BE Run a way Hey GUY

 

 

“あたしはいつも全速力で走ってる” お前の言葉を、オレは考える。


「………甘い」
「甘すぎるか?」
「美味しいわよ」
強面のコックに、ニッコリ笑う少女。
白ヒゲ海賊団。名目は、とりあえず雑用。彼女の名前は
「そうか?」
「ブルーベリーってのが、いい選択ね」
それじゃ、またお茶の時間に。言って、は厨房を出た。

晴れた午後。今この場所、グランドラインのこの場所の天気は良好。
「洗濯も終わったし〜‥」
お茶の時間のためのデザートへつける文句も言ってきた。さて、することがなくなった。じい様のところへでも行こうか。そうだ、そうしよう。
白ヒゲの船長を頭の中に思い浮かべ、は体の向きを変える。

「なァ」

「わっ」

真後ろにいた男との距離は十数センチあるかないか。いや、振り向いたから、もう真後ろじゃなくて目の前なのだが。

「な、何やってんの、エース!」

ポートガス・D・エース。白ヒゲ海賊団、二番隊隊長。

「おはよう、
「おそよう。もう午後だよ?」
お昼もとっくに終わってる。首を傾げて眉を顰めるに、エースは笑った。何とかなんねェかな?と。
「いまからお茶があるけどー‥」
「お茶はテメェら女だけの時間だろ?」
「そう。姉さんたちとの休憩時間」
「だったらオレには関係ねェだろ」
「今日はブルーベリータルトだったなー‥」
「話聞くだけで、胃液が出る」
「あははははっ。可哀想だね」
「お前なァ」
うそうそ、そう楽しそうに笑いながら。
「あたしの分のタルトあげるよ。持ってきたげる」
「本当か?」
「何?悪いとか思わないの?」
「あァ?」
「普通、悪いからいいよ、とか言うでしょ?」
「ワルイカライイヨ」
「………思ってない。………まいっか。本当、持ってきてあげる」
それじゃ、あとでね。は言い、エースの横をすり抜ける。

が、しかし、

「は?」
捕まれた腕。その腕の主は怪訝な顔をし。
掴んだ男もまた、疑問を含んだ顔をしていた。
「何?」
「まだわからねェんだが」
「は?」
「こないだお前が言ったこと」
「何か言った?あたし」
「言ったじゃねェか」

『あたしはいつも全速力で走ってる』

エースは小さく言葉を零す。それは、数日前にの口から出た言葉。数日間、エースの頭の中で回っていた言葉。
「走ってんのか?」
「あー‥、それはー‥」
この人、覚えてたの?うーん、と頬に手を当て考える格好を。







その言葉を口に出した日。立ち寄った港町で可笑しな大会が行われていた。祭り好きな海賊たちはそれに興じ。その大会で思わぬ成績を収めたのがエース。
大会の名前は 『駆け競べ(かけっこ)』 大会。
思いもよらぬ出来事に、その夜は宴が開かれた。


「速いのは逃げ足だけじゃなかったんだね、エース」
「褒めてんのか?」
「褒めてるよ。今日の宴の主役だもん」
酒樽から酒を注いでいたのもとにやってきたエース。その言葉を聞いて苦笑う。
「名目だけな。飲むのが好きなあいつらにゃ、もう関係ねェさ」
「………確かにね」
目を向けた先には、もう、何で宴を開いているのかも覚えてないだろう輩たち。
「不憫ね。エース」
「いやァ?そーでもねェ」
「は?」
ちゃんとお話できてるからな〜」
「………酔っ払いがここにも……」
「オレァいつでも本気だぜ?」
「はいはい」
げんなり。酔っ払ったときはいつもこんな感じの男ども。それをあしらうのにも、もう慣れた。でもまぁそれなりに。慣れないときもあるんだけど。

「走るってのはいいぜ?」
見せたその顔は、少年。二十歳の男の顔じゃなくて。
「たまには全力疾走してみろよ」



全力で。



「バカね、エース」
「あァ?」
「あたしはいつも全速力で走ってる」
「は?」
「特に、あんたといるときはね」

見せたその顔は、女。いつも見る少女の顔じゃなくて。

それだけ言って、輪の中へ酒を持っていくを。エースは不思議な思いで見つめる。そして、頭の中で繰り返されるのは、彼女が最後に言った言葉だった。







「教えろよ」
「うーん、言ってもわかんないよ」
「オレがバカだって言いてェのか?」
「そーじゃなくて、」
エースはあたしじゃないからわかんないわ。意味深な笑みで、は言う。
「それに、言うより、そう感じないと」
「あァ?感じる?」
「ヒントならあげる」
「ヒント?」
「これで答えがわからないんじゃ、あたしが教えてあげられない」
いつか別の人に教えてもらって?と。小さく傾けたその体を、エースに預けるように。長く細い腕を背中に回すと。

小鳥のように、唇を重ねた。

たった、一瞬。


「わかる?」
「あ?」
「………あははっ。間抜けな顔っ」
、」
名前を呼ぶ男に手のひらを向け。じゃーね、エース。薄く笑ったその顔は、あの時の女の顔になっていた。今、ここにいた少女の顔じゃない。
「探すの大変だから、おやつの時間に船尾にいてね?」
「あ、あァ」

軽く手を上げた彼女の後ろ姿を見送りながら。

「これが、全力疾走?」

ポカンと考える。


走ったか?走ってねェよな?………今、あいつは何をした?

まるで初心な少年のように周りをキョロキョロ見て。

キスなんて初めてのことでもねェくせに。
なんでこんな動悸が速ェんだ?
あァ、あいつとは初めてか。
あいつとは初めて、だから何だよ。

………何でオレはこんなに、

動揺してる?
動悸が速い?
鼓動が激しい?

まるで、全速力で、走った後みてェに。

 

 


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03/05/09  ×