| プレイシャスビーラヴィ |
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バカなお兄ちゃんだね。 「だー!待て!アデルっ!」 「うっさいなー、兄ちゃんはっ」 干渉しすぎだよ!と。バタバタ家の中を走るアデル。玄関まで来たとき、キッチンいると目が合った。を見てニッコリ笑ったアデルは、行ってきまーすと大きな声で。 「行ってらっしゃい」 快く送り出すにシュライヤが目を向けたその隙に、アデルはさっさと玄関から出て行った。 「ア、アデルっ」 閉まったドアに手を伸ばす。何とも虚しい光景だ。 そんな悲しい姿のシュライヤにはため息を一つ。 「シュライヤ、紅茶飲むでしょ?」 「」 お前、何でアデルを行かせるんだよ。少々恨めしそうな顔で、玄関のドアを離れてキッチンへやってくる。 「別にいーじゃん。楽しそうだし」 「た、楽しそうってな、お前」 「いーでしょ。悪いことしてるわけじゃないんだし」 「あ、あいつ男と遊びに行くんだぞっ?」 「へー。てゆーか男じゃなくて男の子でしょーよ」 「あぁぁ、何であんな髪の毛上げてうなじ見せて……」 「あーぁ、うるさいなー。アデルに嫌われるよ?」 この場に適した効果音があるとすれば、ガーン。 「き、嫌、」 「あ、いや、だって、ほら、アデルも干渉しすぎって言ってたし‥」 「………………」 椅子に座って出されたままの紅茶を見つめる男。頭についた寝癖。まだ起きて数分しか経っていないだろうと思われた。 「あ、おい、」 「ん?」 「何でお前、ここにいんだよ」 「アデルに髪の毛いじってって頼まれたから」 「……何?」 「今日出かけるから、髪の毛結んでって。昨日頼まれたの」 「て、てめェかァーっ!アデルの髪の毛上げやがったのは!」 ガタンと席を立ち、喧々囂々目の前の女を責め立てる。 「あのなァ、あんな首元強調して、……それでなくても無防備だっつーのに!」 「だってあれがいーて言ったんだもん」 「言ったって、言ったってお前、」 「つーかちょっと待ってよ。何であたしがあんたにてめェ呼ばわりされるのよっ」 「へ、へ?」 「さっき、てめェかー!って言ったじゃない」 言いました。言いましたけども。 「あーもう腹立つ。ご飯持って帰る」 「え、飯?」 「シュライヤんとこご飯持ってけってお母さんに頼まれけど。持って帰ってやる」 「ちょ、待て、、」 「謝る?」 「あ?」 「あたしに。謝る?もう逆らいません、ごめんなさいって。謝る?」 「逆らいませんって何だよ」 「あー。帰ろ」 「さ、逆らいません。ごめんなさい」 思うのだ。この体のどこにそんなに食い物が入るのかと。 多々、不思議に思うのだ。 「んめェな」 「そう」 「やっぱ‥、お前の母さんの料理、ッ、‥んぐ」 「食べきってから話してよー。汚いなー」 ガツガツと、表現するなら食べるではなく食らいつく。 「シュライヤ」 「‥っ、ん?」 「その食べ物はどこにおさまるの?」 「あァ?腹」 面白くない答え。いや別に、シュライヤに面白い答えも意外な答えも期待してはいないが。 「ねー。シュライヤ」 「んん?」 「そろそろ妹離れすれば?」 「ブバッ‥」 「わー!」 の言葉に食べ物を噴き出したシュライヤ。はトレイでそれを防ぎ、嫌そうな目を向けた。 「汚いっ」 「い、妹離れ?オレはそーゆーんじゃなくてなァ、」 「あのね。大切な物を手放そうって気持ちを持つことも必要なんだよ?」 「ててて、手放すっ?」 「お母さんも昨日お父さんに言ってたし」 「手放すって、アデルはまだオレなしじゃ、………ぁ?」 「あ?」 「何か手放したのか?お前の父さん」 そーいや、あのおっさんの趣味は銃いじりだったとか。何か手放さざるを得なかったのか、とか。そんなことが頭を過ぎっていたのだが。 「え?あたし?」 「……は?」 「あ、や、……何でもない…」 の回答に顔を顰める。あたしってどーゆーことだと、小首をかしげ。 待て。 これを数分前の自分の心境に当てはめてみるとしよう。 まさか、 「ちょ、ちょっと待て、お前、もしかしてオレたちのことおっさんに‥」 「え、言ってないよ」 「そ、そうか」 「お母さんには言ったけど」 「おばさんに?」 「お母さんがお父さんに言っちゃったみたいだけど」 俗に言う、恋人同士って枠の中に入っている二人の関係。 ちなみに、の父親はこのタウンにある海軍駐屯所のお偉いさんで。やたらと銃に詳しいガンマニア。 「バ、バカ、何で言っちまうんだよ!」 「え、だからお母さんが言ったんであって、あたしが言ったわけじゃあ‥」 「そんなのおっさんの耳に入っちまえば同じことじゃねーか!」 食べ物そっちのけで、グラグラと肩を揺すった。そんなシュライヤに、は大丈夫だよと空笑い。しかし、海軍引き連れてとか、軍艦引っ張って来たらどーすんだとか。一向にシュライヤは聞きやしない。 「今日は仕事休みだし!家で寝てたからそんなもん連れてこないよ!」 妹のことも恋人のことも。 まぁ、恋人というか恋人の父親のことだが。 必要以上に心配する男。 はそんな男を見て、小心者なのかそれともただ気が弱いだけなのか。あぁ、同じ意味だわと、空笑いから渇いた笑いに変え。瞳を細めたまま、未だに肩を揺さぶられていた。 その頃、起きたらがいなく、シュライヤという恋人の元へ行ったのだと悟ったの父親は、自宅で武装し、母親にシュライヤ邸の場所を聞きだそうとしていたという事実は後にわかること。
妹大好きなお兄ちゃん。
03/10/22 × |