 「ちゃーん、ちゃーん…………」 ちょっとおかしくなった二人をよそに、は息を整えていた。 『意識ねぇヤツやるほど堕ちちゃいねぇよ。……また今度な』
夜の海に入ろうとしてゾロに怒られ抱き上げられる夢をみたもので。
02/10/17 × |