独裁者とも云へる君

 

 

何でみんなルフィに従うんですか。恐るべし、船長命令。

「うぅー‥」
行きたかった、みんなと一緒に港に。でも行けなくて、船に残っております。
ー」

麦わらの船長と一緒に。

何さ、拗ねたようにジロリと睨めど、船長は気にもしていないらしい。なぁなぁなぁ、なんて、意味も無く楽しそうな笑顔は毎度のこと。はその笑顔にイラつきが増す、だいたい何でここに残らなきゃなんないのよ、腹の中はそれ。
「腹減らねェか?」
「減らない。これあるもん」
「もう食っちまった。……何怒ってんだ?」
「お腹空くの困るなら、サンジ君と残れば良かったでしょ」
何で私までつまんない船番しなきゃなんないのよ、と。ぷんすかぷんすか甲板を見つめた。
「サンジは飯の材料買いに行ったんだ」
ナミもチョッパーも、みんな目的があるんだと船長は言う。
「ゾロなんか降りようが降りまいが関係ないじゃん」
船番なんかゾロに付き合わせればよかったんだ、は先ほど船が港に着き、クルーが甲板に集まった時のことを思い出した。
サンジは食料の買出しに行くと言い、チョッパーとウソップは船の備品と薬を買いに行くと言った。ナミは近辺の地図や海図の購入、ロビンは毎回情報収集に当たる。は思った、騒ぎの火種に成り得る船長と副船長は今回も船番だろう。いつも通り、自分は港に降りてフラフラ散歩を楽しもうと。しかし船長はいつも通りでないことを口に。

『じゃあはオレと船番だなっ』
『へ?私?何で?』
『ゾロ、お前サンジの荷物持ち手伝ってやれよ』
『あァ?』
『ちょっと待てルフィ、何でオレの荷物持ちにこんな、』
『買うモン多いって言ってたじゃねェか』
『そりゃそーだが、……こんな迷子野郎の世話、』
『何だとコラ、このエロコック』
『どっか外れてンのか?三流マリモ』
『どーでもいいからお前ら買い出しだ』
『てゆーかお前、ちゃんと二人で船番だと?』
『そーだよルフィ!何で私船番なの』
『うるせーなー』

船長命令だ!ルフィは言い切った。

船長命令って言葉だけで一歩下がってしまう彼らはどうかと思う。いや、自分だってその言葉に負けてしまったのだが。
そして結局薬局残った船の上、楽しみといえばおやつだけ。唯一、サンジが残してくれたミニドーナツが心の救いとなった。



「あーぁ、もうっ!久しぶりの港なのに!」
「次の港で降りりゃあいいじゃねーか」
「次の港まで何日かかるかわかんないし」
前の島からここまでの日数を指折り数えてみる。間違いなく七日以上は船の上で過ごしていた。これでも実は短い方で、少なくなった食料のために急遽立ち寄ったのだ。大した予定がなければ、もう次に寄る予定だった港には着港しないだろう。
別に船の上が嫌いなわけではない。だけどこうもずっと船の上だと、たまには地面に足をつけて歩きたい。見知らぬ島を散歩してみたいではないか。いつもはできるそれが、今日は船長命令とやらでできなくなった。
「オレなんかいっつも留守番だぞ?」
「そんなん賞金首な自分が悪いんじゃん」
それに絶対騒ぎ起こすし、ふーんとは顔を背ける。
「船長命令で遊びにも行けたでしょ」
自分で言って思わず頷く。そうだ、そうなんだ、できるはずだ。遊び相手がいないと私を幽閉せずに、ルフィが外に遊びにも行けたんだ。
「そーだよ!船長命令すればよかったじゃん!」
「そしたら船に残るやついなくなんだろ」
「ゾロ」
「一人でか?」
「寝てるだけだから退屈とか言わないもん」
「船番なのに寝てんだぞ?」
「………確かに番になんないけど」
あいつ自身に危険がなかったら、何があっても起きなそうだ。
「てゆーか、じゃあ、いつも通りルフィとゾロでも‥」
そこまで言って、ぐっと頭を上げる。
「ずるいよっ!船長命令ってさ。嫌だって言えないっ」
「嫌なら嫌だって言うぞ?あいつらは」
「だ、だって、何か言いづらいもん」
「なぁ、オレと残るの嫌なのか?」
「嫌じゃないけど」
「けど?」
「港に下りたかったのっ」
船長命令なんてルフィのわがままばっかりだよ、は立ち上がり、スタスタと階段を上がった。ラウンジへ続く扉のノブを掴むと、ルフィも追ってきたようで、そんなルフィの顔など見もせず中に入る。食べきったミニドーナツのお皿をシンクへ。


「何」
「怒んなよー」
害のない洗剤とかいう液体をスポンジにつけ、キュッキュッとお皿を擦り始めた。
「な?」
「知らない」
そっぽ向くにルフィも口を尖らす。そして少しだけすまなそうにすると、船長命令じゃなくて、そう口にした。

「お願いだったらいいか?」

は手を止め、眉を寄せ、うん?と目を向ける。

「オレ、と船に残ってたかったんだ」
「……一緒に?」
「おう」
そんなことをすまなそうに言われて、怒るわけにもいかない。
「だから、オレと一緒に船番してくれ」
断るわけにもいかない。
「ダメか?」
「………もうしちゃってるし」
「そっか」
「ばーか」
「嫌いになったか?」
「大っ嫌い」
に、なってたよ、ルフィじゃなかったら、語尾を濁す。ルフィにはその言葉が聞こえたらしくて、満足気な顔。
「なぁ」
「……何?」
「怒ってても、機嫌悪くてもいいから」

手が届く場所にいろよ、言う声を静寂が包んだ。

何となくくすぐったくて嬉しい言葉だった。でもやっぱり船長命令に聞こえた、は思って苦笑い。だって、嫌だって言えないでしょ。

 

 


船長命令は勿論、お願いにも逆らえないのだよ。
04/07/03  ×