chocolateロジック

 

 

チョコをあげる日。

溜息つきながらお菓子作り。幸せが逃げてくよと、サンジ君に言われた。
最近サンジ君に教わってお菓子作りをよくする。
そんでもって燃えてしまった、嵌ってしまった。便利なことにうちの船には、どんなに失敗したものでも食べてくれる鋼鉄の胃袋を持った船長が存在してる。毎回ご迷惑掛けます、鋼鉄の胃袋。(本当はゴムだけど)

さて、今日はというと。

「おわ!ちゃん!チョコは湯せんにかけるんだよ!」
「えっ?湯せん?何?」
「こっちの鍋に水張って‥」
鍋にチョコレートを入れてそのまま溶かそうとしました。知らぬ間に分離して焼け焦げてました。全くバカな女だよ、ごめんねサンジ君。
はすまなそうな顔をして、こっちのチョコどうしよう、鍋の底、焦げたチョコレートを見やる。
「ルフィなら食うだろ」
鋼鉄の胃袋所持者を提案するサンジ。
「あー!ダメ!それはダメ!」
「へ?」
「ゾロにしよう!ゾロ!大丈夫、食べれる!ゾロなら!」
いくらあの味音痴のマリモでも、この焦げたチョコはどうだろう、サンジは苦笑って鍋の底を覗き込むがの中では無事解決らしい。ご愁傷様と、甲板で寝てる緑頭を思い出した。
それにしても、やけに真剣だ。ガス台の前、融けゆくチョコをヘラでかき混ぜるの姿。いつもなら面倒な仕事は、サンジ君やってよーの声が掛かるはずだが。今日のはとりあえず自分でしようとしている。何か心境の変化でもあったのだろうか。

チョコレートの甘い香り。ラウンジ内だけではなく、きっと外の方にも香っていたのだろう。バァンと大きな音を立てて開いた扉、甘ェ匂いすんぞ!大声で飛び込んできたのはやはりルフィ。

「ル、ルフィ」
「おらルフィ、ドアがぶっ壊れちまうだろ」
「いい匂いすんな〜。何作ってんだ?」
「チョコだよチョコ。うるせェな、てめェは」
バチッとと目が合えば、今日は失敗してないのか?全く失礼なことを言う。しかし毎回失敗作を腹に収めて貰っている身分で、偉そうに、失礼だよなどと言うこともできない。は視線を逸らしてブルブルと首を振る。
「なんだ。ねェのか〜」
「あら?これは?」
いつの間にかロビンがいて、焦げたチョコの鍋を手に取った。失敗ではないの?ロビンが聞けばサンジの目線はは小さな声で失敗だけど、そう呟くとルフィを見る。
「んじゃ食っていいんだろ?」
「ダメ!」
「何でだよ」
「そ、それはー‥、……ゾロ!そう、ゾロにあげるの!」
だからダメ!ゾロのなの!ゾロゾロの一点張りで、首を横に振り続けた。失敗した物をゾロにくれてやるというのはいいが、どうしてこうもゾロに拘り続けるのだろう。サンジが首を傾げていれば、はルフィにもう出てってと、背中を叩いてラウンジから押し出した。

よし、と声に出して頷いたはサンジに視線を合わせる。
お菓子作り再開!やたら気合を入れていた。
じゃあ、ここに置いておくわね、ロビンは手にした鍋をテーブルに置き、椅子に座る。サンジはに一言言って、ロビンにお茶の用意を。
で、先日港で見つけたナッツをビニールに入れ、細かくガンガンと砕き始めた。手に持つはスパナ、ウソップの道具箱から失敬。

「はい。どうぞ、ロビンちゃん」
「いい香りね」
「今日はダージリンになります」
「ありがとう、コックさん」
穏やかな空気、しかし横ではガンガンと不似合いな音。サンジはロビンと目を合わせて苦笑い。ちゃん、サンジがに声を掛ければ、は顔を上げてサンジを見る。
「失敗したヤツ、ホントにあのマリモに?」
「え?あー、うん。ゾロなら食べれるでしょ?」
「へ、平気だとは思うけど」
「だってさ、ナミとロビンは論外だしー、」
チョッパーとウソップとサンジ君は人間だもん、小首傾げて最もらしいことを。

「そうなの?私はてっきり、バレンタインだから剣士さんにあげたいのかと思ったわ」
ふふっとロビンは小さく笑う。あ、そーか、今日はバレンタインか、サンジは頷き、しかし間をおいて、そーなのか?ちゃん!は眉間に皺を寄せると、バレンタイン?と質問返し。
「あら、あなたバレンタインを知らないの?」
「バレンタイン?……聞いたことないなー」
「南じゃバレンタインの習慣はなかったのか」
「何?バレンタインって」
「バレンタインはね、好きな人にチョコレートをあげる習慣なのよ」
「好きな人に?」
「えぇ。だからてっきり、あなた剣士さんが好きなのかと思ったの」
「冗談きついー。何であんな寝腐れ剣士ー」
本当に嫌そうな顔、どうやら別にその気はないらしい。そりゃあ今にも腹壊しそうな失敗作を好きな人間にやろうとは思わないだろう。まったくもう、はブツブツ呟きながらナッツ砕きを再開。

しかしピタッと手を止め、頭を上げる。

「きょ、今日これあげたら好きだと思われるの?」

心なしか顔が赤いにサンジは手を止めて、知ってればね、の顔はますます赤くなって今度はロビンに目を向けた。ロビンは微笑み返し、誰にあげるつもりなの?静かな声で聞く。


「……ルフィ‥」

誰が見たって真っ赤です、彼女の顔は。

ねぇ!今日あげない方がいいのかな?好きだと思われちゃうかな?わたわた、サンジのエプロンを引っつかみながら。適切な表現をすると『取り乱し』てる状態。

「だから焦げたのは取り上げたのね」
「バレンタインじゃないよって言って渡せばいい?」
「ふふっ。意識しているみたい」
「ふふじゃなくてー!」
「だったら剣士さんもね。焦げたチョコ、あげるんでしょう?」
「や、あんなのにどう思われたっていいけど。別に」
「じゃあ、船長さんは特別なのね」
「ち、違っ、そうじゃないし!」
「そうなの?じゃあ、私も船長さんにあげようかしら」
「え、えぇ?な、何でっ?ロビン好きなのっ?」
「ふふっ。どうかしら」
「どうかしらって何ーっっ!」

女性二人から半歩下がり、サンジは煙草に火をつけた。
ロビンちゃん、楽しんでるな〜なんて他人事。真っ赤になってるちゃんも可愛いから止めないけど、だけどそれが船長のことなんだなーと些か複雑になりながら。サンジはポコポコ音を立てて沸騰するガス台のチョコに目を向ける。は無意識に、手元のナッツをありえないほど粉々に砕いてるし。まあ、どんなチョコだろうと心が込もっていればいいんだろう。
チョコを手にしたルフィの笑顔。チョコをあげたの今以上に真っ赤な顔。そんな二人を思い浮かべて、先ほどの焦げついた鍋に苦笑った。

 

 


ゾロが不憫ですんません。
04/02/14  ×