ラウンドGO

 

 

戦闘モード、わたしは負けない。


好きだ好きだ好きだ。わたし、あなたが好きなのです。

「あー、ワカッタワカッタ」

想いを告げるのはこれで何度目でしょう。
数える限りで、もう両手は優に超えているのではないかと。

「毎回毎回、よく飽きねぇな」

あなたは本気に取ってはくれない。
叶わぬ想いより、そちらの方がつらいのです。
でも、諦めない。振り向かせるまでわたしは戦う。



「よう、
首尾はどうだい?同じ船に乗る男の一人が声をかけてきた。宴の真っ最中。
「首尾って何よ」
「エースだよ。エース。隊長さんのご機嫌は取れそうか?」
「………関係ないでしょ」
一般常識並に知られたの想い。この船の中では知らないヤツはいない。
チラリとエースに目を向けると、ご満悦の表情で酒を飲んでる。両腕にお姉様方をはべらせて。あぁ、ありえない。あたしがモヤモヤしてるのわかってるくせに。そりゃあ確かにあたしのモンじゃないけれど。………これ見よがしにベタつかなくてもいいんじゃないですか?
「目が恐いぜ?
「おー?こりゃまた綺麗どころはべらせちまってなァ〜」
「やるねぇ。我らが2番隊隊長は」

………ウルサイ。
こいつら面白がってやがる。

「何が言いたいのよ」
「いや〜?」
「別に?なァ?」
「あぁ。ホラ、飲んどけ飲んどけ」










「おい」
「あー‥、何スか、隊長ぉぉ」
酔っ払った部下に声をかけたのはエース。多少酔ってはいるだろうが、結構正気な目をしている。
は?」
「あぁ〜、だったら………あれ?」
だったら寝たぜ?あいつが連れてったんじゃねーの?」
「おー?危ねぇなァ。あいつ、酔ったら何するかわからねぇぞ?」
お気に入りだからな」
あいつ、にはエースも覚えがあった。自分の部下であるただの男にすぎないが、女の扱いにはこなれた男。
エースらしからぬ舌打ちを一つ。そして船内へ歩き出した。





「んー‥」
、水飲むか?」
「いぃ〜……」
武器倉庫の前、その男の腕に抱かれているのは。飲みすぎたらしくグッタリとしている。
「おーい、
「………ん〜‥」
「………
唇が近づいた。規則正しい、細い寝息が聞こえる。
その男はお構いなしに、唇の距離を縮めていく。

と、

「フェアじゃねーな」
万年発情野郎が。そう笑って立つエースが目の前にいた。
思いもよらぬ事態に驚き、を落としそうになる。
「……た、隊長……」
「貸せ」
「えっ……」
だよ」
「あの、でも……」
「いーからよこせ」
えも言わせぬ迫力。いつもヘラヘラしている男のこんな表情を見たのは先日の抗争以来だろうか。
「隊長、」
「あァ?」
「い、いえ」
腕から腕へ。まるで大事なものを抱くように、エースはを抱えた。
「オレが寝かせるから。戻れよ」
ゆっくりと踵を返し、低い声でそれだけ落とした。



「よっ」
危なっかしいな、お前は。ソファにを下ろし、そう呟く。
「オレを落とす前に他の男に落とされてどーすんだよ」
心なしか呆れた表情で、眠るの顔を覗きこんで。

「………戦うんだろ?」

そのまま、呼吸を奪った。奪われた呼吸は少しして取り戻される。
離された唇を見ながら、エースは小さく悪態を。そしてドアに手をかけながら言った。

「……次にタヌキ寝入りしてたら喰っちまうぞ、

ドアの閉められる音と共にの上半身がソファから上がった。
指先で軽く唇に触れながら、今起こったことを思い出そうとする。

タヌキ寝入りなんかじゃないわよ。
気づいたらソファに寝てて。
あんたの声がしたから目が開けられなくて。
あったかいものが、唇に降ってきて………、

えぇと、よく覚えていません。

赤くなった顔を振りながら呼吸を整えることに精一杯だった。







その頃、エースは例の男のもとへ。

「隊ちょ……」
「面倒は起こしたくねェんだ」
いいか?あいつには無関心でいろよ。そう言ってそいつの喉もとを掴む。
「……ぅぐっ……」
「余計なことしてると、………消えちまうぞ?オマエ」
コクコク頷くのを見届け、手を離した。

白状しようか。
実はお前のKO勝ちだ、
お前のこととなると居ても立ってもいられねェ。
自覚したのはいつだっけなァ。

それにしても気のおけねェ船だ。

………まぁいいさ。

戦闘モード、オレは負け知らずだから。

 

 


カウント 32323
02/10/29  ×