ベメサスカーレ

 

 

寒いだろうね、寒いとね、寝つけないんだよね。
じゃあ、ホットミルクでも淹れといてあげようか。

ルフィがラウンジへ足を運ぶと、寒かったでしょ?既に毛布に包まった何かが座っていた。全身をベージュの毛布で多い、聊か羨ましく感じる。
「見張り交代だーねー」
まるで布切れの塊。それはバフバフとラウンジ内を徘徊し、鍋のミルクをカップに移す。そのカップは、またもバフバフとした生き物に運ばれルフィのもとへ届けられる。

「ん?」

そこで、

か?」

彼はやっと彼女だと気づいたらしい。

「はぁん?」
「変なモンが喋ってんなーって思った」
「うそ。だって話したじゃん」
「何か喋ってんなーって思った」
けど、モゴモゴしてて何言ってんのかわかんねーよ、薄く湯気の立つそれを見つめて笑った。毛布の塊、その正体は
「わかれよー」
「おう。今わかった」
それよりお前、変な格好してんなあとルフィは首を傾げる。同じようにも首を傾げ、だって外寒そうなんだもん、モコモコを横揺れさせながら答えた。
「寒いんでしょ?」
問いかければ答えは返ってくる、寒ィ、
「えぇー。だよねー。やだなあ。寝たいなー」
「文句言うな。オレだってもう寝てェ」
「つきあってくんないの?むしろ代わってくんないの?」
「オレがか?」
「うわっ。嫌そう」
オレがか?の時にした面倒くさそうな顔を見逃さない。ちぇー、は古典的なそれを口に出し、ため息のオプション。チロっと上目で見上げ、どんくらい寒いのさと口を尖らせる。少し考えたルフィはとにかく寒ィと心底眠たそうな欠伸をつけた。
「とにかくじゃわかんないじゃんよ」
「お前早く見張り行けよ」
「うぅ‥」
脳みその回転など遅そうな原始人め、今日はやけに感が冴えてんじゃないの。そんなことを思ったが口には出さず、未だ、うぅ、と呻いている。
長話しで外へ出る時間を遅らせようと、船長が話しに夢中になればいいのにと。心の中にカッチと浮かんだ考えは、感が冴えてる彼の脳の所為で却下された。
むぅ、可愛いとは言えないしかめっ面。はそんな表情をのぞかせてすぐ、諦めたように肩を落とす。しょーがないなー、寒い中頑張ってくるか、下唇を上に突き出して、やはり不満顔は修正できないらしい。

「あ、ルフィ、それ飲んでいいんだよ?」
先ほどから手の中に納まったカップをただ見ているだけの船長。
のじゃねェのか?」
「あたしのだったらルフィに渡さないよ」
絶対渡せない、人のものだってお構いなしに食っちまう輩だ。だけど渡したというのに飲まない彼も珍しい。その疑問を口に出せば、ルフィはが鬼みてェに怒っから、そうぼやく。
「鬼ぃ〜?」
言われたそばから鬼のような形相をしてるのに、彼女は気づいているのか。
「あんたねー、こないだもナミに何か言って怒られたでしょー?」
「ありゃあゾロがナミはハンニャみてェに怒るって言ったからナミに言ってみただけだ」
「そうそう般若。……って、そーやって女の子が傷つくことをっ」
「き、傷ついたのか?」
「心がねー。まったく。あたしはこんなに優しくホットミルクを淹れてあげたのに」
本題をホットミルクに軌道修正。いいから早く飲まないと冷めちゃうよ?ルフィに言う。ルフィはやはり不思議そうな顔をして、に向かって口を開いた。
「お前いいのか?」
「んー。タップタプするし。トイレ行きたくなるし」
そこで素朴な疑問を口にする。お前が今から見張りなんだから、温まった方がいいんだろ?至極まともな疑問。しかしはノンノンノン、人差し指をぶれさせた。
「寒いと寝つきが悪くなるから、ルフィが飲んでいいんだよ」
困ったような笑み。普段ならすぐに飲み干してしまう船長がやたら理屈屋になってる。どうかしたのかしらねぇ、ロビンみたいな仕草を取ってみた。
するとルフィは納得したようなしないような、よくわからない表情を見せ、

「オレに作ったんだよな?」

何だか基本的な事を聞く。

「そーだって言ってるじゃん」
「そーかっ。おう。ありがとうっ」
やっとこ普段の船長に戻ったか、うんうんとは頷いた。飲んだらハンモック直行!、船長に命令を出す乗組員もさすが。笑ったにルフィも笑う。

ー」
「ん?」
「ありがとな」
「おうよ」
「あー、外な、」
「うん?」
「すっげー寒ィぞ?」
「覚悟してます」
「こんくらい、」


"こんくらい ──‥

寒ィ‥"


とにかく寒いらしかった。


放心状態のを横目に、ルフィはミルクを飲み干す。
「美味かった、ごっそさん、ありがとな、おやすみ」
放心状態の、そして四つ区切りの言葉を残してラウンジの扉を閉めた。


えぇーと、なんて言った?
こんくらい‥?
こんくらいの後、何だった?

言葉は聞こえなかった。
だけど、寒いって言おうとしたのはわかった。
外の寒さが伝わってきたんだ。

唇が、舌が、あんなに冷たかった。

 

 


えーと、あのー、不器用とか曖昧とか微妙なのが好みです。
04/05/02  ×