| 僕らのタイトルは未定 |
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足が棒になるような感覚なんですが。 迷子になるから、それが理由らしい。 「だってお前、ゾロみてェにすぐいなくなるじゃねェか」 真っ直ぐそう言われて、心の中では、ルフィだってすぐいなくなっちゃうじゃん、と。そうは思いながらも反論できないのは、自分の方向音痴具合に自信があるから。多分、ゾロの次にとかじゃなく、一・二を争う程。 夕暮れは朱色。 「ルフィのバカ」 サクサク、その音は証拠。草の上を歩く証拠の音だ。つまりは、道なき道を歩き続けるその音。の言葉に、ルフィは何を言うでもなく歩き続ける。 「ルフィがこっちだって言ったんだよ」 約束の時間はとっくに過ぎてるだろう。出港時間までに帰って来いと、ナミが決めた時間は何時だっただろうか。思い出したところで、もう関係ないのだが。 夜の航海は危険だと言う航海士が、夕暮れに出港するなんて言うわけない。だとしたら、このオレンジ色の空に包まれた時間帯は、もう約束の時間をとうに過ぎているということになる。 「ルフィのバカ」 再度言葉に出して、自分の斜め前を歩く男を罵ってみた。 もとはと言えば、この男が悪いのだ。さっさと歩いていく、この男が悪い。 こっちだと海の逆だと言ってるのに、聞かないのだから。聞いていたのかも知れないが、彼はこっちに来たかったのだろう。初めての島で、どこに行きたいなんて欲求は、彼の場合、食堂や肉屋に限ったことだが、今回はそうではなかったらしい。行けども行けども、ルフィの腹を満たすような店も場所もなかった。 ルフィの心理など全くわからないまま、ただ歩き続け、他愛ない会話を交わし、気づけば空は朱色近くなっていて。 は言った、何度も。ねぇルフィ、帰るんだったら逆方向だよ、と。しかしルフィは、まだ目的の場所についてはいないという勢いで歩き続ける。 そして、それから少し経って、 『腹減ったから帰るか』 彼から出た言葉はそれだった。 キョトンとしているに笑いかけ、元来た道を戻り始めた。 今日一日の自由時間を彼と過ごしたに、何らメリットはなかったようで、にしたら、何の目的もないのにどうしてこんな長い道程をと。 というわけで、さっきから不満が口をついている。 それは、メリー号を見つけた時も変わりはなかった。 「お。ナミだ」 「やっと帰って来れた〜っ!」 ふにゃふにゃっと笑顔になったは、ルフィと並び、船へ戻る。 もちろん船の中から聞こえたのはナミの怒号。次の島ではあんたたちは留守番だと、鬼の如く怒っていらっしゃった。 「何してたのよ、こんな時間まで!」 ナミのその言葉に、それを聞きたいのは自分も一緒だと、も声に出してルフィに問い詰めようと。しかし、船長は笑って、 「散歩だ」 至極嬉しそうに言ってのけた。 「散歩?」 眉を歪めたナミに、おう、と笑顔で。そうなの?ナミがそう自分に聞いてくるので、は思わず頷く。頷いたが、疑問は正直に口に出た。 「え、散歩なの?」 「何であんたが聞いてるのよ。当事者でしょ」 「だって、ルフィってばさっさと行っちゃうんだもん」 散歩っていうより、連れてかれてるみたいだった。が言えば、ルフィは口を尖らせて、何でだよと。散歩だったじゃねェかと一層口を歪める。 そんな三人を余所に、船は出港し始めた。 ナミが指示を出していないところを見ると、港を離れるだけの作業なのだろう。きっと、チョッパーやウソップあたりが操舵室にいるはずだ。 そして、階段を下りてきたのはロビン。微笑みながら、おかえりなさいと。 「ただいま、ロビン」 「航海士さん、その辺にしてあげたら?」 「こいつらにはいくら言っても足りないわっ」 「ふふっ。……二人とも、随分焼けたわね」 「え?」 頬が少し赤いわ。ロビンの言葉に、両手を肌に持っていこうと。 しかし、それが阻まれる。 「仲良しさんね」 港に帰るのだと、戻ること。こっちじゃなくてこっちだと、行き先を変えること。一緒にじゃなくて、別行動をすること。それができてたら、きっと、こんなに遅くなってなかったのかもしれない。 は、ずっと、ずっと握られてたその手に視線を落とした。 「、手ェ繋いでないと、すぐどっか行っちまうんだ」 今日一日、彼の称する散歩とやらの最中。この手は離れることがなかった。 言い訳がましいが、だからずっと一緒にいたのだ。 疑問符ばかり浮かんだ散歩。 愚痴ばかり零してた散歩。 熟れゆく空の下、斜め後ろから、真横から。 ずっとあなたを見ていた散歩。 無理やり離そうと思えば、離せたかもしれない手を、苦笑いして見つめた。
カウント135000
03/11/17 × |