| マナーモードラブ |
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負担にしかすぎなかったのだろうかと、少しだけ後悔。 いや、後悔してるんじゃないんだろう、この少年は。 が熱を出して倒れた。熱を出した少々の原因は、どうやら船長にあるらしい。なんてこと、思ってても誰も口に出さない。 二人が互いを想い合ってる事実は船の上じゃみんなが知るところ。 サンジは嘆き、ゾロは興味なさげな顔をしつつもそれを黙認し、チョッパーやウソップは話題に出さずとも興味深々。女性陣はと言えば、首を突っ込むなんて真似は無粋だと思っているらしい。 が、それも二人が可愛く、ただお互いを想い合っていた時までの話。 「……」 「……」 「……」 昨日とある島に着港した麦わら海賊団は安宿にご宿泊。そこで船長からなされた提案は、自分とを同じ部屋にしろということだった。ナミは怪訝な顔をして見せ、サンジは猛抗議、当の本人もポカンとしていた。いつもなら女性三人か、チョッパーを数に入れて二部屋に分かれるはずが、今回は船長とという、カテゴリーに分けるなら恋人区分の二人に部屋が宛がわれた。 で、翌日、ことは悪い形で表れる。 「だってよ〜、起きたら顔真っ赤でよ〜」 朝一番、サンジと同じ部屋で快眠を取っていたチョッパーを物凄い勢いで起こしに来た。取り乱し気味のルフィから出た言葉は、が熱そうだという言葉だけで、繰り返し何回も言う様子に、チョッパーも慌てて二人の部屋へ駆け込んだ。 の熱は軽く38度を超える。 「ともかく、」 寝るときは服を着せること、チョッパーは俯きながら言う。目の前には布団に埋もれたがいて、周りにはクルーが勢ぞろい。そんなチョッパーの言葉に、がどんな格好で寝ていたのか想像を巡らせる男性陣。しょうがないと言えばしょうがないのだ、十代の男の子だから。それよりも、そんな格好で寝ていたということは、昨晩はお楽しみだったのか。十代の男の子、特にこの手の話題にあまり縁のないウソップはうな垂れた。 チョッパーの意向というか、船全体の意見で部屋交換。 もちろん交換したのはチョッパーとルフィ、つまりサンジとルフィが同室。ルフィは不服そうな顔をしたが、が病気なんだからというロビンの声に渋々頭を縦に振ったという経緯がある。 「なぁサンジィー‥平気かなー」 「てめェのせいだろ」 「そうなんだけどよ」 腹立たしい返答だ。言った自分も自分だが、そう返されるとむかっ腹が立つ。 「ちゃんの体考えもしねェで」 「だってよ〜」 「だってもクソもあるか。金輪際ちゃんに、」 「止まんねェもんはしょーがねェだろ」 「一回で止めとけ!」 「痛くても嬉しいなんて言われたら止まらねェ」 「あのなァ、……痛くても…?」 「ん?」 「……おいまさか、」 「んん?」 「ちゃん……初めてだったのか……?」 「みてェだな」 ブチッ 「初めてだっていうレディを熱出るまで犯しやがったのかクソガキャア!」 どうやら、サンジのレディマナーに関する逆鱗に触れた模様。部屋に完備された安っぽい木細工の椅子に掛けられた腰がふわっと上がり、鋭いつま先がルフィの頬を掠める。間一髪でその攻撃から逃れたものの、次々に繰り出されるそれは止まない。 「てめェも一回掘られりゃレディの気持ちがわかるか?アァッ?」 キレ紛れに酷いことを言っています。 バタバタと部屋の中で攻防を繰り返しているその時、バタンと大きな音と共に扉が開き、鬼の形相をしたナミが現れた。 「うるっさい!」 ピタッと止まった二人の動き、後ろには未だうな垂れたままのウソップの姿。その隣に佇むチョッパーは自分用の荷物を持って立っている。 「ルフィ」 「んあ?」 「戻りなさい、部屋に」 「ナ、ナミさん?」 「が、ルフィ探してんだ」 「え、」 「だから、‥っ、」 チョッパーの言葉を聞いたと同時、部屋を出て行った。目を見合わせたチョッパーとナミ、サンジの視線の先は、更にうな垂れたウソップがいたとかいないとか。 ルフィが部屋につくと、壁に背をつけて床に腰を下ろしたゾロ。ロビンは備え付けの椅子に腰掛け、本を片手に扉を見た。 はといえば、布団の中で意識を持って、入室したルフィに目を向ける。 「ルフィ、」 「大丈夫か?」 「うん、あ、あのね、あの‥」 「ん?」 「ごめんね」 ごめんねと、開口一番、意図するところは何だ。 「何がだ?」 「起きたとき、抱っこしてあげられなくて、」 ごめんねごめんねと、布団の中で目を伏せるに背中が粟立つ。 パタンと本を閉じる音がして、ロビンは壁際の男に目を向けた。やはり不服そうな顔をした男だが、従うように立ち上がる。大きな音を立てることなく、そっと部屋を後にした。 「約束したのにね」 初めての経験に、小さな夢を持っていた。 それは些細な希望で、相手が好きな人ならそんなもの実はどうでもいいくらいの。だけどそれを話したら、ルフィは喜んで聞き入れてくれた。 “抱っこしてベッドまで運んで欲しい” 狭い部屋の中、わざとらしいコントのような。 「ここ、ここから抱っこね」 「部屋の外からでもいいぞ?」 「やだよ、そんなの」 「んじゃこっからな」 そしてお返しの小さな約束。 “朝起きたら、オレのこと抱っこしろ” 初めての経験に、少年も小さな夢を持った。それは彼女が夢みていたものに便乗した即席の形だった、二人だけの、初めての夜に交わした約束。 「いい。ンなの」 ベッドの下に座り込み、同じ目線に持ってくる。少々角ばった、でも柔らかい手で更に柔らかい髪をひと撫で。 「オレもごめんな」 「ん?」 「無理させた」 「してない」 「熱出たじゃねェか」 「……あれだよ、これは、ほら、ショック熱」 「ショック熱?」 「初めてあんなことしたから。うん」 「オレ出てねェぞ」 「あたしが繊細だからだよ」 「んん?」 「とにかく、ルフィが謝ることじゃないの」 「……次は平気なのか?」 「ん、多分」 「んじゃ、次、抱っこしてくれな」 「はーい」 席を外してくれた気の利いた二人のお陰で、辺りを気にせずキスができる。 「オレ、今日サンジの部屋行くから」 「えぇっ」 「そーしねェとの熱下がんねェ、多分」 また熱上げちまうぞと笑うルフィに、じゃあ早く治すよと返した。瞳を閉じるように促せば、子どものように言うことを聞く。そんなの髪に触れ、待てるかなぁと、大人の心理を焦がすルフィ。 約束を果たすためには、もう少し安静にね。
大人と子どもの狭間でクソ甘・・・。
05/10/08 × |