| 穏やかな日の瞬き事 |
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顔を覗き込む、目を合わせる。逸らしたら両手で顔ごと掴まれて、グギッって。 「いだだだだだだっ!ルーフィー!」 「んおっ、」 「手ェ離して!手ぇー!」 「悪ィ悪ィ」 離された途端、は首根を抑えて下を向いた。ひんひん言いながら指先でうなじを摩っている。 ルフィはと言えば、申し訳なさそうな表情での瞳を覗き見た。 「ばかーばかー。ルフィのばかー」 「悪ィっつってんだろ。ここか?」 「もういいよ。触ンないでデコッパチ」 ぶんぶんと頭を振るが、ルフィの指先ものうなじに触れたまま。しかし頭上から聞こえた言葉は全く考えナシなもの。オレが悪いけどお前だって悪ィんだと、見上げれば口を尖らせた顔。 「はァ?‥いっ、」 「痛いか?」 「グギって音鳴ったんだよ、グギって!」 あたしが何したの、言えば返される、隠しただろ。 「自分の物隠して何が悪い」 「隠されっと気になんだろ?」 「お菓子です、お菓子。サンジくんから貰ったお菓子」 「中身じゃねェ。何で隠すんだ?」 「ルフィが食うからに決まってんじゃんか!」 「それが気に入らねェんだっ」 「だー!じゃあ人のモン食おうとすんなっ!」 ルフィだって同じの貰ったくせに、は言って舌を出す。ベー、なんて可愛いもんじゃないのがもったいない。 「オレはもう食っちまった」 「あたしはとっといたの」 絶対最初に貰った量もルフィのが多いんだからね、そう告げるとはポケットに手を入れる。中には小さな袋に入ったクッキーが数枚、おやつの残り。 「そこか」 「うっ‥、……渡すもんか」 「ちょっとくれって言ってるだけだろ?」 「何がちょっとか。嫌だからね」 座った体勢から右足を立てて、左足の反動で体をずらす。逃げようと踏み出したところを伸びてきた手が制した。 文字通り『伸びてきた手』だ。 「ぎゃあっ!っ、もー‥!」 ずるい!言えばもう片方の手も伸びてきて自分を包む。 「逃がさねェぞ」 「間違ってる、その台詞間違ってる」 肩が上がるほどの深呼吸。斜め後ろから覗く頭に目を向け、キっと睨みつけた。 「お退きっ!バカ船長!」 「菓子、」 おりゃあっ!なんて似つかわしくない単語の叫びが響き、後に続いて『ゴッ』とかいう、何とも痛そうな擬音も響く。 「‥っ!」 「〜〜〜!」 「何やってんだ?お前ら」 ラウンジから下りてきたウソップはおかしな光景を目にした。とルフィがそれぞれ甲板にうつ伏せになっている。抑えているのは額、小さな呻き声も似たように聞こえてきた。 「ルフィの‥石頭っ‥」 「っ、てぇー‥」 同じように額を押さえて蹲るルフィを目にして、石頭なのはルフィだけじゃねェみたいだぞ、ウソップは思うが言えない。 はウソップに手を伸ばし、助けてウソップ、船長に襲われる、聞き捨てならない台詞を吐いたが対象がルフィとなれば話は別だ。あァ?と眉を顰めてルフィを見れば、ルフィはルフィで言う、ウソップ、今悪いのはオレじゃねェ、だ、言ってるそばからルフィの手はのポケットを狙っていた。 「ルフィがあたしの菓子取るのっ!」 「少しくれって言ってるだけじゃねェか!」 「絶対嫌だ!これはあたしの分なのー!」 くだらない。全くくだらない揉め事。 「勝手にやってくれ」 食い物に執着するルフィ然り、も一度決めたら折れない性格。決着がつくには時間が掛かるだろうと、ウソップは背を向ける。 ダンっと甲板に拳を打ちつける。下唇を噛んで打ちつけた拳とは逆の手をポケットに入れた。出された小さな袋は、袋口が赤いリボンで結ばれている。 「くれんのか?」 「誰がやるかっ」 収納先はあたしの胃の中!叫んだと同時に何枚か頬張った。手元に残った数枚も、ルフィに取られまいと守りの体勢。伸ばされた手がに到達する前に、は残ったクッキーを頬張る。 「おい!」 「あんえんえいあー!(残念でしたー!)」 むぐむぐと口を動かしながら、喉の跳ねが見えた。そして口の中が空になると再度口を開いて言葉を発す。 「残念でした」 肩を落とすルフィに勝ち誇ったような笑顔を見せた。 座り込んだルフィの横にしゃがみ込み、は顔を覗き込む。先ほどとは立場が逆か、いや、そうではないかもしれないが、はルフィと目を合わせて笑った。これが数分前とシンクロしないのは、ルフィが目を逸らさないことにある。 「がっつかないでルフィも残せばいいんだよ」 「食いてェもんはすぐ食うんだ」 「だったらその後も食べたいとか言わない」 「食ってんの見たら食いたくなるだろ」 「我慢するの、我慢」 だいたいルフィは我慢ってものを知らないんだよね、偉そうに腕を胸の前で組み、ため息と共に目を閉じた。それで、両手で顔ごと掴まれて、グギッ‥、と、 あれ? 「いっ、」 数分前と同じように、両手で顔ごと掴まれた。だけどグギって首が曲がることなくは目を見開く。上げられた顔、上げた人物と目が合って、それは数分前と本当に変わんない、……変わらないんだけど。 「………っ、……おバカっ‥!」 口端にクッキーつけてたのがいけなかったって?急いでクッキー頬張ったんだからしょうがないじゃん。そんなの、常識の無い食い意地の張ったルフィが悪いんだ。美味ェなんて笑ったって、許さないんだからね。 もうちょっとだけロマンチックに行こうよ、船長。
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04/09/23 × |