未だ錆ず鉄分ロック

 

 

「やだなぁ」
「泣くなよ」
「だって、だって、」
「オレは平気だぞ?」
ボロボロな体のどこが平気なの?いっぱい血が出てて痛そうだよ。笑わなくていい、喋らなくていい。静かにジッとしてて。
「チョッパー、早く、早く、」
「ゾロとサンジの方がヤベェんだろ?」
「わかんない。でも、」
「あいつらより、オレのが丈夫だ」
あぁ、ねぇ、気づいてる?あんたの声、だんだん小さくなってるの。苦しそうな息遣いなの。

「うん」
「泣くな」
「泣いてないよ」
「そっか」
「うん」
ポタポタと零れる涙は、そのままルフィの頬へ落ちる。

海軍と一戦交えたその体で、大きな海賊船との戦いに挑んだ。疲れてるんだから逃げましょう、ナミの言葉も聞かずに船長はその船に乗り込んだ。あいつが逃げるようなタマか?そうだよナミさん、言っても聞くヤツじゃねェし、次いで、ゾロとサンジも船に乗り込んだ。勿論勝利を手に収めど、戻ってきた彼らは既にボロボロ。
は戦いに慣れていない。こういった戦いの類に慣れる云々、経験していない。だから、こんな状態の彼らを見るのは初めてで、誰よりも過剰に反応を見せ、もしかしたら死んでしまうのではないかという念に駆られる。
チョッパーがまだルフィを放っておいてる時点で、彼の方には何ら致命的な問題はないと他のクルーは承知していたのだが。


、」
「喋らないで」
「何でだ?」
「何でも」
大人しくしてて、は言い、ルフィの頬を撫でる。
「喋らなくていいから。起きてて」
「お前、心配性なんだな」
「普通だよ」
「そーか?」
「そーだよ」
「最近はオレのこと、だーれも心配しなくなったのにな」
きっと、みんな感覚が麻痺しちゃってんだ、逆側で、意識ないままチョッパーの手当てを受けるサンジに目を向けた。
大きなチョッパーとウソップに担ぎ込まれた三人を見、ナミは肩を落として、チョッパー宜しくね。ロビンでさえ、心配している様子のにいつものことよと。いつものことなら、毎回こんな心配をしなくてはならない。
「そのうちあたしも心配しなくなるかな?」
そしたら楽かな、が言えば、楽?ルフィは返す。
「だって、苦しいもん」
「何でだ?」
「わかんない、けど、苦しい」
「お前、怪我してねェじゃねェか」
「でも苦しい、やだよ。ルフィたちが怪我してるんだもん」

困った顔で、ルフィはに言う。

ゴメン ──‥

「お前が苦しくなんなら、もうしねェよ」
「うん?」
「無理に戦いはしない」
「ううん、いいよ、違う、」
「ん?」
「あんまり怪我しないで、それだけ」
「おう」
「あと、静かにしてて。今は」
と話してェ」
「手当て終わって、寝て、ご飯食べたらね?」
今こうやって、お前と話したいというルフィには少しだけ苦笑い。

いつでも話なんてできるんだから、だって、辛そうなんだもん。ルフィの話す声がいつもより心なしか小さくて。だから今は安静にしていて欲しい、お願い、
がその旨伝えるが、ルフィは一向に了承せず、お前と話してた方が楽しいと我侭めいたことを言う。

「オレは今お前と話が、ッ」


鳴くのなら 塞いでしまえ ホトトギス


「………?……」

避ける間もなく降ってきたそれは、的確に目標物を捉えた。
鉄の味がする、は頭の隅でそんなことを思う。
男が女に使うような上等手段を、自分が船長に使ったという事実が少しだけ恥ずかしく、あぁ、顔を上げるのも何だかままならない。
唇を離したは、誰にも見られてないことを祈りながら辺りを見回す。幸い、気配はない。

、」
「あ、ル、ルフィが喋るからいけないの、大人しくしててっ」

顔が熱い。

、」
「な、何?も、静かにしてなさいよ」
「もう一回」
「え?」
「でなきゃまた喋んぞ?」
「ッ、」

どうしたの、この船長は。何なの、この船長は。
もう、ちょっと、やめてよ、バカ。

どちらかというと、彼女ではなく。上半身を起こした彼に、無理やりの形をとられた故、彼女は唇を重ねざるを得なかった。

 

 


お題内容が鉄だったかな。
04/01/13  ×