アイタイ。〜 will be

 

 

いるはずないと思った。
でも、腕を引いたら笑った。

「あぁ、ルフィ。やっと会えた」

17年間、フーシャ村で一緒に過ごした幼馴染だった。
泣きながら自分を海へ送り出してくれた、幼馴染だった。





「ルフィの、」
「幼馴染?」
です」
少女はまた笑った。やたらと人を和ませる笑顔だった。
降りた港で、ルフィが知った顔を見つけたと言い、連れてきた人間は可愛らしい少女。バカ丁寧な彼女に、クルー達はあの時と同じ感覚に包まれる。船長の兄に会った時のあの感覚だ。なぜこうも、彼の周りには常識人ばかりなのか。この船長は誰の教育を受け、こう育ったのかと不思議になる。
明日、隣の島で食料の調達をすると、そしたら彼女は是非乗せてくださいと頭を下げた。だから、船長と幼馴染の再会を記念して、宴も開くことになった。
全てがトントン拍子に進んだ一日は、もうすぐ終わる。



クルー達は寝静まり、甲板には少女の影が一つ。後ろから声を掛けたのは船長だ。なぁに?と。振り返った彼女の笑顔に、胸が痛むのはなぜだろう。
「おめェ、相変わらずだな」
「そう?ルフィも相変わらずだね」
「そうか?」
「うん。それに、ちゃんと海賊やってんだね」
みんなのお陰だねと、は笑った。
「おう。あいつらがいるから、オレもやってけんだ」

正直だ。

頼るべき場所を知ってる男は強い。
頼るべき場所を知ってる男は、頼られるべき時を知ってる。


「よかった。ルフィが海に出てから、ちょっと心配だったんだよ」
バカばっかやってるから。の零した言葉には、安堵が込められていた。
「お前は、」
「うん?」
「今何してんだ?」
「………内緒」
「内緒?」
「うん。内緒」

さっきから、笑っている。
とにかく、笑顔を絶やさない。

は、こんな少女だっただろうか。

確かにこの笑顔は魅力的ではあるかもしれない。だけど、こんな笑い方をする少女ではなかったような気がした。泣いたり怒ったり笑ったり困ったり。思い出したのは、感情豊かに表情を変える彼女の姿。


「んー?」
「どうした?」







「………あたし、ルフィに会いたかったんだ」

あの日と同じだ。

小さな頃、風邪で熱を出したが、ルフィの家までやってきた。ルフィに会いたかったと、涙を零して。熱くなった体で、足元をふらつかせながら。結局はエースとルフィで、を家に送り届けた。
今のの言葉は、あの日と同じ。

同時に、ルフィは全て理解する。
胸の痛みの理由も理解した。


「会いたくて、会いたくて」

「そしたら、会えた」
笑顔が解かれる。
先ほどまでの笑顔が偽りなのかと言ったら、そうではないだろう。でも、彼女の素直な感情とは違うと、船長は察した。
今目の前の、涙を流すは、紛れも無く自然な彼女である。
「ルフィ、……ルフィ、」
「おう‥」
「あた、‥あたし、もう、」

いないんだ。





もしかしたら、最初からわかってたのかもしれない。
が、グランドラインのこんな場所にいるはずはないと。心の隅にあったのかもしれない。それでも、一目見てわかったのは、偽者ではないということ。
それがどんなことかもわからないが、には変わりないと。


「帰って、来る……まで、」
、」
もういいとルフィは言い、涙を指で拭う。お前はオレに会いに来てくれた、それでもういいと。
「………見たかったの、……待ってたかった……」
「だったら見てろ。村へも帰る。だから待ってろ」
ルフィの目を見て、やっぱり変わってないと。は頷いて、頭を預ける。
「ルフィ、がさ、海に出た時‥、あたし、泣いちゃったから‥」
「泣いてたな」
「だから、泣かないように、‥っ、笑ってよう‥って、」
「泣いてても、お前に変わりないだろ」

あぁ、ルフィだ。
大好きな、大好きなルフィだ。

「ありがとう‥」
「ん」
「見てるから」
「おう」
「待ってるから」
「おう」
「諦めないでね」
「わかってる」







海賊王になったら、オレの夢を掴んだら。

真っ先にお前に会いに行くから。
真っ先に、お前の眠る村に帰るから。

だから、



会いたかったのは、だけじゃない。
オレもきっと、お前に会いたかった。
だから会えたんだと。

一人になった少年は、甲板に膝をついた。

 

 


アイタイ。
03/11/16  ×